中国のLinux戦略が変わる
GDLUPAは、大学生のための学習センターであるLinux Practical Base(Linux実習拠点)を複数設立した。「卒業後、学生たちはLinuxを国中に広めることになる」とLo Sanlu(GDLUPA役員)は言う。「GDLUPAの使命は、大学と連携し、Linuxの教育・研究を促進し、新たなLinuxプログラマを訓練し、広東省行政府レベルの振興制度を確立することだ」
GDLUPAは中国で初めてのLUPA(Linux振興連合)ではない。6月に鎮江Linuxセンター(ZJLC)と70以上の大学が中国初のLUPA(Leadership Of Open Source University Promotion Alliance)を立ち上げ、その3カ月後に新たなオープンソース・コミュニティ(Lupaworld)が作られた。
このようにLUPAやオープンソース・コミュニティが立ち上げられているのは、中国の新たなLinux戦略の反映と考えられる。拙稿「China’s Linux Disease」(中国のLinux業界の病)を仕上げて程なく、信息産業部のLPSPD(Linux Public Service Project Department)主任、Chen Weiが北京のいくつかの大学で一連の講演を行い、中国のLinux業界は本当に「病んでいる」ことを公に認めた。さらに彼によれば、中国政府はLinux戦略を変えつつあり、「Linux企業からオープンソース・コミュニティへ重点を移す」という。
これは中国のLinux業界にとって由々しき発表だ。中国政府はLinux行路の初っぱなでLinux企業への直接投資を試みたが、すぐ断念して政府調達やその他の間接投資による助成に切り替えた。そして結局オープンソース・コミュニティに助けを求めたのである。
しかし、政府が「重点」を移す先はどのオープンソース・コミュニティなのか?Chen Weiは講演の中で「行政府の後ろ盾があるコミュニティだ」とはっきり述べている。また、「中国は政府の選定したオープンソース・コミュニティに寄付または協力する企業に報奨を与える」とも述べている。
広東省行政府は昨年、GDLCを立ち上げてLinux企業およびコミュニティのために無料の公営テスト・プラットフォームを提供すべく375万ドル投資した。GDLCはGDLUPAを誕生させ、GDLUPAが新しいオープンソース・コミュニティを立ち上げ、そしてGDLUPAに政府の「重点」が移ろうとしている。
この新しい機関は行政府の後ろ盾がない企業やコミュニティから激しい非難の的となっている。「私が知りたいのは、政府が重点を移す先がどこかではなく、どんなやり方で重点を移すかということだ」とLi Jin(オープンソース・コミュニティに関心を持つプログラマ)は言う。「それが市場の公正な推進役となることができるのか、この新しい戦略は業界の不公正や裏ビジネスを減らすことになるのか、また我々のような民間企業に重点が向けられるチャンスはあるのか、そこが知りたいのだ」
残念ながら中国政府は現実に目を向けていないようである。これまでの政府の行動に失望したCSIA(China Software Industry Association)は、10月にオープンソースおよびビジネス・ソフトウェアの知的財産問題について調査報告を発表した。これを見ると、政府の不公平・不公正な行動がソフトウェア市場を混乱させていることがわかる。「政府はビジネス・ソフトウェアの分野にもう支援や介入をすべきでない」とこの報告書は結んでいる。
先の調査は中国政府の戦略に対決するものと見なされ、早速政府のお気に入り筋から強く非難された。Red Flag Softwareのある幹部は、あの調査は「悪意を持つ」ビジネス・ソフトウェア企業によって指導された「のではないかと思う」と言い、「そのような企業が不安を煽っている」と主張する。中国科学院(CAS: Chinese Academy of Science)のNi Guang Nanも、ソフトウェア業界における中国政府の戦略はこれまで「実り多きもの」だったと言い、あの調査には「秘められた動機がある」と非難する。
CSIA事務局長のChen Chongは、この調査に対する批判はまったくの憶測で根拠のないものだが、「調査の責任は負う」と述べている。
中国の新戦略が同国におけるLinuxの普及に資することは間違いないが、行政府の後ろ盾がない企業やオープンソース・コミュニティを排除する状態が続くようだと、Linux業界は今のまま無能な寵臣どもの天国であり続け、「病」から脱することはないだろう。
Chen Nan Yang — 中国のフリージャーナリスト。前職は地方行政府投資開発局のIT責任者。
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