Mandriva社がLycorisを買収

Mandriva(元Mandrake)は、人気の高いユーザレベル・デスクトップGNU/Linuxの一つだ。Mandrake社がConectiva社と合併して新たに”Mandriva社”となってまだほんの数か月だが、今度は、小さいながらも機能豊富なLycorisディストリビューションを買収した。

Lycoris社の創立者でCEOのJoe Cheek氏がMandriva社の社員になるかはまだはっきりしていないが、Mandriva社側はLycorisの有償顧客およそ20,000人のうち相当数がMandrivaClubに登録することを望んでいる。この買収は、長期的に見れば双方にとってよいことだろう。ただ、同社の成功は、Joe Cheek氏がMandriva社に残るか、現在のコンサルティング契約が終了したら立ち去ることになるのかによって大きく左右される。契約は今年の秋までだという。

今回の買収を発表したMandriva社のプレスリリースは、以下のように記している。

「Joseph CheekがMandrivaファミリーに参加する決心をしてくれてたいへんうれしく思います。これによって、デスクトップツールと優れた製品の独自のノウハウがもたらされるでしょう。今後は、大勢のDesktop/LXユーザに前進の道筋を示すことが目標です」とMandriva社CEOのFrancois Bancilhon氏は話す。

Joseph Cheek氏は「Lycorisは新しいMandrivaチームに参加することで意気込んでいます。私たちのDesktop/LX製品の優れた品質とMandrivaの優秀な技術を併せれば、Desktop/LXとMandrivaのユーザに一層すばらしいコンピューティング体験を提供できるでしょう」と話した。
だが、Cheek氏はNewsForgeの電話インタビューにおいて、現時点ではMandriva社とはコンサルティングの短期契約しかしていないと話した。契約はこの秋までで、それまでにLycorisの次バージョンを出そうとしており、Cheek氏はドキュメントとその他のデスクトップ開発の仕事を引き受けた。だが、現段階ではそれ以上の正式な契約は一切結ばれていないという。ただ、Cheek氏もMandriva社のスポークスパーソンで共同創立者のGael Duval氏も、永続的な関係を望んでいる。

Lycorisの資産:Joe Cheekとボランティア

つまるところ、Lycoris社はJoe Cheek氏本人と同氏のいうところの”ボランティアのコアグループ”だけで成り立っている。同社はベンチャー投資資金を受けたことはない。Cheek氏がMicrosoft社を辞め、短期間だけLinuxCare社に在籍した後、自己資金で始めたのがLycoris社だ。LinuxCare社は、2001年に消えたが、Levanta社として生まれ変わった。

Cheek氏は、Linuxの世界で数多くの”初の試み”を行ってきた。ディストリビューション・パッケージの会社がプレロードLinuxハードウェアを自身の販路で販売するという最先の試み、Windows用ハンドヘルドPC向けLinuxの開発、最初のGNU/LinuxタブレットPCなどだ。

最初のLycorisリリースはCaldera Linuxに基づいたもので、”待ち時間中にゲームをプレー”できるユニークなインストーラが付いていた。そこから急速に発達したが、(ほぼワンマンの)小さなショーで、Lycoris社が力に余る技に挑戦しているように見えることも多く、同社の革新的技術の中には実を結ばないものもあった。

そしていま、ショーは終わった。

Cheek氏は、「Lycoris社自体が大金を稼ぐ会社になっていたら、その方がきっとうれしかったでしょう」「個人的には少しがっかりしています」と話す。

その一方でCheek氏は、Mandriva社がLycoris社の購入に”いい値段”を支払ったことを認め、また、Lycorisのコアボランティア全員にMandriva社から”VIP貢献”特別手当てを獲得できてよかったと語った。

Mandriva社は”1+1=3″に期待

IMでのやりとりで、Mandriva社のGael Duval氏は、「’1+1=3’(またはそれ以上)とはつまり、Mandriva社とLycoris社が一緒になった場合の会社の価値は、それぞれ別々の場合より高くなるということです」と述べた。

Duval氏は、「Lycorisはすばらしい製品です。Francois(Mandriva社CEO)からLycoris社のことを聞いてLycorisを検証し、非常にすばらしいと思いました。それでもう少し詳しく調べて、その仕事が主にJoeによるものだと知ったときは、とても感銘を受けました」という。

LycorisユーザのMandriva Clubメンバへの切り替えに関し、Duval氏は、「もちろん、LycorisメンバがMandriva Clubに登録することを望んでいます。ただ、目標は長期的なものです。まずは、Joeが当社のDiscoveryなどのデスクトップ製品に必ずや付加価値をもたらしてくれるでしょう。それに、私たちはほかの製品のことも考えています。これがMandriva製品の市場での後押しになります。また、Linuxデスクトップ市場(個人向け)が動き出すのにも備えておきたいのです」と話す。

「それはいつになるでしょうか」ときくとDuval氏は以下のように答えた。
あらゆるLinuxデスクトップ技術はほぼ準備できていると思います。あとはソフトウェア会社がLinux市場への参入を決断するかどうかだけでしょう。ただ、私は予想以上に早くそのときが来るのではと思っています。これには2つの理由があります。

1)Acrobat Reader 7 for LinuxとNero for Linuxの最近のリリースといういい兆候が見られること。

2)Mac OSがIntelに移行して、独立系ソフトウェア会社がMacアプリケーションをLinux用にリリースすることも容易になったと考えられること。
いずれにしても、Linuxデスクトップ市場が始動したとき、Joe Cheek氏の業績も加わったMandriva社は、GNU/Linuxデスクトップ導入が急増しても十分対応できる、とDuval氏は考えている。

この記事を書いた後、Duval氏からメッセージが届いた。急速に広がっているある噂についてだ。「いいえ、社名を再び変更する予定はありません…」

原文