.NETに遅れること15カ月、Monoの新版がようやくリリース

 米Novellは11月9日、.NETデスクトップ・アプリケーションのLinuxへの移植を容易にする開発フレームワーク「Mono」の新バージョンを発表した。

 Monoは、Microsoft製のツールを使用している開発者向けに提供される、.NET Frameworkのオープンソース実装である。Windows以外のOSで動作する.NETデスクトップ・アプリケーションの開発を支援するため、Novellが2003年に米Ximanを買収し獲得した。今回リリースされた「Mono 1.2」は、Mono 1.1からおよそ1年ぶりの新バージョンとなる。

 Monoプロジェクトのリーダーで、Novellのバイスプレジデント、ミゲル・デ・イカサ氏によれば、Monoの当初の目的は、.NETアプリケーションをLinuxデスクトップで使用できるようにすることだったが、「サーバ・アプリケーションのほうが簡単に開発できることがわかり、Monoの初期バージョンでは主にサーバ・アプリケーションのサポートが優先された」という。

 Mono 1.2では、.NET FrameworkのGUI開発に用いるWindows Forms APIのサポートが追加されている。これにより、「.NETクライアント・アプリケーションをLinuxなどの他のOSに容易に移植できるようになる」(デ・イカサ氏)。また、Mono 1.2は、.NETアプリケーションのプログラミング言語となるC#の最新版「C# 2.0」もサポートしている。

 さらに、「Mono 1.2とMonoの従来バージョンとの互換性についても問題はない」とデ・イカサ氏。同氏によると、Mono 1.1で開発された.NETアプリケーションはすべてMono 1.2で動作するという。

 今回の発表は、WindowsとSUSE Linuxに関するNovellとMicrosoftの提携が明らかになったあとで行われた。両社はMonoについて特に言及していないが(デ・イカサ氏によると、氏は提携のことを発表の1週間前に知らされたという)、両社の合意がMonoに対して何らかの波及効果を及ぼすことを期待している、とデ・イカサ氏は言う。

 Microsoftのツールを使い慣れた開発者にとって、Monoは、Linuxアプリケーションの開発が容易になるというメリットをもたらす。これは、Microsoftにとっても、自社の開発ツールのニーズが高まるという点から好ましいことであるに違いない。だが、Monoは同時にLinuxへの移行を容易にするため、同社としてはそのような技術を諸手を挙げて歓迎するわけにはいかないだろう。

 Novellは、スペインのバルセロナで開催されたMicrosoftのコンファレンス「TechEd Developers Conference & Expo」に出展しており、Mono 2.0の発表もそこで行った。しかし、デ・イカサ氏によれば、開発者向けのプレゼンテーションは会場から離れたホテルで行われたという。同氏はその理由を「Microsoftは自社の展示会で私が講演することを快く思わないと考えたからだ」と語る。ただ、MonoプロジェクトのメンバーはMicrosoftの開発者と良好な関係を維持している、とデ・イカサ氏は付け加えた。

 デ・イカサ氏によると、Novellは現在、WPF/E(Windows Presentation Foundation Everywhere)の実装をMicrosoftに提案中だ。これが実現すれば、Windows Vistaアプリケーション用に作成されたグラフィックスをLinuxなど他のOSで使えるようになる。また、Vista用として計画されている認証技術「CardSpace(旧・InfoCard)」の実装についても、何らかのかたちで協力したい、と同氏は語る。

 もっとも、Monoの開発は.NETに遅れをとっている。.NET Framework 2.0でさえフルサポートしていないというのが実情だ。Mono 1.2がサポートするWindows Forms APIのバージョンは1.1にすぎず、それはすでに1年前のバージョンである。Mono 1.2は、ざっと15カ月遅れのリリースになる計算だ。ちなみに、Microsoftはすでに.NET Framework 3.0を開発者向けにリリースしている。

 こうした遅れを取り戻すべく、デ・イカサ氏は、.NET Framework 2.0との完全な互換性を提供するMono 2.0のテクニカル・プレビュー版を来年3月にリリースする計画を明らかにした。また、Mono 2.0の正式リリースを来年中に行いたい考えだ。

 「.NET Frameworkとの歩調を合わせることは確かに重要だ。だが、最新技術がリリースされても、それが実際に採用されるまでには長い時間がかかる。そのことを考慮すれば、この程度の遅れは許容範囲だと思っている」(デ・イカサ氏)

(ジェームズ・ニコライ/IDG News Serviceパリ支局)

提供:Computerworld.jp