IBM、Eclipse本体にもサポート・サービスを拡張──非Rationalユーザーも契約可能に

 米IBMのRational部門は9月7日、オープンソースの開発ツール・プラットフォーム「Eclipse」に対するテクニカル・サポートの提供計画を明らかにした。同時に、同プラットフォームの最新バージョン「Eclipse 3.2」に対応したツールのベータ版(試用版)の公開予定と、新しいEclipseユーザー向けのオンライン開発者リソースの提供開始も発表した。

 IBM Rational部門のマーケティング&戦略担当バイスプレジデント、スコット・ヘブナー氏によると、新しい「IBM Rational Elite Support for Eclipse」プログラムを通じて、IBMはEclipseツールそのものに対するサポートを初めて提供することになる。また、契約者には関連ツール群も提供されるという。

 IBMは従来、EclipseプラットフォームをベースにするIBM Rational製品へのサポートを提供していたが、Eclipseプラットフォームのツール群のサポートは行っていなかった。今回のサポート拡張により、ユーザーは今後、ツールの欠陥の解消などの問題で支援を受けたり、質問を行って回答を得たりできるようになる。そうしたサポートは、IBMグローバル・サービス部門ではなく、IBM Rational部門が提供するという。

 Eclipseヘブナー氏は、「(今回の措置は)ITマネジャーや開発マネジャーにとっては、統一されたサポート体制を備えるための好機だ」と強調する。同氏によると、IBM Ratinal製品を使用していないEclipseユーザーでも、Eclipseサポートの契約を申し込むことができるようになるという。

 Eclipseユーザーはミッション・クリティカルな業務を行っていることが多く、コミュニティの不特定メンバーだけにサポートを依存していたのでは十分な成果を得ることができず、より万全なサポートを必要としていた。

 IBM Rational部門の分析・設計・構築用オファリング・マネジャー、ゲーリー・サーノセク氏は、「(Eclipseユーザーは)開発ツールの水準には満足しているが、ソリューションの構築を独力でやらなければならないことには不安を感じている」と説明する。

 なお、Eclipse 3.2プラットフォームは今年7月に公開され、Java 5のサポート、リファクタリング機能のほか、次期WindowsクライアントOS「Windows Vista」に対するサポートのプレビュー版が含まれている。

 IBMは、Eclipseプラットフォームに含まれているツールだけではなく、いくつかのEclipse関連プロジェクト(「Web Tools Platform」、「Test and Performance Tools Platform」、「Eclipse Modeling Framework」のプラットフォームなど)のサポートも提供するとしている。

 新たなサポート・プログラムは今年第4四半期から開始され、サポート依頼回数無制限の年間契約料金は開発者1人当たり400ドルとなっている。

 またIBMは、Eclipse 3.2.に対応した3種類の新ツールについて、近くベータ版(試用版)の公開を予定しており、ベータ・テスト・プログラム参加の事前登録受付を開始した。同社では、これらのツールの完成版の出荷を年内に予定している。

 そのうち、「IBM Lotus Designer 6」は、IBM WebSphere Portal 6.0内で稼働するコンポーネント開発用のRADツールである。同ツールのベータ版は、9月中旬からIBMの開発者向けWebサイト「developerWorks」で無料でダウンロード可能になる予定。

 また、UMLモデリング・ツール「IBM Rational Software Architect Release 7」と自動テスト・ツール「IBM Rational Functional Tester 7」のベータ版は、10月中旬までに公開される予定だ。

 これらのツールは、ビジュアル操作によってSOA(サービス指向アーキテクチャ)サービスの構築能力を強化しているほか、分散開発のサポートにも重点が置かれている。IBM Rational Software Architect Release 7には、コードの整合性を確保するためのモデリング機能も搭載されている。また、IBM Rational Functional Tester 7は、サービス、ビジネス・プロセス、SAPアプリケーションのテストに利用できる。

 一方、IBMはdeveloperWorks内の「Eclipse Project Resources」サイトでは、新たなリソースが公開されている。それらには、開発者がEclipse 3.2の知識と技能を身につけるのに役立つ学習ツール、チュートリアルなどのリソースが含まれており、例えば、複雑なEclipseタスクを実行するための「チート・シート」をEclipse 3.2で作成する方法を紹介するコースなどがある。

 なお、これらの発表は、米国マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されている開発者向けコンファレンス「EclipseWorld 2006」(9月6〜8日)で行われた。

(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp