富士通、PostgreSQLデータベース新機能の開発費を援助
富士通は、WindowsとLinuxその他のオープンソースの両方を、自社の混合戦略に組み込んでいる。PostgreSQLコアチームメンバJosh Berkus氏によれば、富士通は、コードの貢献と開発援助という形でBSDベースのPostgreSQLデータベースをサポートし、その成果はバージョン7.5に入る予定だという。バージョン7.5は、今年中に入手可能になる見込みだ。
Berkus氏によると、富士通は昨年、$450億ドルを投入しており、これまでPostgreSQLに直接貢献した企業のなかでも最大で、PostgreSQLコミュニティは、富士通との協力関係が「少なくとも今後数年」継続することを期待しているという。
「富士通がこのように有意義な形でPostgreSQL開発に関与することをわたしたちは喜んでいます。」とPostgreSQLコア推進委員のBruce Momjian氏はいう。同氏は、この支援活動において富士通と提携関係を結んでいるSoftware Research Associates社(本社東京)の社員だ。「コミュニティで重要な役割を果たす個人の作業が援助されることによって、エンタープライズに必要な主要機能の開発が迅速化します。」
富士通、機能フリーズを覆すBerkus氏は、PostgreSQLの次バージョンの機能は7月1日にフリーズするとしながらも、さらに3つの新機能がバージョン7.5に含まれる予定であることを報告した。テーブルスペース、トランザクションのネスト、Javaサポートの3つの新機能は、富士通がSRAと提携して支援するという。
「こうした新しい機能の大部分は、PostgreSQLの次のリリースに入る予定です。バージョン7.0以来ほぼ4年ぶりに、非常に重要なリリースとなるでしょう。」とBerkus氏は話す。現在、完全なポイントインタイムリカバリと2段階コミット、データの完全性とスケーラビリティの向上、ネイティブWindowsエディションのほか、高可用性とクラスタリングやレプリケーションのソリューションが、多様なユーザ要求に応じて開発中であるという。
Berkus氏は、富士通が取り組んでいる新機能について以下のように説明した。
- テーブルスペース―大量のデータを別個のストレージデバイスに簡単かつ効率的に分割する手段。PostgreSQLでパフォーマンスを維持しながら、数百ギガバイト単位、テラバイト単位の大規模データベースを処理する上で重要な機能である。
- トランザクションのネスト―データベースのコミットとロールバックを、アプリケーション開発者が非常に細かいレベルで制御できるようにする。特に、データの完全性を維持したり、ほかのデータベースプラットフォームからアプリケーションを移植する上で重要な機能である。
- Javaのストアドプロシージャの堅牢なサポート―これは、ANSI SQL99標準のSQLJ仕様の目標を超えるものである。
「(Javaデータベース接続性のための)JDBCドライバの拡張と併せ、PostgreSQLは、Javaの各種テクノロジ層におけるエンタープライズクラスのサポートを備えるようになります。」とBerkus氏は話した。
エンタープライズ参入への一歩これらの新機能は、メインオープンソースPostgreSQLデータベースで入手できるようになり、グループのサイトからフリーダウンロード可能になる。富士通はまた、SRAがPowerGresおよびPowerGres Proブランドの名前で日本およびワールドワイドで展開している、拡張版PostgreSQLパッケージについても、引き続きSRAと提携する予定だ。
富士通オーストラリア支社のシニアプログラムマネージャ、Tom Szolnoky氏は、富士通は長期的な提携を望んでおり、PostgreSQLのエンタープライズ拡張の展望に期待していると述べた。「わたしたちは、PostgreSQLコミュニティとの提携関係、共同開発と、それに応じた資金提供をさらに進めていきたいと考えています。」とSzolnoky氏は話す。「目標は、PostgreSQLをエンタープライズ対応にすることです。」
Berkus氏は、決まったリリース日程はなく、「これはOSSプロジェクトなので固定スケジュールには執着しない」とし、バグを全部つぶして回帰テストを完了しなければPostgreSQL 7.5はリリースしない、と話す。が、コミュニティは「大手プロプライエタリデータベースを追い上げる」ことに希望を持っているという。
「現在テスト中の機能がすべて完成したら、Oracle、Sybase Enterprise、DB2との格差は半減します。そうなれば、PostgreSQLのハイエンドデータベース製品としての競争力は高まります。」とBerkus氏はいう。
同氏は、PostgreSQLをWindowsへ移植する作業も進行中であることに触れ、これが達成されれば多くの新規ユーザの獲得を期待できると話す。
「現在のベータ版は、特殊なWindowsツールを使ってコンパイルしなければならないのですが、毎週平均1,000部ダウンロードされているそうです。」と同氏は話した。
コミュニティへの投資富士通が最大だとしても、PostgreSQLのコードに貢献し、資金援助等のサポートを提供している企業はほかにもある。なかでもVisual ExplainやPostgreSQL GUIなど、Red Hat社のツールが果たす役割は大きい。Command Prompt Inc.社による、PL/PHPモジュールJavaベースGUI、Webフレームワークなど、開発のオープンソース化という形の支援もある。同社はまた、PostgreSQLのバックエンドコンポーネントであるecpgライブラリの開発や、PL/perlモジュールの整備にも貢献している。
PostgreSQL Inc.社からのサポートもあり、同社は初期世代のレプリケーションシステムeRServerに貢献した。同社が発表した戦略は、このサーバを一年間はプロプライエタリとして維持し、一年後にオープンソース化するというもので、同社はこれを実行した。
最近では、.orgドメインと.infoドメインのレジストラ企業であるAfilias社が、PostgreSQL用のエンタープライズクラスの新しいレプリケーションシステム、Slony-Iの開発における、開発者Jan Wieck氏のフルタイム作業を援助した。Slony-Iは、今月(7月)オレゴン州ポートランドで開かれるOSCONで紹介される予定だ。
Afilias社広報担当Heather Carle氏によると、自社のコードも公開するオープンソース支援企業である同社は、PostgreSQLコミュニティに深く関与することで、このコミュニティの専門知識から利益を得られる、という。
「オープンソースコミュニティの利点は、ひととび何かをリリースすれば、さまざまな人たちがこれを見て、バグを修正したり機能を追加したりしてくれるということです。」とCarle氏はいう。
Carle氏はまた、ソースコードを公開してアクセス可能、入手可能にすることは、インターネット初心者と発展途上市場への橋渡しとなり、こうした市場で国番号が同社にとって有益であることが立証された、と話した。
Berkus氏は、PostgreSQLを支援する企業は、よりよい製品と市場拡大という点で利益を得ているという。
「多くの企業がPostgreSQLプロジェクトに多大なコードで貢献するのは、自社の製品ラインやビジネスを補完するものになるからです。」と同氏はいう。「これによって、PostgreSQLは向上し、その結果、導入が増加し、支援企業の中核製品の売り上げが伸びます。また、多くの企業のマーケティング部門は、オープンソースコミュニティが”草の根マーケティング隊”となることを認識しており、旧来のマーケティング手法では到底及ばない効果があると考えています。つまり、”善良なオープンソース市民”として認知されれば、企業の売り上げにおいても技術者採用においてもたいへん有利になるのです。」