新しいFedora ProjectについてWarren Togamiが語る

Red Hat Linux ProjectとFedora Projectの最近の合併は、頭が混乱する余地が満ちあふれた出来事である。私はほんの数週間前にFedora Projectに関する記事( opentechpress.jp翻訳記事)を書いたが、やはり合併後の発表( opentechpress.jp記事)を読んで混乱してしまった。

そこで、騒動が収まるのを少し待ってから、Warren Togami(Fedora Projectの創設者で、以前の記事の情報源)に事の真相を確かめることにした。こうして、この数日間、すべてを明らかにするために、Warren Togami(および彼を補佐したRed HatのDesktop Manager、Havoc Pennington)とNewsForgeの間でIRCと電子メールによる質疑応答が交わされることになったのである。

最初に、合併前のそれぞれのプロジェクトの活動内容を見てみよう。TogamiのFedora Projectは、Rea Hat用の十分にテストされたパッケージが含まれる単独のリポジトリを提供していた。apt-getまたはyumを使用すると、Red Hatのユーザは、Red Hatから直接入手できない(MplayerやWineのような)パッケージを見つけて簡単にインストールすることができた。プロジェクト・チームはテストにきわめて熱心で、提出されたパッケージに必要なQAを消化するのに苦労していた。Togamiはプロジェクトの運営に加えて、アルバイトをこなし、ハワイ大学の最上級生としてコンピュータ・サイエンスを研究するのに多忙な日々を送っていた。

RHLP(Red Hat Linux Project)の役割はあまり明確ではなく、十分に理解もされていなかった。Warren(Togami)によると、RHLPは「Red Hat Linuxのフリーのコンシューマ向けディストリビューションを、よりDebianに似たディストリビューションにするための漠然とした概念」だった。7月のプロジェクトの発表と、その後の縮小に伴うRHLPのWebサイトの閉鎖以外、RHLPに関する実質的な活動はほとんど見られなかった。

それでも、WarrenはRHLPに将来性があると考えた。彼はRed HatのMichael K. Johnsonに接触して合併を持ちかけた。彼は、「FedoraとRHLPの合併を提案したのは、Fedoraが既に何か月もやってきたことの多くが、RHLPが目指しているコミュニティ・ベースのディストリビューションという概念の中にあったからだ。」と述べている。Michael Johnsonはこの提案を検討するためにRed Hatに持ち帰り、Warrenは予想される合併についてFedora Projectチームと話し合いを始めた。

この合併によって生まれたのが、新しいFedora Projectである。Red Hatの企業支援と指導、およびコミュニティの高レベルの参加を通じて、Red Hatでは2つの異なるディストリビューション、すなわちRed Hat Enterprise Linuxと、Fedora Projectの「Debianスタイルの」コミュニティ支援によるディストリビューションを提供しようとしている。

これについてWarrenは次のように説明している。「Enterpriseには、Red Hatのビジネスの側面、つまり顧客が購入する製品のサービスとサポートが絡んでいる。フリーの/コンシューマ向け/コミュニティ・ディストリビューションでは、同じテクノロジが使われているが、これはホビイスト向けなのでサポートの保証はない。企業はこちらを選択してもかまわないが、その場合は自力でサポートするか、どこかに有料でサポートを委託する必要がある。この点は、むしろDebianに似ている。」

NewsVacの編集者David Grahamが、新しいFedoraは「草の根活動(グラスルーツ)と企業ディストリビューション」のどちらになると思うかと尋ねたところ、Warrenから次のような答えが返ってきた。

旧fedora.usは完全な草の根活動だった。世界中から多くのボランティア開発者が参加し、1つの権威団体を作成してサードパーティのソフトウェアのインストールと配布を容易にするという共通の問題に取り組んでいた。

新しい「Fedora Project」でも草の根活動支援を維持、拡大したいと考えているが、現時点では明確になっていない部分がある。プロジェクトには巨額の資本基盤と膨大な時間に上る社内技術者の作業が投入されるだろう。

だからといって、企業 == 悪というわけではない。企業の支援により、(草の根活動がなかなか購入できない)サーバ基盤のような困難な基本的問題や、QAテスト、複雑な自動提出/ビルド・システムの実装のような面白味のない問題を連合体が処理できるようになる。

