Debianの末裔対決:LindowsOS 4.5

DistroWatchに捕捉されている200余種のLinuxのうち、Debianをベースにしたものは47を数える。Debianと言えば、インストールが難しいという評判がもっぱらだが、事実は逆である。Debian系は、あらゆるLinuxディストリビューションのうちで最も使いやすく、保守も簡単である場合が少なくない。

今後数週間にわたり、Debian末裔の有力どころをいくつか拾って、インストール、接続、ソフトウェア保守、セキュリティ、サポートの各項目について評価を下していこう。皮切りとなる今週は、LindowsOS 4.5を取り上げる。

LindowsOSについての風聞

LindowsOSについては、デビュー以来、否定的な意見を多く耳にしてきた。「あのインストール手順じゃ、ユーザーがルート権限を行使するのを奨励しているようなものだ」、「しかもパスワードなしでできる」云々。「LindowsOSソースコードへのアクセスを認めないのはGPL違反だ」とか、「昨年のデスクトップLinuxトレードショーで、会社がこずるく立ち回った」などの噂も聞いた。まあ、企業の広報担当というものは、Linux業界紙よりWindows業界紙と仲良くしたがるものだ。それは、私自身の経験からも言える。

製品レビューの冒頭でこうした悪評を紹介するのは、私の評価態度を知っておいてほしいからである。私は決して先入観なしでLindowsOS 4.5のレビューに取り掛かったのではない。末尾のような結論に至るとは、思いもよらなかった。

テスト環境

このレビューには、Fry’s Electronicsで買った低価格($199.99)デスクトップをテストマシンとして使用した。仕様は、800MHz VIAプロセッサ、128MB DRAM、30GBハードディスク、52X ATAPI CD-ROMドライブ、AC97 Codecサウンド(メインボードにビルトイン)、3Dグラフィックアクセラレータビデオ、SiS630Eチップセット、10BaseT/100BaseTX NICである。

このテストマシンがホームLAN経由でインターネットに接続する。オフィスデスクトップの横にはBelkin Wi-Fiルーターが鎮座していて、これがCat 5ケーブルでテストマシンとつながる。オフィスデスクトップにはHPプリンタも接続していて、LAN上の他マシンと共用できる設定になっている。

インストール

インストールCDからブートすると、LindowsOSをインストールするのか、診断プログラムを実行するのか、という選択肢が示される。前者を選ぶと、インストーラが自身をアンパックし、ハードウェアをあれこれ調べ始める。その間、約2分ほど画面が真っ暗になる。

次画面でも選択肢が2つ示される。ディスク全体をそのままインストールするか、「上級」インストールを行うか。今回のレビューシリーズでは、ディスク全体をそのままインストールすることで通したい。

次に、コンピュータに名前を付け、システムパスワードを決めるよう要求される。パスワードの使用は推奨されるだけだが、コンピュータ名は必須である。私は創造性に富んだタイプなので、Lindowsのインストール先であるFry’s Electronicsデスクトップの型番号、GQ-3051をそのままコンピュータ名にした。

ここまで終えたところで、インストールの種類(ディスク全体)、コンピュータ名、システムパスワードを確認するよう、インストール手順が要求してくる。確認すると、すぐ、データの再確認の要求がある。言われるとおり、これも確認する。

15〜20分後、インストーラから「続行するにはReturnを押せ」という指示があり、そのとおりにすると、CDドライブが開く。ブートCDを取り出すと、システムがリブートする。 LindowsOSのオープニング画面は、インストーラ画面と非常によく似ている。しかし、選択肢が増えていて、LindowsOSのブート、ハードウェアの再検出、診断の実行、のいずれかを選択できる。最初のオプションを選択する。

システムパスワードを入力すると、LindowsOSのデスクトップが現れ、「初回セットアップ」ウィザードが立ち上がる。ウィザードからの指示は、まずシステム時刻の設定である。これを行うと、画面がまた30秒ほど暗くなり、デスクトップが再表示される。ウィザードからの指示が多少増えている。

ウィザードによると、LindowsOSは「厳格な」ファイアウォールをセットアップした、とのことである。また、「上級」設定がいくつかあるので、調整するとよい、ともある。「上級」設定のなかには、システムパスワードの変更、画面解像度の変更、ユーザーの追加、システム名の変更が含まれる。

このとき、ふと気づいたことがある。それは、私がいまルート権限を行使していて、「システムパスワード」とは実はルートパスワードだ、ということである。そこで一般ユーザーを1人追加することにした。これは信じられないほど簡単で、ユーザー名とパスワードを入れるだけですむ。次にライセンス条項を読み、それを受け入れると、ウィザードが終了して、LindowsOSのデスクトップチュートリアルが始まる。

チュートリアルの実行中は、デスクトップとパネルのアイコンにマウスカーソルで触れると、情報ウィンドウがポップアップし、そのアイコンが何であり、何をするかを説明してくれる。画面上で、「ライセンス情報とソースコード情報」へのリンクと思しき項目が目にとまった。そこで、そのリンク上へカーソルを滑らせると、どのLindowsOSサイトのどこへ行けば、LindowsOSソースコードの「大部分」をダウンロードできるかを教えてくれた。また、ソースコードを収めたCDの注文方法もわかった。

チュートリアルを閉じると、再び「本物の」デスクトップが表示される。あれこれ考えずに、とにかくブラウザをクリックしてみた。インストーラは私のインターネットアクセスを正しくセットアップしてくれただろうか……おお、確かにしてくれている。ここで、私はまだスーパーユーザーとしてログインしていることを思い出したので、いったんログアウトし、さっき追加した新しいユーザーとして再度ログインした。

