Linux Kernel Developers Summit 2004報告 (2)

前回に引き続きOTTAWAで行われたLinux Kernel Developers Summitの2日目の模様を報告する。世界中から注目を集めている次期Linuxカーネル 2.7についての開始時期についても議論がされた。

初日の報告はこちら

2日目

2日目は Customer panel という linux を使っている側の立場から,どういうふうに使っていて何に困っているかを説明するセッションから始まった.大規模ストレージの問題(ドライバやデバイス名の安定性),クラッシュダンプなど障害対応の問題,カーネルの開発に追従することの困難さ,テストケースの不足などが述べられていた.

続いてClustered storageというセッションが行われた。クラスタファイルシステム各種(GFS, OCFS2, Lustre)の話とLVMをクラスタ拡張したCLVMの話を聞けると思っていたら、GFS実装の概要の話をしているだけで、セッション時間を殆ど使い切ってしまった。

kexec / fastboot セッションでは、高速なシステム再起動のための様々な提案がなされた。kexec機能を活用してBIOS(ファームウェア)の処理の省略、デバイスの初期化の並列化、検出処理の省略、rcスクリプトの並列実行などを検討している話があった。組み込みLinuxを手がけているメーカにとっては非常に興味深い話である。

次のセッションはRAS toolsであった。RASツールがLinux Kernel Developers Summitの議題にあがること自体が、時間の流れを感じさせる。今まで多くのメーカやベンダが要求しても、Linusはガンとして認めてこなかった。各種RASツールにふれたが、そのひとつとしてLinuxカーネルクラッシュ時のメモリダンプがあった。現在の信頼性のないlkcdに代わり、kexecによる方式の提案がなされた。


高橋技術本部長(VA Linux)とセッション会場

午前最後のセッションは kernel networking summit であった。今年から、Linuxネットワーク機能に関しては、Network Summitとして、Linux Kernel Developers Summitの直前に開かれた。USAGIメンバも参加していたとのこと。本Summitでは、その報告がなされた。Mobile IPv6、VPNなどの暗号化処理のハードウェアアクセサレータ利用、NICカードの各種オフローディング機能の活用など、数多くの項目の改善を目指していくとのこと。

2日目午後一番のセッションはAIOであった。現在のAIOコードの現状説明に続け、今後のAIO機能拡張の可能性に関して議論が行われた。ネットワークのAIOに関する実装提案があったが、ネットワークのAIO実装に対しては、否定的な意見が多く見られた。

続くmultipathセッションでは、現在バラバラとなっているマルチパスドライバとデバイスマッパを統合したいと考えていることを話していた。

virtualizationセッションでは、仮想環境一般の話がなされた。 現在の単に動いているというレベルのものから本格的な仮想化を目指して色々な作業が並行して存在している。ゲストOSに割当る資源量の制御のひとつとして、 CPUとメモリのホットプラグ機能も必須となるが、順調に進んでいるので期待しているとのこと。また、仮想環境の動作効率化は重要な課題であり、解決しなければならない問題が山積みである。

securityセッションでは、現在進行中の様々な取り組みに関し、 それぞれの機能の方向性が示された。

最後のセッションとして、Class-Based Resource Managementが行われた。もっとFairな資源割り当ての制御を行おうとする試みである。プロセスの集合やユーザを基本クラスとして、そのクラスが利用できる各種資源(CPU、メモリ、I/Oなど)の総量を 定義するという機能である。現在の提案は複雑であるため、 もっと綺麗な方式がないかとの突込みがあった。

サミットの締め括りとして、2.7の開始時期に関する話と、来年(2005年)のサミットに関する議論が行われた。

早く2.7を始めたいと主張する開発者達が多い中、 Linusはいつ2.7を始めるかといことについて、具体的な回答は行わなかった。延々と同じような議論が繰り返される中、いままでのような失敗を繰り返さないためにも、2.6をキチンと仕上げてから始めたいとのLinusの意向があり、首を縦に振ることはなかった。

続いて来年度の開催地や開催方法について議論がなされた。 ヨーロッパやオーストラリアでの開催はどうだろう?といった話も あったが、やはり世界中の開発者が集りやすいOTTWAで開催されることになりそうだ。 また今年はカーネルサミットと別にネットワークサミットを開催し 上手くいった実績から、来年度は同様にデスクトップサミットを 併設することになるかもしれない。

岩本俊弘
VA Linux Systems Japan株式会社 技術部所属。