LinuxWorld基調講演: One Laptop Per Child(OLPC)
OLPCは発展途上国の貧困問題を子供の教育を通じて解決することを目指している。Negroponteは、学校と子供たちにコンピュータを提供すれば、伝統的な教科教育に資するばかりでなく、コンピュータ故の学習効果が得られると言う。プログラミングやコンピュータサイエンスを身近に感じた子供たちは、彼の表現を借りるなら「考えることを考える」ようになる。「たとえば、この20年米国や諸外国の教育課程でコンピュータが学童にもたらした目覚ましい成果を考えてみればよい。OLPCはそれを小規模に行おうとしているのだ」
Negroponteの話は、同プロジェクトに対する最近の批判に答える形で始まった。批判のひとつは、ラップトップ(まだ開発中)がスペック的に能力不足だというBill Gatesの意見だ。無駄を省いてスリムにしても能力的に劣るわけでないとNegroponteは言う。「今使おうと考えている500MHzのプロセッサは、ほんの5年前は最上位モデルだった。それに、CPUパワーが増えてもMicrosoftのシステムはいつもそれ以上の能力を要求するみたいだしね」
同プログラムのパートナーであるRed HatはオペレーティングシステムをMicrosoftよりもはるかに低価格で提供しているが、Negroponteによると、一般的な最新ラップトップの場合、OSベンダが手にするのはOS価格のたった25%だという。残りの多くの部分、そう50%近くは販売・営業経費と流通コスト、そして会社の利益に食われる。
それとは対照的にOLPCの場合、営業経費はゼロで、流通コストも非常に低く抑えられる。プロジェクト第1段階の対象七カ国(中国、インド、タイ、エジプト、ナイジェリア、ブラジル、アルゼンチン)の中央政府との直接取引で発注が1回で済むからだ。
風変わりなディスプレイだが、OLPCプロジェクトは規模が桁外れなので安く購入できるとNegroponteは主張する。「この仕様をあるメーカーに示したら最初は会社の戦略に合わないと断られたが、1億セットの発注規模が話に出た途端、戦略を変えてもかまわないと言ってきた」
プロジェクト第1段階は2007年第一四半期を目標に進められており、この時点で同ラップトップの価格は1台当たり約135ドルになるものと予想している。しかし、ハードウェアの価格は下降線をたどっているので、2010年までには1台当たり50ドルになるとNegroponteは予測する。
講演の最後の20分が質疑応答に充てられた。ある質問に答える中で、Negroponteの話は同ラップトップのネットワーク機能に及んだ。このプログラムは公立学校と協力して実施されるので、それぞれの学校に低価格のサーバーと(必要に応じて)衛星通信によるインターネット基幹接続が提供される。各ラップトップにはメッシュネットワークハードウェアが装備され、それが学校のサーバーの通信エリアを外に広げる。ラップトップの電源が切られた後もネットワークハードウェアは動き続け、他の参加者のためにルーターの役割を果たすのである。
最後に、同プロジェクト(あるいはそれぞれのコミュニティにおける同様のプロジェクト)に個人で参加する方法について2つの質問が出た。Negroponteによれば、同プロジェクトの第1段階はOLPCが各国政府と直接交渉するが、第2段階は個人がラップトップへの資金援助を行えるようにするという。多分、1台300ドルで購入して途上国の2台以上のラップトップのスポンサーになるといった形になるだろう。では、今すぐ学童支援のラップトップ・プログラムに参加するにはどうすればよいか。Negroponteの答えは単純で、「eBayに挑戦してみたら」というものだった。「現在300ドル以下でかなりまともなラップトップを手に入れることができる。何も待つことはない」
原文