Linux生みの親のトーバルズ氏、GPLv3のドラフト第2版にも「ノー」

 Linuxの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏は7月28日、フリーソフトウェア・ファウンデーション(FSF)が27日に公開した「GNU General Public License バージョン3(GPLv3)」のドラフト第2版について、デジタル著作権管理(DRM)を制約する根本的な問題がクリアされていないとし、Linuxカーネルには採用しない意向を明らかにした。

 FSFによると、GPLv3ドラフト第2版は、今年1月にリリースしたドラフト第1版の公開討論&フィードバック期間を経て、DRMでの制約を和らげ、その内容をより明確化するよう書き換えたという。

 トーバルズ氏は、GPLv3のドラフト第1版が1月に公開された後、同ドラフトのDRM条項案には制約がありすぎ、そのままではLinuxカーネルのライセンス規約をGPLv3に移行することはできないと表明していた。トーバルズ氏は、今回の新しいドラフト第2版をレビューした後も、その見解は変わらないとしている。

 トーバルズ氏は7月28日の電子メールによるインタビューで、「根本的な変更はなされておらず、結局、意味するところは同じだと思われる。FSFはGPLv3の策定にあたって、GPLv2では制限を設けていなかったいくつかのことに制限を加えようとしているが、私の意見では、そうした制限は設けないほうがよい」と述べている。

 GPLv3のドラフト第2版では、「DPM機能を実装すること」を禁じる代わりに、「GPLでカバーされているソフトウェアをユーザーが使用または修正することを制限するために、第三者が技術手段を使用すること」を禁じている。

 トーバルズ氏は、GPLv3(15年ぶりの大幅改訂バージョン)の必要性自体にも疑問を表明している。「解決すべき重要な問題は、そもそもだれがGPLv3を必要としているのかという点にある。決定権は各プロジェクトが持つべきだ」と強調、次のように指摘している。

 「(第2版の)新しい制限には何の利点も見当たらず、個人的には、従来のバージョン2のほうがはるかに好ましいと感じている。私は、今後のインプットと改善の可能性を否定しようとは思わない。しかし、新しいv3ライセンス規約はLinuxカーネルへの実質的な影響はないが、他の多くのプロジェクトに影響する可能性が高い」

 FSFが同ライセンス規約のドラフトに対して関係者からのコメントを求め、そのフィードバックを組み込むという方法を取り始めたことに関しても、トーバルズ氏は「そのプロセス全体にかなり失望した」と述べている。同氏によると、ライセンスについての議論のほとんどは、感情的なものであり、実際のコード作成に焦点を合わせるという観点から見ると無意味なことが多いという。

 「つまり、私が新しいライセンス規約の必要性について否定的だった理由の1つは、さまざまなメーリング・リストやその他のディスカッション・フォーラムでの感情的な言葉の応酬に絶好の機会を提供するだけだと思ったことだ。そして、FSFがGPLv3で目指している方向性に私が個人的に反対であることも紛れもない事実である」(トーバルズ氏)

(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)

フリーソフトウェア・ファウンデーション(FSF)
http://www.fsf.org/

提供:Computerworld.jp