Konquerorを120%使い倒す

KDEユーザの大半は、KonquerorはWebブラウザとして使用するのが当然だと思っているかもしれないが、それは大きな過ちである。Webブラウザとして見る限り、KonquerorがFirefoxに取って代わって、すべてのサイトでサポートされるデフォルトブラウザとしての位置を占めることは難しいかもしれないが、このソフトウェエアには単なるブラウザ以上の機能が秘められているのだ。

私が試したサイトの95%は、KonquerorでもFirefoxを使った場合と完全に同じルックアンドフィールが得られたが、いわゆる“Web 2.0”サイトの場合、正常に動作しないあるいは一部の機能が使えないというケースが非常に多かった。例えばNetflixのサイトをFirefoxで開いた場合は、映画のサムネイルにマウスポインタを重ねると追加情報が表示されるのに、Konquerorの場合は何も起こらないのだ。またKonqueror上でGmailにアクセスすると、同サイトのプレインHTMLバージョンにリダイレクトされるが、そうした処置自体はさほどの問題ではないものの、Firefoxの場合に用いられるAJAXifiedバージョンほどの操作性が得られないのも事実である。なおYahoo!のホームページについては、Konquerorによるアクセスは拒絶され、Internet ExplorerやFirefoxなどのサポート対象ブラウザへの“アップグレード”が必要な旨メッセージが出されるが、ブラウザ側の識別設定をFirefoxに変更するとYahoo!のホームページはもとより、Yahoo! MailやMy Yahooも正常に使えるようになる。

Google Calendar、Writely、Google Spreadsheets、Google Pages、WordPressのTinyMCEエディタなどのオンラインアプリケーションサイトについては、私が試した限り、Konquerorはまったく対応していなかった。こうして見るとKonquerorの未対応サイトはかなりの数が存在するようだが、私が試したサイト全体から見ればごく一部でしかなく、今回テストしたサイトの大多数はKonquerorでも正常に機能している。

かなりの数のサイトがKonquerorに対応していないと書いておくと、Konquerorは標準に準拠していないブラウザであるような印象を与えるかもしれない。ところが事実はその逆で、KonquerorはWeb標準の大部分に準拠 しているのである(すべてではない)。例えばWeb Standards Project Acid2のテストを施してみると、FirefoxやIEとは異なり、Konquerorは見事に合格するはずだ。もっとも現実問題としては、多くのサイトがこうした正規の標準をある程度無視して作られる傾向にあるため、いくつかのサイトに関しては今後もFirefoxを使い続ける必要があるかもしれない。

その他にKonquerorがより見劣りする点としては、実用的な機能拡張が利用できないことが挙げられる。実のところKonquerorも機能拡張をサポートはしているのだが、私の経験ではKonqueror用の機能拡張というものをついぞ目にしかことがない。おそらくは、Firefoxほど普及していないブラウザであるがゆえに、Konqueror用の機能拡張を開発しようという動きそのものが希薄なのであろう。

Konquerorがその本領を発揮する時

今回試しただけでも「Firefoxには対応しているがKonquerorには未対応」というサイトがいくつも存在しているのに、何のメリットがあってこのブラウザを使い続ける必要があるのだろうか? 私の場合で言うと、大部分の作業をこなすKDEデスクトップ環境との親和性が非常に高いことが、Konquerorを使う大きな理由の1つとして挙げられるだろう。例えば私はRSSおよびAtomのリーダとしてAkregatorを使っているのだが、Konquerorで開いたページ上にこれらのフィード情報が検出された場合、新規の購読手続きをAkregator側で直接行えるのだ。そしてAkregator側でも、フィード読み込み時の各種ページの表示にはKHTMLエンジンを用いているので、Akregator上でKonqueror(あるいはその一部)を開いているような感覚でブラウジングができる。

その他にKonquerorとの親和性の高いものとしては、リンクのドラッグアンドドロップ操作でファイルのダウンロードができるKGetおよび、ミュージックストリーム再生用のamaroKなどが挙げられる。またKonquerorにはKDE Walletシステムが採用されているので、サイトアクセス時のパスワード情報を記憶させておくことも可能だ。