連合体の中で、両者のバランスがうまく取れればよいと考えている。Fedora Projectは、ホビイスト向けのFedora Linuxディストリビューションで改革の速度を上げるためにボランティア・コミュニティの力を活用する必要がある。一方の企業側は、彼ら自身のビジネス部分が急速に改良されることで恩恵を受けられる。

私がWarrenに、彼が新しいFedora Projectを率いるのかと尋ねると、彼は笑ってこう言った。「私は大学を卒業するので手一杯だ。時間があればとは思うんだが。」しかし、Warrenと旧Fedora Projectチームの主要メンバは新しいプロジェクトへの貢献を続けるようだ。Fedora Projectのサイトに、プロジェクトの指揮に関する公式発表が掲載されたページがある。その先頭にあるのはMichael K. Johnsonの名前で、元のFedora Projectチームについては何も言及されていない。しかしWarrenは、「非公式に、最も積極的にfedora.usに貢献してきた人々が諮問委員会のメンバになる」と言っている。

新しいプロジェクトの基盤はまだ整備されておらず、プロジェクトが軌道に乗るまでにはまだ多くの作業が残されている。Warrenによれば、その間は旧Fedora Projectが引き続きパッケージを受け付けて、それらを徹底的なQAにかけ、リポジトリから利用できるようにするそうだ。

私がWarrenに、旧Fedora Projectチームが合併のことをどう感じているかを尋ねたところ、彼は次のように答えた。

旧fedora.usチームは、おおむね非常に興奮している。ライセンスの問題があるパッケージの削除について、主として米国以外のメンバがいくぶん落胆していたのが唯一の否定的な感想だった。他の点では、はるかに大きなパッケージャのコミュニティが今後数か月間でプロジェクトに参加するので、これによって機会の門戸が開かれる。Red Hatがもたらす財源と技術のノウハウにより、ボランティアが興味を持たないような大きくて避けがたい問題に取り組めるようになる。

最終的に、我々は新たに結合された取り組みを通じてはるかに多くのことを実現できるだろう。コミュニティのメンバは、ソフトウェア・リリースの内容についてもっと意見を反映できるようになるだろう。これは関係者全員の得になることだ。

合併に対する彼自身の気持ちを尋ねると、彼はこのように言った。「個人的にはとてもほっとしている。fedora.usの運営は楽しかったが、この10か月というもの、私にとって大きな負担になっていたからだ。ハワイ大学ですべての授業時間をやりくりし、アルバイトに出かけ、プロジェクトで常に活動を続けるのは大変だった。リーダーとしての重荷を下ろして、必要な時間を学位の取得に充てるのにちょうどいい機会だ。」

自らが創設したプロジェクトの指揮を譲り渡すことに関して、Warrenは後悔はないと言い、次のように付け加えた。「私はプロジェクトの責任者ではなくなるが、新しいプロジェクトの基盤となるポリシー、手続き、および基準の策定に関して貢献を続けていく。これで、もはや活動を押し進めるために自ら多くの作業に着手する必要がなくなるので、私のストレスは大幅に軽減される。最終的には、働き過ぎの気むずかしい独裁者よりも、新しい運営/諮問委員会モデルのリーダーシップの方が、長い目で見ればうまく機能すると信じている。」

Red Hatは、プロジェクトに貢献したWarrenや他のメンバに大枚のキャッシュなどの報酬を与えたのだろうか。どうやら与えていないようだ。Red Hatから報酬をもらったかどうかを尋ねると、Warrenはこう言った。「ぜんぜん。せめて帽子(訳注:hatには「肩書き」の意味もある)ぐらいは貰いたいと思うが、それ以上のものをくれたら嬉しいだろうね。=)」

Joe Barr──IT分野のライターとして10年(Linuxについては5年)の経験を持つ。IBM Personal Systems Journal、LinuxGazette、LinuxWorld、Newsforge、phrack、SecurityFocus、VARLinux.orgなどに掲載記事多数。Linux Liberation Armyの公式ニューズレター、The Dweebspeak Primerの生みの親でもあり、同組織では終身伍長の名誉職にある。