買収された「Audacity」の新しいプライバシーポリシーに批判

 オーディオ編集ソフト「Audacity」のプライバシーポリシーが議論をよんでいる。4月末にMuse Groupに買収された後、コントリビューター ライセンス契約(CLA)、プライバシーポリシーなどで変更を加えているためだ。

 Audacityはマルチトラックのオーディオ編集ソフトウェアで、GNU/Linux、macOS、Windowsに対応する。ライセンスはGPL v2で、3月に最新版となるバージョン3を公開している。

 Audacityは4月30日、Muse Groupに買収された。取得を告げるリリースでMuse Groupは、「買収はMuse Groupのフリー/オープンソフトウェアへのコミットを拡大する」としており、Audacityは「ミュージシャンの生活の質を継続的に改善するという企業の中核となる目標を強化できる」と記していた。Muse Groupは2021年に設立された新しい企業で、ミュージシャン向けのリソースやツール提供を目的にソフトウェアブランドを擁する。傘下には、「Ultimate Guitar」「MuseScore」「MuseClass」「ToneBridge」などがある。チェアマンはUltimate Guitarの作成者であるEugecy Naidenov氏が務めている。

 7月2日に更新されたデスクトップアプリのプライバシーポリシーでは、個人情報の管理をロシアのWSM Groupが行うとした上で、収集する個人情報として、アプリの解析と改善目的にIPアドレスに基づくユーザーの居住国、OS名とバージョン、CPU、致命的ではないエラーコードとメッセージ、クラッシュレポートなどを収集するとしている。また、法的義務として法の執行、訴訟などに必要なデータを収集すると記しているが、どのようなデータを収集するのかについては明記していない。WSM GroupはLinkedIn上の情報ではUltimate Guitar、MuseScoreなどを有するとしているため、Muse Groupの背後にある企業と思われる。ポリシーによると、データは個人情報は欧州経済圏(EEA)にあるサーバーに保存されるが、「ロシアにあるメインオフィス、米国にいる外部弁護士と個人情報を共有する必要が生じることがある」としている。

 個人情報の共有先については、1)スタッフ、2)開示が必要と思われる警察など法の執行機関、政府機関、法廷、その他の外部機関、3)監査やアドバイザーなど、4)潜在的な買い手候補、などを挙げている。また、13歳以下の個人ユーザー向けでないため、対象年齢ではないユーザーはアプリを使わないようにと忠告している。

 Audacityは5日、Githubでプライバシーポリシーについて追加の説明を掲載し、「収集したいかなるデータもサードパーティに販売しないし共有しない」「収集するデータはIPアドレス(匿名化され、24時間経過すると復元不可能)、基本的なシステム情報(OSバージョンとCPUの種類)、エラーレポートデータ(オプション)」と明確にしている。法規制遵守については、上記以外のデータを収集せず、政府や規制当局と共有しないという。また、オフラインでの使用についてはプライバシーポリシーは適用されないと記している。

 Audacityは5月末、「複数のライセンスでAudacityをリリースするために必要」として、コントリビューター ライセンス契約(CLA)も導入している。一部の批判に対し、FAQでは「今後も100%オープンソースでフリー」と約束している。その前には、開発改善目的にTelemetryを使う計画を発表したが、批判が出たことから中止していた。

Muse Group
https://www.mu.se