その他のKonquerorの特長としては、マウスを使わずにキーボード操作のみでナビゲーションする機能も挙げておかなければならないだろう。これは、Konquerorでのブラウジング中にCtrlキーを押し下げると、カレントのページ上に存在するすべてのリンクに対して、番号ないし文字でラベルされた黄色の四角が隣接して表示される機能だ。この状態でキーボード上の該当するボタンを押すと、対応するリンクにアクセスすることができるので、わざわざマウスに手を伸ばす必要はない。ただし、この機能そのものが便利であることは確かなのだが、その完成度はあまり高いとは言えず、Konquerorがリンクを認識しない場合もあるかと思えば、画面上のリンク密集地帯では大量の黄色の四角がオーバーラップして、ラベリング用の文字が見えなくなる場合もあるのだ。

Konquerorのタブ機能はFirefoxと同等のものであるが、Konquerorの場合はコンテクストメニューを介した操作でタブを取り外すことができる。おそらくはFirefoxにおいても同様の機能拡張が存在しているとは思うのだが、いずれにせよKonquerorウィンドウからタブを取り外せるというのは、私のお気に入りの機能の1つである。

タブブラウジング機能は、複数のサイトにまとめてアクセスするユーザにとって非常に重宝する機能だが、Konquerorが他より抜きんでているのは、ウィンドウの分割機能を装備していることだ。これは1つのウィンドウを水平ないし垂直方向(あるいは両方)に分割した上で、個々のペインごとに独立したサイトにアクセスできるという機能である。これが特に役立つ状況としては、ブログへの投稿を入力する際に、別のサイトにある書き込みを参考にしたい場合、あるいはNagiosウィンドウのように定常的にアクセスし続けてアラートが出ないかを監視したい場合などが考えられる。

こうしたウィンドウ分割機能では、ドラッグ操作によるペイン間のリンク移動ができるので、例えばブログやニュースのサイトにあるリンクをたどる際に、出発地点のページを表示させ続けたまま、新規のウィンドウないしタブを表示させるというのが、私のお気に入りのスタイルである。またKonquerorは各種のファイル形式にも対応しているが、この機能はPDFファイルなどのドキュメントに対しても利用できる。こうした最大2つのドキュメントを隣接して表示させるというのは、複数のウィンドウを切り換えるよりも手間がかからないので、注目しておくべき機能の1つだと言えるだろう。

ブラウジング以外の機能

既に述べたように、Konquerorとは単なるWebブラウザではなく、ファイルマネージャを始め“汎用ビューワ”その他各種の機能が取り込まれている。特にファイルマネージャとしての完成度は高く、画像データはもとより、PDFなどの各種ファイルのサムネイルによるプレビュー表示が可能だ。また設定機能も充実している他、ファイルに対する各種の操作も右クリックをするだけで行える。例えばファイルをメールに添付して友人に送信したければ、右クリックでコンテクストメニューを呼び出し「Actions -> Email File」を選択すればいい。その他にも、ファイルをgzip形式で書庫化する、1つのフォルダをデータCDに焼き込むなどの操作も、マウスクリック1発で実行できる。

Konquerorはインライン形式でのファイル表示機能も装備しているので、PDF、JPEG、GIF、PNGなどの画像ファイルを直接表示させることができ、またISOイメージについてもローカルのファイルシステムであるかのように操作できる。また未サポート形式のファイルについては、多くの場合Konquerorがファイル形式を“自動的に判定”して、適切な外部アプリケーションに引き渡してくれる。例えば、今ここで私が手元のマシンにあるメールフォルダを開いて適当なメールファイルをクリックすると、Konquerorは指定されたファイルをKMailに渡した上で、そのメッセージを表示させてくれるはずだ。同様にKonqueror上でログファイルをクリックすれば、当該ファイルが開いた状態でKWriteが起動されるはずである。

こうしたKonquerorのファイル操作機能についても、細かな設定が可能である。例えば、ログファイルの表示ソフトウェアをKWrite以外にしたければ、Konquerorのファイルプロパティを変更して、指定のエディタでログファイルを開かせるようにすればいい。なおこれはバグというよりは、デフォルトのKDEで行われる挙動でもあるかもしれないが、他のワークスペースで既に起動中のアプリケーションにファイルを送信した場合、Konquerorが指定ファイルを起動中のアプリケーションで開き終わっても、当該アプリケーションへのフォーカスの移動も行わなければ、ファイルを開いた場所に関する何らの通知も行われないのである。私の経験で言うと、「いつまで待ってもKonquerorはどうしてKateにファイルを送信しないのだろうか」と悩んでいたところ、実はKateが開いているのとは別のワークスペースを見ていた、という状況に遭遇したのは1回やそこらではないのだ。

