Debianの末裔対決:LibraNet 2.8.1

Debianベース・ディストリビューションのレビュー第4弾をお送りする。これまでの3回では、LindowsOS 4.5、新顔のMEPIS LinuxXandros 2.0を扱った。いずれもよく知られた商用ディストリビューションであり、WindowsからLinuxに乗り換えようとするユーザが取っつきやすい環境を提供しているのが特徴だ。しかし、今回のLibraNetは違う。LibraNetは、Windowsからの乗り換え組ではなく、すでにLinux(Debianを含む)を使っているユーザをターゲットにしている。

私は最近、1999年後半に、linux.debian.userニューズグループにLibraNetに関する投稿があったのを発見した。それは、LibraNetが少しは役に立つかどうかを尋ねる投稿に対する回答で、「要するにDebianだね。Debianよりもインストールが簡単なわけじゃない。まあ、デスクトップ(ウィンドウ・マネージャ)は面白いものがたくさん入っているよ」という内容だ。今でも、状況はそんなに変わっていないように思う。

実は、Hampshire LUG Discussion listで、LinuxMafia.com内の各種「Debianインストーラ」についてのページを紹介している投稿を見つけた。このリストで突出しており、また、推薦されているのがLibraNetだ。

テスト環境

私が使ったマシンは、このレビュー用にFry’s Electronicsで購入した安価なデスクトップ・マシン(199.99ドル)だ。800MHzのVIAプロセッサ、128MBのDRAM、30GBのハードディスク、52倍速のATAPI CD-ROMドライブが搭載され、メインボードにはAC97 Codecのサウンドカードと3Dグラフィックアクセラレータビデオカード、SiS630Eチップセット、そして10BaseT/100BaseTXのNICが組み込まれている。

このマシンを、自宅LAN経由でインターネットに接続した。私の仕事用デスクトップの隣にあるBelkinのWi-Fiルータとこのテストマシンを、Cat 5ケーブルで接続した。また、仕事用デスクトップに接続してあるHPプリンタは、LAN経由でほかのマシンと共有できるようになっている。

インストール

LibraNetリリース2.8.1の2つのISOイメージをダウンロードしてCD-Rに焼き(K3Bのお世話になった)、インストールの準備が整った。起動後最初に表示される画面は、インストール中に画面を移動したり、必要なオプションを選択したりする際に使う矢印キー、Tabキー、Enterキーについての説明だ。ウィンドウはDOS時代に逆戻りしたかのような、あるいは3〜4年前のLinuxのインストールで表示されていたような外見だ。昔風のウィンドウと言ってよいだろう。

私は、ハードディスクをそのままインストーラに任せて、最適なパーティション化を自動的に行わせた。このようにするとReiserFSパーティションが1つまたは2つ作成され、 ベース・システムがインストールされる。

その後表示される一連のプロンプトでは、Libranetに起動操作を行わせるかどうかやブート・フロッピーを作成するかどうかを指定し、タイム・ゾーンを設定する。これが終わると、再起動のためにCDを取り出すよう求められるので、私はこれに従ったのだが、LibraNetはXandrosと同じく、マシンを再起動してくれなかった。1〜2分待って、私はリセットボタンを押した。

続いて、rootのパスワード、ユーザ名とパスワード、ホスト名を指定する。これが終わると、CD1を再び挿入するよう指示されるのでこれに従い、Enterキーを押すと、インストール作業が続行される。デスクトップの設定準備の後、カーネル・ソースをインストールしている旨のメッセージが表示される。

次はXの設定だ。自動設定と手動設定が選べるが、私は自動設定を選択した。SIS630ビデオ・カードがあるか、そして、PS/2マウスがあるかという問いに、両方「イエス」と答えたが、インストーラはモニタを認識できず、水平/垂直周波数などの情報を入力するよう告げられた。Linuxのインストールでこの類の情報を入力するのは久々の経験なので、手元に用意していなかった。私は1152×864(このとき選択できた最大のサイズ)を指定し、操作を続けた。テストは成功したが、スクリーンの半分しか使われていない。この設定はインストールの終了後に調整できるということだったので、ひとまずはこれを受け入れて次に進むことにした。

ここで、インストールするパッケージのグループを追加または削除することができる。私がいくつか追加し、さらに、KDEの代わりにGnomeを選択した。そして、選択したパッケージのインストールが始まった。この時点で、インストール作業開始から16分が経過していた。

25分経過、CD2を挿入するよう指示された。30分経過、パッケージのインストールが完了した。インストール中、ハングしたと思ったことが何度かあったが、いずれの場合もハングしていなかった。

パッケージがすべてインストールされ、後はサウンドカード、ネットワーク接続、プリンタの設定を残すのみだ。サウンドの設定は簡単だ。インストーラはTridentドライバがあることを自動的に認識し、これをインストールして完了だ。ネットワークの設定も同様に簡単で、設定の種類(ppp、ネットワーク、エキスパート)とネットワークの種類(静的、動的、pppoe)を選択し、サインオン時にホスト名を送信するかどうかを指定したら、ネームサーバのIPアドレスを入力する。最後の作業が若干不安だったが、何の心配もいらなかった。必要なのはBelkinsルータのローカル・アドレス(192.168.2.1)のみで、インストーラがこのアドレスを使うよう指示してくれた。

