SOA環境に適応する新世代Webサービス・アプリケーションサーバが登場

 米IBMの元幹部らによって設立された新興企業のWSO2が、SOA(サービス指向アーキテクチャ)環境に対応するWebサービス・ベースの新タイプのオープンソース・アプリケーションサーバ「Tungsten」(Javaバージョン1.0)を公開した。

 同ソフトウェアは、XML、SOAP(Simple Object Access Protocol)などWebサービス標準をサポートするアプリケーション・サーバ。BEA Systems、IBM、JBossなどが提供する一般的なアプリケーション・サーバは、Javaベースのトランザクション型アプリケーションをサポートしており、上位レイヤでWebサービスのサポートを実装する必要がある。

 米ザップシンクのシニア・アナリスト、ジェイソン・ブルームバーグ氏は、「従来型のJavaベースのアプリケーション・サーバは、スケーラブルなトランザクション型Webサイトをサポートするように設計されているが、J2EE(Java 2 Platform, Enterprise Edition)アーキテクチャは、SOAに対応した設計になっていない」と指摘する。

 「Javaが目指しているのは“ポータビリティ”であり、いったん記述すれば、どの環境でも実行できるようにすることだ。それに対し、SOAが目指しているのは“インターオペラビリティ”であり、メッセージを介して相互運用できるようにすることだ」(ブルームバーグ氏)

 WSO2の会長兼CEO、サンジバ・ウィーラワラナ氏によると、Tungstenの特徴は、より単純なフレームワークを提供することによって、顧客がWebサービスの配備をコントロールするのを容易にすることだという。同氏はWSO2の共同創設者の1人となる前、8年間にわたってIBMのWebサービス戦略にかかわっていた。

 「私は、IBMがWebサービスを実装している方法は最適なアプローチではないという結論に達した。IBMは、WebSphereの前にレイヤを置くことでWebサービスに対応させたが、Webサービス・プラットフォームとして見ると、J2EEとWebサービスのレイヤを分けるよりも、より軽量で使いやすいプラットフォームのほうがふさわしいと考えた」とウィーラワラナ氏は強調する。

 インターネットを介してアプリケーションが情報をやりとりする柔軟なビジネス環境を作成する手段として、Webサービスに注目する会社が増えている。Webサービスは、SOAPなどの標準によって手軽に結合することができる。

 「管理上の観点から見ると、J2EEの場合は、WebサービスのビューとJ2EEのビューという2つの方法ですべてをとらえる。だが、われわれの方式ではサービス指向のビューだけを意識すればよく、それ以外は存在しない」(ウィーラワラナ氏)

 WSO2 Tungstenはオープンソース・ベースであり、既存または新規のアプリケーションをWebサービスとしてエクスポーズできるオープンソース基盤「Apache Axis2」をベースに構築されている。

 WSO2はその製品をライセンス規約「Apache License」の下で無料提供しているが、サービスとサポートは有料で提供される。ちなみに、Tungstenに対する年間サポート料金は、サーバ2台までが3,000ドルからとなっている。

 WSO2の顧客名は公表されていないが、金融業界の複数の企業が同製品をテストしているという。

 最近、米Intelのベンチャー投資部門、ベンチャー・キャピタルが、WSO2に400万ドルの出資を決めたことは、WSO2のビジネス・モデルの正当性を示すものと言えるかもしれない。だが、大多数のオープンソース・ソフトウェア会社と同様に、WSO2にとっての最大の問題は、そのソフトウェアに関するサービスとサポートの販売にどれだけ成功するかだ、とザップシンクのブルームバーグ氏は指摘している。

 「同社は重要なニッチ市場を見つけた。それは、分散コンピューティングに対する非マイクロソフトのポストJavaアプローチだ」(同氏)

(ジェニファー・ミアーズ/Network World 米国版)

WSO2
http://wso2.com/

提供:Computerworld.jp