Linuxカーネル3.11リリース、安全な一時ファイルを作成するフラグや細かな新機能追加が行われる

 Linus Torvalds氏は9月2日、Linuxカーネル3.11を発表した。安全な一時ファイルを作成できる「O_TEMPFILE」フラグの導入やNFS 4.2のサポート、swapページを圧縮して格納する「Zswap」といった新機能の追加などが行われている。

 6月末に公開された3.10に続くリリースとなり、約2か月での最新版リリースとなる。このバージョンは、今年で発表から20年を迎えた「Windows for Workgroup 3.11」にちなんで「Linux for Workgroups」というコード名が付けられていた。ロゴもペンギンがWindowsの旧マークの旗を持ったデザインとなっている。なお、正式リリースを発表したTorvalds氏は直前の7回目リリース候補(RC7)公開を告知しなかったことを認めている。

 新機能としては、安全に一時ファイルを作成するための「O_TEMPFILE」フラグの実装やAMD Radeonの動的電力管理機能サポート、Lustreファイルシステムクライアントの実験的サポート、NFS 4.2およびSELinux Labeled NFSのサポート、どのタスクがどれだけのメモリページを書き出しているかを追跡するメカニズムの追加、ARMアーキテクチャにおけるhugeページサポート、ARM64アーキテクチャでのKVMおよびXenサポート、SYSV IPCメッセージキューのスケーラビリティ改善、低レイテンシのネットワークポーリング機構、swap向けの圧縮キャッシュ機構「Zswap」の実装などが挙げられている。

 O_TEMPFILEフラグはopenおよびopenatシステムコールで利用できるもので、安全に一時ファイルを作成するために利用できる。このフラグ付きで作成されたファイルはファイルシステムからは参照できず、さらにファイルがクローズされると同時に削除される。これにより、競合を気にせずに一時ファイルを作成できるほか、作成したアプリケーション以外からのアクセスされたくないファイルを作成するのにも利用できるという。

 AMD Radeonグラフィックドライバでの動的な電源管理機能はr600以降のGPUで利用できるもので、これにより消費電力を効率化できるという。実験的サポート段階と言うことで、デフォルトではオフとなっている。Intel Haswellサポートの改善なども加わっている。

 新たに追加されたスワップの圧縮キャッシュ機能「Zswap」はスワップページ向けの軽量な圧縮キャッシュ機構で、スワップアウトされるページを動的に配分したRAMベースのメモリプールで圧縮することで、I/0をはじめとした性能強化を図るというもの。圧縮ではLZ4サポートも加わった。

 ファイルシステムでは、並列分散ファイルシステムLustreのクライアントサポートが実験的に加わった。Lustreは数万単位のクライアントノードを持つクラスタをサポートするもので、高性能コンピューティング(HPC)などでよく利用されている。NFS 4.2の初期サポート、NFSにSELinuxサポートを加えたLabeled NFSの初期サポートも加わった。

 Btrfs、ext4、XFS、F2FSなども強化された。Btrfsは性能を最適化し、ext4はext3とnodelallocと互換性のあるモードで共通のext4_writepagesを利用することで書き込み性能の改善を行っているという。

 また、イーサネットにおいて低遅延のポーリングが可能となった。NAPIポーリング間隔が遅延を招いていた問題に対応するもので、アプリケーションはソケット単位で低遅延ポーリング間隔を要求できるという。

 Linuxカーネル3.11のソースコードは、kernel.orgやそのミラーサイトからダウンロードできる。ライセンスはGPLv2。

kernel.org
https://www.kernel.org/