ローカル・プリンタはないので、これですべての作業が終了した。インストーラからは、新しいシステムを使う準備ができたこと、そして、Enterキーを押せばシステムが開始することが告げられ、私はそれに従った。ログイン後、私はGnomeデスクトップが表示されるものと思っていたが、実際に表示されたのはiceWMだった。ともかく、インストールは1時間20分で完了した。

インストール後の風景

Libranet 2.8.1 desktop まず行わなければならなかったのは、モニタの正確なスペックがわからなかったためにインストール時に失ってしまったモニタ領域を取り返すことだった。LibraAdminを起動してX configurationを選択し、私のモニタが60hzの1240×1024で、17インチであることを指定した。一度ログアウトして再度ログインし、セッション・パラメータをGnomeに設定すると、モニタの問題はすべて解決した。

Gnome環境のLibraNetデスクトップでは、スクリーンの上部のタスクバーにおなじみの足跡アイコンが表示されている。このアイコンをクリックするとapplicationsメニューが表示される。また、デスクトップには、Homeディレクトリ、Adminmenu、PPP、LibraNet forumへのリンク、ゴミ箱、Start Hereの各アイコンが表示されている。

LibraNetのデフォルト・アプリケーションの選択には文句の付けようがない。Gnome以外にもいくつかのウィンドウ・マネージャを選択することができた。LibraNetのデフォルトに含まれるiceWMデスクトップでは、ブラウザをNetscape、Mozilla、Galeon、Operaから選ぶことができる。電子メール・プログラムは、Mutt、Balsa、Sylpheed、Evolutionが用意されている。どちらにも私のお気に入りがちゃんと含まれていて、なかなかのラインナップだと感じた。

接続

LibraNetは、インターネットや共有プリンタへの接続の面倒は見てくれない。その代わり、AdminMenuは、一番の目玉といってもよいほど非常によくできている。インターネット接続や共有プリンタを含む、システム管理に関して必要と思われる機能はすべて備わっている。ただし、システム(LANを含む)に関してはそれなりの知識が必要とされる。

ソフトウェアの保守

LibraNetはつい最近(本稿の執筆時から考えて「最近」だが)、最新のセキュリティ/バグフィックスをユーザーに提供する「update-safe archive」を発表した。現時点では、リリース2.8と2.8.1のユーザだけが利用可能だ。update-safe archiveは、リポジトリを混用することで安定性やサポートを犠牲にすることなく、LibraNetのユーザが最新のDebianリリースに対応できるようにしたツールだ。カーネルはまだ含まれていないが、近いうちに計画されている。

セキュリティ

セキュリティは、LibraNetの得意分野とはいえない。もちろん、rootパスワードは要求されるし、rootユーザだけが行える操作と通常のユーザが行える操作はきちんと区別されている。しかし、それ以外は何もしないのだ。ファイアウォールはデフォルトではインストールされていないし、インストールの最後ではセキュリティ・フィックスの自動チェックも行われない。インストールが完了したときから、最初にupdate-safeを行うまで、ユーザは脆弱な環境に置かれるのだ。

ところで、この最初のupdate-safeは、Adminmenuで簡単かつ要領よく行える。私がSecurity Updateをクリックすると、13のパッケージにセキュリティ面の問題があり、アップデートが必要であることがわかった。

AdminMenuではさらに、GUIでファイアウォールをインストールしたり、スタートアップ時に起動するサービスを制御したりすることもできる。

サポート

LibraNetは、無料のダウンロード・バージョンには、Support Solutions Databaseから利用可能なもの以外サポートを提供していないが、登録済みのユーザには電子メールでのサポートがある。LibraNetの”up and running” (TM) サポートは、「出荷時の設定」のまま使っている限り、「正常に機能するようにして、さらにその状態を維持する」ようデザインされた。

結論

LibraNetのスコアは、今回のレビューで取り上げたほかのディストリビューションと比べてあまり高くない。しかし、これには理由がある。つまりLibraNetには、ほかのディストロにあるような、懇切丁寧な機能は用意されていない。その懇切丁寧な機能で評価が決まっている以上、よいスコアが付くはずがないのだ。

LibraNetがこの部分をあまりカバーしていないのは、手落ちや怠慢のせいではない。LibraNetが主なターゲットとしているのはDebianユーザおよびDebianファンたちなので、1から10まで教えてやる必要がないのだ。このようなユーザたちは、apt-getを使ってソフトウェアの保守を行ったり、システムを安全に保ったりする方法を知っている。また、私とは違って、共有プリンタのCUPS URIもわかっているかもしれない。

賭けてもいいが、このレビューで扱ったディストリビューションを、Debian使いたちが彼らの基準でベンチマークすれば、結果はまったく違うものになるはずだ。

LibraNetは、経験豊富な上級Linuxユーザにとっては優れたディストリビューションなので、このような人々には推薦できる。ただし、初心者にはお勧めしない。

カテゴリ LindowsOS 4.5 MEPIS 2003.10 Xandros 2.0 LibraNet 2.8.1
インストール 90 90 75 70
接続 95 95 85 75
セキュリティ 85 95 95 85
ソフトウェア保守 95 90 95 85
無料(代金に含まれた)サポート 75 90 90 85
テスト済みバージョンの価格 $49.95 $17 $89.00 $74.95
アップグレードソフトウェア $49.95 なし なし なし
総合評価 88 92 87 80