CMMIに基づくIT購入プロセス標準が来春策定へ

 多くの企業や組織のIT部門が、ヘルプデスクやソフトウェア開発といった各種IT業務においてさまざまな標準を活発に採用しているなか、米国では現在、新たなIT購入プロセス標準の策定を目指す取り組みが開始されている。この取り組みには、ゼネラルモーターズ(GM)と国防総省という米国最大級のITバイヤーが参加している。

 米国カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI)は先ごろ、SLA(Service Level Agreement:サービス・レベル契約)の設定から調達プロセスの管理まで、ハードウェア、ソフトウェア、ITサービスの購入におけるあらゆる面でのベスト・プラクティスを特定した400ページにわたる予備報告書「Adapting CMMI for Acquisition Organizations」を発表した。

 この新たな標準策定に向けた取り組みは、IT分野における標準の欠如に批判的なGMのCIO、ラルフ・ジジェンダ氏のアイデアがきっかけとなっている。それは、ソフトウェア開発の成熟度モデル「CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)」を拡張してITサービス購入時に適用するというものだ。CMMIでは組織の成熟度が5つのレベルに分類され、各レベルで持つべきプロセスが規定されている。SEIではCMMIに基づき、ソフトウェアを開発する組織のレベルを評価しており、来年春に新しい標準が完成した段階で、ITの購入や販売を行う組織についても、同様のレベル評価が行われるようになる。

 GMのグローバル検証担当ディレクター、デボラ・イェドリン氏は、「われわれは、この報告書の内容が、最終的には主要なグローバル標準になると見ている。これは当社をはじめとするITバイヤーのベスト・プラクティスをまとめたものだ。われわれは約50の企業および政府機関と協力してベスト・プラクティスを集めた」と語る。

 米国国防総省は、この新たな標準の影響と価値を評価するパイロット・プログラムを実施する計画だと、同省のソフトウェア工学/システム保証担当次席補佐ディレクター、クリステン・ボールドウィン氏は声明で述べている。この標準を使用するかどうかの最終決定は、パイロット・プログラムでの評価と、国防関連の調達コミュニティによるレビューの結果しだいで下されるという。

 「この標準は、工学的な規律と一貫性を購入プロセスにもたらし、無形のメリットを提供する可能性がある」(ボールドウィン氏)

 同標準の策定プロジェクトに参加する組織は大きな購買力を持っている。例えば、米国政府は10月1日から始まる新年度予算で国防関連のIT支出として307億ドルを申請している。GMは年間IT支出を公表していないが、今年2月には5年間・150億ドルのITアウトソーシング計画を発表している。

 SEIの特別プログラム担当ディレクター、マイケル・フィリップス氏は、すでに多くの企業や組織がソフトウェア開発でCMMIを採用しているため、購入プロセス標準も普及すると見込んでいる。また、一部の政府機関はソフトウェア開発を外注するにあたって、CMMIの特定のレベルを満たしていることを条件に入札を募るが、こうした慣行がIT購入にも広がる可能性があるとしている。

(パトリック・ティボドー/Computerworld オンライン米国版)

米カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI)
http://www.sei.cmu.edu/

米ゼネラルモーターズ(GM)
http://www.gm.com/

米国国防総省
http://www.defenselink.mil/

提供:Computerworld.jp