Oracleのアプリ開発責任者があらためてFusion戦略を語る──「既存製品を強化しながら標準ベースの選択肢を提供」

 米Oracleのアプリケーション開発担当シニア・バイスプレジデント、ジョン・ウーキー氏は、同社の既存ビジネス・アプリケーション・ラインの継続開発を統括している。その中には「Oracle E-Business Suite」「PeopleSoft Enterprise」「J.D. Edwards EnterpriseOne」「同World」などが含まれる。同氏はまた、同社の次世代アプリケーション群「Fusion」の開発の責任者でもある。Computerworld米国版は先ごろ同氏に、Fusionおよび現行アプリケーションの開発の現状と今後の方向性について話を聞いた。

——4月に発表されたApplications Unlimitedプログラムは、Oracleのレガシー・システムを無期限にサポートするというものだが、これはFusionのプロモーションを以前ほど積極的に行わないことを意味するのか。

 Applications Unlimitedのブランディングを発表した際には、Fusionについてトーン・ダウンするのではないかと心配する声も上がった。しかし、われわれは、もともと買収で取得したアプリケーションを2013年までサポートすると約束しているし、次世代のFusion技術による強力なアプリケーションを2008年に投入すると言ってきた。実際に、計画通りそうするつもりだ。

 だが、顧客は2008年に選択することになる製品よりも、今後1年間にどのような製品が提供されるのかについて、より関心を持っているはずだ。彼らの非常に差し迫ったニーズに、われわれは現行の製品ラインで対応するようにした。

——現行製品の機能強化にどう取り組むのか。

 バグの修正にとどまらず、規制に対応した更新や、ビジネス環境の変化への対応も積極的に行っている。例えば、4月に発表したJ.D. Edwards 8.12には、食品および飲料業界向けの新機能を多数追加した。また、PeopleSoft Enterprise 9.0では、個々のコンポーネント製品の機能強化に加え、政府調達に対応するための機能拡張に多額の投資を行っている。政府とのビジネスが拡大している顧客企業も増えており、2007年にリリースするJ.D. Edwards World 9.1でも、規制対応にかかわる部分を改良する計画だ。

 われわれは最近、PeopleSoft CRM 9.0を出荷したほか、J.D. Edwards EnterpriseOne、Siebel、PeopleSoft Enterpriseでは、それぞれの専任のチームを組織している。EnterpriseOne 9.0を1年後、Siebel Version 8.0を今年末に投入する予定だ。

——Fusionへの移行をどのように推進していくのか。

 われわれが適切な選択肢を提供すれば、顧客は最終的に新しい技術に移行してくれると考えている。現在、ほかのベンダーは選択肢を提供せず、顧客に特定の製品、技術への移行を強いている。

 例えば、SAPの場合、顧客はmySAP ERPに移行するしかない状況にある。SAP R/3の顧客は、SAPの技術を実装し直さなければならず、R/3とは異なるmySAP ERPのアーキテクチャを採用し、ライセンスもあらためて取得することになるだろう。これはSAP R/3の顧客にとっては大変なことだ。

——Fusion戦略をどのように実行するのか。

 PeopleSoftを買収した後、われわれは同社の幹部から今後の計画について聴取した。彼らは開発ツールのPeopleToolsの次世代版を開発していたが、これはプロプライエタリな製品であり、.NetやJava 2 Enterprise Edition(J2EE)に対応させるために膨大な作業を必要とした。そして、われわれも同様の問題を抱えていた。

 一方、SiebelはProject Nexusを持っており、自社のプロプライエタリなツール・セットよりも応用性の高いJ2EEツールを開発しようとしていた。つまり、SiebelもOracleもPeopleSoftも、同様な問題を抱え、目指す次世代アーキテクチャも同様のものだということだ。そのため、Fusion計画はスムーズに進めることができるだろう。

——リテックの製品はFusionのロードマップにどのように適合するのか。

 リテックのアプリケーションはもともとOracle Forms技術をベースにしていた。新規開発ではJ2EEベース・プラットフォームを採用するようにしている。

——そもそもFusionはどこがユニークなのか。

 従来、ベンダーが市場で販売するアプリケーションは、いずれもプロプライエタリな技術を採用していた。そのために、システムに変更を加えるのがとても難しかった。

 われわれは、コード全体が完全にJavaとXMLで記述された初の標準ベースの商用アプリケーションを提供しようとしている。コンポーネント・ベースのアーキテクチャに基づいており、接続ポイントも明確に定義されているため、ソフトウェア部品を自在に組み合わせて柔軟にシステムを構築し、運用することができる。

(マーク・ソンジニ/Computerworld 米国版)

提供:Computerworld.jp