ReactOSの今後に期待

ReactOSは、Windows NTアプリケーションおよびドライバとの互換性を持つ、オープンソース(GPL)のOSである。現時点では、ReactOSはあくまで開発プラットフォームであり、一般ユーザ向けのデスクトップ・システムとしての利用価値はない。しかし、可能性はある。

ReactOSの開発者たちは、WINE projectとも密接に協力しあっており、最大限のプログラミング労力を共有している。現在はWindows NTのみだが、今後のリリースではWindows 2000およびXPとの互換性も実現される予定だ。

ReactOSでは、ネットワーク機能はサポートされておらず、また、GDI(Graphics Device Interface)の多くは未完成だ。しかし、GNU Midnight CommanderやMinGW(MinGWをサポートしているということは、ReactOSをReactOS上で再コンパイルできる)をはじめとするテキストベースのアプリケーションがいくつか利用できる。このプロジェクトに参加している開発者の数は増え続けており、作業のペースは加速度的に向上している。

インストール

ReactOS CDで起動すると、このインストール・プログラムがWindows NT/2000のインストールとよく似ていることに気が付いた。ブルーの背景にグレーと白のテキスト、画面下にメニューが表示され、ショートカット・キーは私の記憶に残っているNT/2000のショートカットと同じだ。Windowsのインストールで見た覚えがないものとしては、緊急用画面に切り替えるためのオプションだ。

Enterキーを押して続行した瞬間、私は、このテスト用にVMwareを選んだことに感謝した。ReactOSのセットアップ・プログラムでは、1つのディスクで1つ以上のプライマリ・パーティションを扱うことはできないこと、サポートされているファイルシステムはFATのみであること、そして、パーティション・テーブルの変更方法には多くの制約(拡張パーティションがディスク上にある場合、プライマリ・パーティションを削除できないなど)があることが表示された。これらの制約を受け入れると、一般的なデバイスの設定がいくつか表示される。私はこのうちのいくつかのオプションを変更しようとしたが、2つ(キーボード・レイアウトとマウス・デバイス)を除いてはまだ機能していないことがわかった。キーボード、モニタ、そして「コンピュータ」の種類(ここではどのようなオプションを選択することになるのかよくわからないが、デフォルトは「Standard-PC」である)では、自動判別された設定のままにするほかない。私はDvorak配列を使っているので、キーボード・レイアウトは重要な機能なのだが、ReactOS 0.2.2ではDvorak配列がサポートされていない。最後のステップでは、ReactOSをインストールするパーティションの選択を求められるが、私はVMwareを使ったので制約は問題にならなかった。

1回目の再起動(VMWareでは10秒もかからない)では、ReactOSインストーラが、コンピュータ名、ユーザ名、会社名を尋ねてくる。もう1回再起動すれば、インストールは完了だ。

パーティションに関するいくつかの制約を除けば、ReactOSのインストールはかなり簡単で、Windowsらしさを出すのにも成功している。ただし、通常のマシンにインストールするのは、よほど苦労が好きで、ドライバやパーティションに時間を費やせる人でない限り不可能だ。

デスクトップ

ReactOSデスクトップには、かなりの制限がある。その主な理由は未熟さであるため、今ある問題の多くは、Microsoft Windowsアプリケーションのサポートが完全になれば解決されるだろう。

アプリケーションを起動するには、[Start]メニューをクリックする。[Start]→[Programs]にアプリケーションが1つもないのにはがっかりさせられた。2つのサブフォルダがあるが、どちらも空だ(この「まだ空である」という現象は、ReactOS全体で見られる)。[Programs]フォルダには選ぶべきものがないので、[Start]→[Run]で表示されるダイアログボックスからReactOS Explorerを起動した(後から気付いたのだが、デスクトップにもショートカットがあった)。

ReactOSに組み込みの、マルチデスクトップ・サポートにはすぐに気が付いた。Windowsにマルチデスクトップ機能がないことは私を悩ませたが、現在はGNOMEを利用することでこの機能を活用している。ReactOSのマルチデスクトップを利用するのは難しくないが、この設定は、私が慣れ親しんでいるマルチデスクトップとは大きく異なる。すべてのデスクトップで、アプリケーションはタスクバーに表示され、現在のデスクトップのほかのウィンドウをそこに重ねない限りは、スクリーンにずっと表示されている。つまり、デスクトップ1に2つのプログラムがあり、デスクトップ4にも2つのプログラムがある場合、タスクバーには4つのアイコンが、スクリーンには4つのウィンドウが表示される(いずれか1つがフルスクリーンで表示されており、ほかのウィンドウを隠している場合は除く)。何が問題なのかと思われるだろうか?現在のデスクトップのウィンドウが、最前面に表示されてしまうのだ。機能はするが、見事とはいえない。

ReactOS Explorer自体は、最小限の機能しか持たない。コピー&ペーストは利用できないので、ファイルをあちこち移動させて遊ぶことはできない。Explorer内の複数のウィンドウは期待どおりに動作してくれるが、すべてのウィンドウに「junk!」という名前が付いてしまうので、実用性には乏しい。左上の11のボタンのうち、実際に使えるのは2つだけだ。いろいろな状況ですべてのボタンをクリックしてみたが、更新ボタンと新規ウィンドウボタンしか機能しなかった。この後、私はReactOS Explorerを使うのはあきらめてしまった。目的の操作を行うもっとよい方法があるはずだと思ったからだ。

デスクトップの[Command Prompt]アイコンをダブルクリックし、lsと入力した。読者の皆さんは「おいおい、これはLinuxじゃなくてWindowsだぞ!」と思われたに違いない。言うまでもないことだが、エラーメッセージが表示された。私の失敗談はさておき、コマンドラインのツールは非常によくできている。どのプログラムにも、問題や欠点は何もない。Linuxを基準に考えればそれほど多くのツールがあるわけではないが、Windows 2000マシンと変わらない程度のコマンド数があった(対応するヘルプ・コマンドを比較した場合)。

ReactOSにはほかにもいくつか有用なツールがある。タスクバーを右クリックすると、デスクトップ設定ユーティリティにアクセスできる。ここでは、デスクトップ・アイコンのレイアウトを簡単にコントロールできるほか、デスクトップのバージョン番号を切り替えたり、アイコンをシステムトレイ内に隠したりすることができる。同じメニューから、シンプルなタスク・マネージャを起動することもできた。[Performance]セクションはあまりよくないが、アプリケーションとプロセスの一覧表示は、多少のバグはあるものの、使用に耐える出来だ。

現在のままでは、ReactOSはほかのデスクトップ・システムと肩を並べることはできない。本稿でもReactOSの多くの問題を指摘したが、最終的にはむしろよい印象を持った。バージョン0.2.3は0.2.2に比べて大きく進歩しているし、開発のスピードも加速中だ。この勢いが続けば、ReactOSはいつかLinuxと並ぶデスクトップ・システムになるかもしれない。

Preston St. Pierre――カナダ・ブリティッシュコロンビア州のUniversity of the Fraser Valleyでコンピュータ情報システムを専攻する学生。