Intel、モバイル・デバイス用ソフトウェアのプライバシー・ライセンスを提案
スマートフォンやウルトラモバイルPCにインストールされる位置特定ソフトウェアは、GPS技術を使用して、ドライブの目的地や近くのレストラン、映画の上映スケジュールなど、個々のユーザーに合わせた情報の作成を可能にする。しかしこの機能については、位置データが第三者に渡った場合、端末が追跡装置として使われてしまう危険性も指摘されている。位置情報への不正なアクセスが可能になった場合、市民的自由の侵害や、配偶者の暴力にさらされている人々への物理的な脅威など、さまざまな問題が生じる危険があるとIntelは懸念している。
Intelのコーポレート・テクノロジー・グループのプライバシー/セキュリティ・ポリシ・マネジャー、ジョン・ミラー氏が同社のWebサイトに掲載した文書によると、同社はこの問題に対処するため、同社の位置特定ソフトウェア「Privacy Observant Location System(POLS)」で採用しているEclipse Public Licenseにプライバシー保護のための補遺を加えたという。
この補遺はベンダーに対し、記録する情報の種類や保存期間などをエンドユーザーに知らせるよう義務づけているほか、開発者に対し、ユーザーがそれらの設定を変更できるようにオプトアウト機能を追加することを求めている。 POLSは、GSMセルやWi-Fiアクセス・ポイントなど、近くのラジオビーコン(無線標識)を三角測量して位置を特定できるモバイル・アプリケーション開発者向けツールだ。位置特定デバイスの大半は、無線プロバイダーの追跡機能やGPSチップ(都市部などでは受信状態が良くないこともある)など、さまざまなアプローチを使っている。
POLSは、HTC(ハイテク・コンピュータ)やモトローラが製造し、オーディオボックスやシンギュラー・ワイヤレス、オレンジ、TモバイルUSAなどのキャリアのブランドで提供されてているWindows Mobileベース電話機8モデルをサポートしている。
Intelは倫理的な問題を強く懸念しているが、位置情報ベースの技術を実際に使っている顧客は少ないため、同社の措置に対する市場の反応は当面鈍いと見られている。
ガートナー・データクエストの主任アナリスト、トッド・コート氏によると、現在販売されているPDAのうち、GPSアンテナを内蔵している製品は10%しかなく、その大半は欧州で使われているという。欧州は道路が入り組み、言語も多様なため、街路地図情報サービスが大きな市場を形成しているからだ。
これに対し、スプリント・ネクステルやベライゾン・コミュニケーションズのCDMA方式携帯電話のおよそ90%は、Intel方式のセル・タワー・ナビゲーション技術を使ってGPS対応の位置特定機能を提供しているものの、ユーザーの大半はこの機能の存在を知らないか、この機能を使わない設定にしているという。
「こうした機能が存在することは素晴らしいし、いずれ評価されることになるだろう。しかし、米国人にはあまり認知されておらず、販売促進にもつながらないだろう」とコート氏。
Intelは、同社がEclipse Public Licenseに加えたプライバシー保護のための補遺に対する開発者の支持を取り付けるという課題にも直面している。すでに同社は、オープンソース・コミュニティの支持獲得に向けたキャンペーンを始めている。ソフトウェア開発者が従わなければ、この補遺は役に立たないからだ。インテルはオープンソース・イニシアティブ(OSI)のメンバーに対し、OSIの標準オープンソース・ライセンスの1つであるEclipse Public Licenseの修正条項として、Intelが補遺に盛り込んだポリシーを改良して採用し、オープンソース・コミュニティ全体で利用されるようにすることを呼びかけている。
ミラー氏は、「われわれは、プライバシー保護と技術の普及拡大の両面で、プライバシーを重んじる社会規範の発展を促進するボトムアップの取り組みが必要であり、きわめて重要と考えている。われわれは、多くの人々にこのアプローチの価値を認識してもらいたいと考え、Eclipse Public Licenseに加えた補遺に関する説明を掲載する」と述べている。
インテルは、ワシントン大学バリュー・センシティブ・デザイン・リサーチ研究所やカリフォルニア大学バークレー校、ジョンズ・ホプキンス大学などの学術機関や、民間の弁護士と意見交換を行ってポリシーを作成した。
(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)
米Intel
http://www.intel.com/
POLS
http://pols.sourceforge.net/
提供:Computerworld.jp