組み込み式のビュー機能は確かに便利なのだが、状況によっては正常に動作しない場合も存在する。例えば私のシステムの場合、KPresenter KPartを用いたPowerPointドキュメントの表示をさせようとすると、ほぼ確実にクラッシュを引き起こしてくれる。とはいうものの、大方の形式のファイルは正常に扱うことができ、私が確認した限りでは、問題を起こすのはPowerPointファイルか極端にサイズの大きいPDFファイルだけであった。

Konquerorはブラウジングに必要となるプロトコルのすべてをサポートしており、FTPやHTTP/HTTPSなどのメジャーなプロトコルは当然として、基本的にWebブラウザだけでしか使われないようなマイナーなものまでサポートされている。例えばアドレスの先頭にfish:を指定するとSSH経由による別サイトへのアクセスができ、sftp:を指定すればセキュアFTP経由でのアクセスも行える。この機能を応用してサーバ間でのファイルコピーをしたければ、Konqueror上でウィンドウを分割しておいてから、fish://server 形式のアドレス指定でコピー元とコピー先のサーバにアクセスし、ドラッグアンドドロップによるファイルコピーを行えばいい。ローカルとリモートのファイルをKonquerorで操作する場合に生じる相違点は、反応速度の違いだけだ。

Konquerorは、仮想ファイルシステムにも対応している。例えばオーディオCDをコンピュータに挿入してロケーションバーにaudiocd:/と入力すると、CD内の収録データがファイル形式で一覧されると同時に、利用可能なリッピングフォーマットが表示される。実際に私のCDをコンピュータに挿入してKonquerorでブラウズしたところ、すべてのトラックがWAVファイルとして一覧された他、FLAC、MP3、Oggフォーマット用のサブフォルダもいくつか表示された。Konquerorを用いてリッピングを行う場合は、フォルダまたはファイル単位でトラックを選択して、デスクトップにコピーすればいい。同様にISOイメージ中にある個々のファイルについても、ローカルのファイルシステムを扱うのと同様の感覚で、コピー操作によるファイルの抽出ができる。

Konquerorはシステムドキュメントの閲覧に使用することも可能で、man:に続けてコマンド名を入力すると、該当するmanページが適度に整形された形式で表示される。同様の操作はGNU Infoページについても可能で(インストールされていることが前提だが)、この場合はinfo:に続けてコマンドないしユーティリティ名を入力すればよい。またInfoページがインストールされていない環境であっても、Konquerorは適切なmanページを提示してくれる。

Konquerorはまた、Samba/Windowsファイル共有、Subversion、WebDAV、その他いくつかの形式に対するブラウジングにも対応している。私個人の希望としては、より多数のKDEアプリケーションがKonquerorに組み込み可能になればよいと思っている。例えばKonversationのタブがKonquerorに組み込み可能となれば、一方でブラウジングを行いながら、他方でチャットができるようになるはずだ。IRCチャンネルにリンクされたURLをクリックすると、KonquerorはデフォルトでKonversationを開き、チャットに関してはKonquerorウィンドウに表示されない、という処理が行える訳だ。

また頻繁にシェルを利用するユーザに関しては、Konquerorウィンドウの下部に表示されるビルトインのターミナルエミュレータが利用可能だ。この機能が有用なのは、Webの開発を行う場合やApacheの設定を変更する場合だろう。なにしろ、ターミナルで施した変更が、真上に隣接するブラウザで即座に確認できるのだから。

基本的にKonquerorとは、インターネット経由での各種のファイル操作に必要なすべてが揃った統合アプリケーションだと言えるだろう。Konquerorには未完成な部分もいくつか残されてはいるが、KDEデスクトップのユーザにとっての有用な機能が満載されている。Konquerorの未体験ユーザであれば、是非ともこの機会に、各種の先進機能を試用してみることをお勧めしたい。単なるWebブラウザという枠組みでは捉えきれない存在だということが、ご理解頂けるだろう。

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