Oracle、PeopleSoft CRM製品の新版をリリース
言うまでもなく、PeopleSoft CRMは、Oracleが買収したかつてのライバル──すなわち、PeopleSoftの製品だ。Oracleによれば、新版の9.0では、SOA(サービス指向アーキテクチャ)が全面的に取り入れられており、Oracleのミドルウェア製品群「Fusion Middleware」との連携が強化されているほか、金融サービスや通信業界など、特定の業界に照準を絞ったモディフィケーションも行われているという。
また、今回の新版では、サードパーティ製ソフトウェアとの統合化を実現する19種の新しいWebサービスを備え、かつ、Webページを直接サービスに変換する機能もサポートしている。
さらに、新版で追加された新機能の中には、XML文書のやり取りを管理する「Oracle XML Publisher」との連携機能をはじめ、「Oracle Business Process Execution Language(BPEL)」や「Business Process Manager」との統合化機能が含まれている。
ただし、PeopleSoft Enterprise CRM 9.0は、People製品の新たな顧客層を開拓するための製品ではないようだ。実際、Oracleのエンタープライズ・アプリケーション戦略担当バイスプレジデント、ジョン・ウェブ氏も、「PeopleSoft Enterprise CRM 9.0は、あくまでもPeopleSoft CRMの既存ユーザーをターゲットにしたもの」と語り、「当社では、最近買収したSiebel Systemsの製品を、CRM領域における新規顧客層の獲得・拡大の中核プロダクトとして位置づけている」との説明を加えた。
なお、今回の新版に対する、既存のPeopleSoft CRMユーザーの反応はおおむね良好だ。
PeopleSoft CRM 8.9を使用しているデポール大学(シカゴ)のCRMクラフト・チーム・リーダー、オードリー・ブラッドソー氏は、「今回の新版で、Oracleのミドルウェアとの連携機能や、SOA領域での機能的な強化が行われた点が大きい。これにより、Peopleの他のERPアプリケーションをはじめ、さまざまなアプリケーションと、CRMアプリケーションとの統合化が一層容易になった」としている。
他方、米国フォレスター・リサーチのアナリスト、ウィリアム・バンド氏も、PeopleSoft Enterprise CRM 9.0のリリースについて、「PeopleSoft CRMユーザーに対して、製品のバージョンが継続して行われることを示し、安堵感を与えたという点で高い評価に値する」と語る。ただし同氏は、「PeopleSoft CRMに対する継続的なサポートが、Oracleの将来的なCRM戦略を難しくする可能性もある」とも指摘し、以下のように続ける。
「一般に企業・組織は、これまでのCRMへの投資を最大限に活用することに強い関心があり、新しいCRM製品の導入に二の足を踏みがちだ。仮にOracleがPeopleSoft CRMのバージョンアップを続ければ、既存のユーザーはそれを使い続けるだろう。そうなれば、Oracleは、CRMの領域でSiebelとPeopleといった複数の系統の製品を維持しなければならなくなる。それを避けたければ、PeopleとSiebelの両CRM製品を一本化するしか手はない」
(マーク・ソンジニ/Computerworld オンライン米国版)
米Oracle
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