インストール後の風景

デスクトップの左側には、アイコンを高く積み上げた柱ができている。[My Computer][My Documents][Network Browser][CD ROM][Floppy][Printers][Trash][Internet Connection Tools][Mail][Web Browser]などがある。画面の下縁には水平パネルが置かれ、そこに[Lindows][Help][File Manager][Click-N-Run][Web Browser][Mail][IM]の各アイコンが並んでいる。Lindowsアイコンは、大きなLという文字である。これはGnomeの足アイコンやKDEのギヤアイコンと同様のものであり、クリックすると、メニューのメニューが表示される。

当然、OpenOffice.orgアイコンがあるものと思っていたが、デスクトップにはなかった。Lindows社の広報によると、CDからインストールするバージョンには含まれているが、ダウンロードバージョンには含まれていないそうである。まあ、よかろう。後で、LindowsのClick-N-Runサービスを試してみることにしよう。

接続

インストールが完了したとき、インターネットにはもう接続済みだった。BelkinルーターのDHCPサーバーからコンピュータ自身がIPアドレスを取得していて、私は何一つする必要がなかった。上で名前が出た[Internet Connection Tools]フォルダをのぞいてみると、AOL、NetZero、Juno、EarthLink、SpeakEasyといったISP各社へのダイヤルアップ接続スクリプトが入っていた。

次は、オフィスデスクトップのHPプリンタをLindowsからも使えるようにしたい。うまく設定できるだろうか……だが、私が何かをするまでもなく、設定は既に終わっていた。私はテキストエディタを立ち上げ、何かを2、3パラグラフ分打って、オフィスのHP DeskJet 842Cを選び(そんなプリンタがあることを教えてもいなかったのに!)、それを印刷した。ここでも、ほんとうに何一つする必要がなかった。

たまたま前週末、友人がWindowsのホームLANで同じことをしようとしていて、私は手伝いを頼まれた。そこで1時間もてこずる経験をしていたので、よけいに印象が強かった。友人のWindowsホームLANでは、Windows 98コンピュータとWindows XPコンピュータがまるで異なる言葉をしゃべっているようで、どちらも相手を認識してくれなかった。それをかくもたやすくやってのけるとは、LindowsOSは大したものだ。

ソフトウェアの保守

CNRアイコンをクリックすると、LindowsのClick-N-Runアプリケーションが起動する。1クリックでOpenOffice.orgがインストールされ、さらにもう1クリックでMplayerがインストールされた。Click-N-Run Warehouseに収められているアプリケーションなら、すべて同様である。現在、Warehouseの収蔵項目は1,800を超えていて、常に最新状態に保たれているらしい。インストール作業と同様、きめの細かさに多少欠ける部分があることは覚悟しなければならないが、それが良いことか悪いことかは、ユーザーしだいということになろう。

たとえば、urpmiを使ってMandrake 9.2にMplayerをインストールするとしよう。この人気ビデオプレーヤのGUIフロントエンドがほしければ、mplayerとmplayer-guiの両方をインストールしなければならない。コマンドライン命のオタクにとっては好ましいことかもしれないが、そうでない人には余計な手間である。これに対し、CNRにはそもそも選択の余地がなく、1回のクリックで両方がインストールされる。LindowsOSは、CLI指向の人間には最高のディストリビューションとは言えないだろう。

セキュリティ

セキュリティ問題に関するかぎり、聞こえてくる「悪評」は的外れである。ファイアウォールはデフォルトでインストールされるし、ユーザーがルート権限を行使することは推奨されていない(ただ、するな、という強い警告もないので、多くの人がそうするだろうとは想像できる)。パスワードの使用は推奨されている。システムセキュリティは手放しで褒められないにせよ、まずまずといったところだろう。

Lindows広報のCheryl Schwarzmanからもらった電子メールには、「危機的でないかぎり、システムの自動更新は行われない」とあった。つまり、セキュリティ問題が危機的であるとLindows社が見なさないかぎり(最後にそう見なしたのは、2003年9月、Open SSHバッファオーバーフロー問題が起こったときである)、ユーザーは定期的に[Updates]->[Recommended]をチェックして、自分でセキュリティを維持しなければならない。インストールやデスクトップチュートリアル、さらにはCNRを使いやすくするために注がれた努力に比べ、どうもセキュリティは最優先課題になっていないという印象を受ける。

サポート

LindowsOSからは、Webサイトを通じて何種類かのサポートが提供される。たとえば、検索可能なFAQ、コミュニティフォーラム、電子メールによる技術サポート(Ask Us)が主だったものである。熱狂的なLindowsOSユーザーのコミュニティがある一方で、IRCによるコミュニティベースのリアルタイムサポートはあまり活発ではないように見える。というか、LindowsOS専用のIRCチャネルというものを、私は見たことがない。もちろん、ないと断定しているわけではなく、あるかもしれないが、私がオンラインでよく立ち寄る先では、他のディストリビューションほど目立たない。

結論

下の表に見るとおり、LindowsOS 4.5に対する私の評価はB+である。本格オタク向けLinuxではないが、伝説の平均的コンピュータユーザー向けとしては断トツにすぐれたLinuxディストリビューションだと思う。

インストールは楽勝だし、CNRのおかげで、ソフトウェアの保守作業からもオタク色が一掃された。Click-N-Run(クリックして実行)の名前に偽りはなく、アプリケーションの追加や更新は実に簡単である。「とっつきやすいLinuxは?」と技術音痴の友人から尋ねられたら、私は自信をもってLindowsOSを推薦する。

カテゴリ LindowsOS 4.5
インストール 90 A-
接続 95 A
セキュリティ 85 B
ソフトウェア保守 95 A
無料(代金に含まれた)サポート 75 C
総合評価 89 B+