中国オープンソース・コミュニティ隆盛の背後にあるもの

昨年NovellとRed Hatが中国にオープンソース・コミュニティを立ち上げた際、多くの中国ソフトウェア企業は様子見を決め込んだ。しかし、最近になって、自前のコミュニティ創設に乗り出し始めたようだ。TurboLinuxはWhitefinを、Red FlagはLinux-Renに加え、年内にさらに2つのオープンソース・コミュニティ――UMPC(Intelと共同)とOpenAsianux――を立ち上げる予定だ。中国企業は、なぜ、態度を翻したのだろうか。

TurboLinuxのゼネラル・マネージャーZhou Qunによると、同社がWhitefinを立ち上げた理由は2つある。一つは、コミュニティからの人材発掘。同社はオープンソース関連の人材が不足しており、それが足枷になってきた。もう一つは、Whitefinを通した自社デスクトップ・システムの拡販である。

しかし、こうした変化の背後には中国政府の存在も窺える。現在、中国政府はオープンソース・コミュニティをソフトウェア産業振興の鍵と位置づけ、第11次5か年計画(2006~2010年)では、これまで以上に多くの資源を振り向ける予定だ。中国のあるLinux専門家は、匿名を条件に、次のように語っている。「Linux産業の旗印として、Red Flagには、間違いなく、この新政策を唱道する責務が課せられています。中国の政府出捐(しゅつえん)企業は、国内で確たる位置を占めることが絶対的に必要だからです」。企業からの支援を受けて最近設立されたオープンソース・コミュニティは運がよい。コミュニティは企業から支援を受け、その企業は政府から支援を受けている。

同様に、直接的に公的支援のあるコミュニティも恵まれている。たとえば、浙江省が支援するLeadership of Open Source University Promotion Alliance(LUPA)には創設時に125万ドルの「奨励金」が提供された。資金の30%超は政府系であり、残りの大部分も政府出捐企業によるものだ。

これに対して、ボランティア・ベースのオープンソース・コミュニティの中には、苦境に喘いでいるところもある。LinuxSir、ChinaJavaWorld、JavaUnion、Huihooなどは活発に活動しているが、政府の支援はなく、オープンソースの理想に献身するプログラマだけが支えだ。

しかし、こうした形の支援は脆弱である。中国の多くのプログラマは懸命に働いて稼ぐことを考えており、オープンソースには貢献しない。週に50~60時間以上勤務しているため、オープンソース・コミュニティのために何かしたくても不可能なのだ。中国政府ソフトウェア部門の専門家Yang Weiは、「中国では暮らしていくだけでも重荷であり、オープンソースの開発に貢献する意志と時間があり、実現できるプログラマはごくわずかしかいません」と言う。その結果、コミュニティの「支え手」が少なく、彼らが忙しくなったり経済的な問題が発生したりすれば、コミュニティは消滅してしまうだろう。

そうした困難にもかかわらず、当の「支え手」たちは楽天的だ。「政府の支援で作られたコミュニティでも構いません。必要があれば私も参加しますよ。要するに、そうしたコミュニティには資金も力もあって開発環境がいいですから、オープンソース産業の促進に役立つでしょう」と、中国人プログラマでLinuxSirの常連Chen Jiongは言う。

しかし、それによってオープンソース産業が直ぐに向上することはないとも言う。「結局のところ、中国のオープンソース産業の課題は貢献する人材が少ないことです。コミュニティができたからといって一夜にしてプログラマが激増するわけではありません。それには長い時間がかかります」

一方、やはりLinuxSirの常連であるZhangは、そうした新興オープンソース・コミュニティがオープンソース産業に悪影響を及ぼすかもしれないと言う。「あまりに沢山のコミュニティができると、わずかしかいない中国のオープンソース・プログラマ間の協力関係が壊れてしまうかもしれません。ですから、少なくとも今は、コミュニティ間の協力がとても重要だと思います」

NewsForge.com 原文