Xenプロジェクトの生みの親が強気の将来展望を明らかに
XenSourceの最高科学責任者で、ケンブリッジ大学コンピュータ研究所の教授でもあるプラット氏は、「Microsoftは、ライバルとの差を大幅に縮めつつある」と語る。同氏は、「Xenプロジェクトには、製品をよりよいものにしたいという高い意識を持った開発者の巨大なコミュニティが存在しており、これが強みとなっている。またこのことは、Xenの進歩がきわめて早いと言うことも意味している。新しいことが起こるとき、先鞭を付けるのはいつもXenだ」と語った。
プラット氏は、ケンブリッジ大学の学生だった4年前にXenプロジェクトを立ち上げた。その後プロジェクトが高い関心を集めるなかでXenSourceが誕生し、オープンソース・コードをベースにした仮想化製品「Xen Enterprise」が開発された。
市場調査会社ガートナーは、VMwareの「ESX Server」、Xen、Microsoftのハイパーバイザー技術「Viridian(開発コード名)」が、2009年の仮想化製品市場を支配すると予想している。
Xenは、多くのベンダーから強力な支持を得ている。Sun Microsystemsは、Xenを「Solaris 10」に統合しようとしており、Novellも最近リリースした「SUSE Linux Enterprise Server 10」にXenを搭載している。また、Red Hatが今後投入する「Red Hat Enterprise Linux 5」にもXenが搭載されることになっている。
仮想化とは、1つのOSの複数のインスタンスを同一のサーバ・ハードウェア上で稼働させる技術だ。研究によると、サーバは、その能力の10%以下で稼働していることが多く、CPUのパワーが高まるなか、この数字はさらに下がっているという。仮想化技術を使えば、データセンター内で使用されるハードウェアの数を減らし、エネルギー・コストを引き下げることができる。
ただ、市場調査会社TWPリサーチが今年2月に発表した研究リポートによると、仮想化への関心が高まっているにもかかわらず、x86サーバでこの技術を使っているのは、全体のおよそ6%にすぎないという。こうした調査結果にもかかわらず、プラット氏は「いずれこの数字は100%になる」との見方を示している。
ベンダー各社が仮想化技術を採用する動きは、今も続いている。プラット氏によると、Viridianには、「Xenの設計に強い影響を受けたアーキテクチャ」が搭載されており、少ないコードで高性能のハイパーバイザー機能を実現できるという。ハイパーバイザー技術は、ハードウェア・リソースを管理し、同じハードウェア上で複数のOSを別個に稼働させることができるようにする。Viridianの正式出荷版は、Windows Server “Longhorn”の出荷からおよそ6カ月後に投入されることになっている。
MicrosoftとXenSourceは、ライバル同士だが、今年7月、Windows Serverの次期バージョンとXenベースのゲストOSとの互換性を確保することで合意した。またMicrosoftは、XenSourceのXen Enterpriseでゲストとして稼働するWindowsのインスタンスにテクニカル・サポートを提供することにも同意した。
Xenプロジェクトの次の目標は、疑似仮想化(Paravirtualization)と呼ばれる技術の改善だ。疑似仮想化とは、ハイパーバイザーとOSの間のインタフェースや基盤となるハードウェアのリソース利用方法を精密化する技術であり、パフォーマンスの向上に役立つ。
プラット氏は、「まず512MBのメモリを割り当て、余分になった256MBのメモリを引き出そうとしたり、ハードディスクとの間でデータをやり取りしたりするのではなく、最初から256MBのメモリを割り当てたほうがはるかに効率がよい」と語っている。
(ジェレミー・カーク/IDG News Service ロンドン支局)
提供:Computerworld.jp