Sun去りし後
誰もが一番知りたいのは、「Javaはどうなるのか」および「OpenOffice.orgはどうなるのか」という点だろう。これらは切実な疑問である。
Sunの危機はしばらく前から高まっていた。創設者のBill Joyが会社を去ったことは不吉な最近の象徴だが、彼らの問題の本質は、利幅の大きいサーバ・ビジネスが、Linuxが動作するPCによってローエンドから急速に浸食されつつあり、もはや一刻の猶予もならないことである。
Sunの終焉の見通しに喝采を送るようなことをすべきではない。1980年代にUnix標準化の取り組みを打ち砕いたことに始まり、Javaをプロプライエタリなままにして、どこでも動くJavaという夢を窒息させたことまで、Sunはいくつかの重要な判断で大きな誤りを犯してきた。しかし、SunがUnixハッカーによってUnixハッカーのために創設されたことを忘れてはならない。その歴史の大部分において、Sunは技術主導型企業の原型をとどめてきた。おおむね、Sunは良い人々に囲まれていた。ハッカーやオタクにとって、Sunと争うことはほぼ身内のけんかに近かった。
しかしSunの内部では、経営陣が吹聴する「Solarisの天下が来る」という物語が信じられずに社員が流出していると聞く。Sunの技術者の多くは、自宅のPCでLinuxを動かしている。彼らは災いの前兆を見て取ることができるのだ。
今にして思えば、SunにはLinux戦略が何もないという最近の宣言が彼らの運命にとどめを刺した。Sunは、コモディティ(日用品)化されたLinuxサーバ市場がまかなえる程度の薄い利幅では存続できない。彼らのコスト構造がまるで適合していないのだ。Sunは典型的な革新者のジレンマに陥り、まだ投資家の信頼と方向転換の余裕がある間に事業を縮小しなかった。SCOに寄り添う作戦も功を奏さなかった。
もはや手遅れである[1]。Moody’sはSunの格付けをジャンクボンドにまで引き下げた。株の終値は3ドル31セント。この日に15%下げ、大商いで下落している。最近の製品発表は失敗だらけで、今度の会計年度は惨憺たる状況になるだろう。ウォール街のアナリストたちは思い切った雇用削減を呼びかけており、「逃げろ!」という意味の暗号表現を口にしている。死の臭いがただよっている。
散り散りになるのを免れたSunの社員と有形資産は、おそらくIBM、HP、およびDell――コモディティ・コンピューティング・ゲームでの立ち回り方を知っていることを示した3つの企業――の手に渡ることになるだろう。SCOの訴訟には、たぶん影響はないだろう。あまり知られていないが、SunはMicrosoftとともに資金面でSCOを援助していた。しかし、Sunが負担していた分の訴訟費用は、代わりにMicrosoftが小遣い銭から支払えるし、彼らはきっとそうするだろう。
現実の疑問は2つある。OpenOffice.orgはSunなしで生き残れるだろうか。そして、Javaは誰が面倒を見るのだろうか。おそらくMicrosoftではないだろう。C#にかかわっているMicrosoftが、もはやJavaを欲しがるとは思えない。私の想像では、IBMが両方のテクノロジを引き受ける可能性が高いだろう。それができる立場にある会社が他にないという単純な理由である。しかしその場合は、もちろん、別の不安が生じる――IBMがすべてを牛耳ってしまうのは、我々にとって本当に良いことなのだろうか。
[1] reuters.com
編集部注:この記事に含まれる意見はEric Raymond氏のものであり、opentechpress.jp編集部やOSDNの経営陣の見解と一致するとは限りません。