Amarokがインタフェースを一新

 機能満載の多目的メディア・プレーヤーAmarokのバージョン2リリース候補版がついに公開された。今回の1年以上に及ぶ開発では、KDE 4の新ライブラリーとインタフェースを採用し、操作性を一新した。使い方が変わってしばらくは戸惑うだろうが、慣れてしまえばどの改善点についても納得できるはずだ。

 Amarokは旧版もなかなかなの多機能ぶりだった。自分で集めた音楽ライブラリーの再生はもちろん、MP3プレーヤーに曲を移したり再生している曲の歌詞やウィキペディアの情報を検索したりできたし、音楽コレクションを管理しアルバムのカバー・アートをダウンロードすることもできる高速・高性能なメディア・プレーヤーだった。

 しかし、基本的にKDEアプリケーションだったにもかかわらず、Amarokのリリース・スケジュールがKDEと同期していなかったため、KDE 4のリリース時点では対応するリビジョンがなく、統一感を欠いていた。

 Amarok 2.0はソース・コードとして提供されているほか、いくつかのディストリビューション向けにバイナリー・パッケージも用意されている。試用はKubuntu 8.10で行った。Amarok 2をインストールし起動すると構成ウィンドウが開く。コレクションのディレクトリー(候補として示されたディレクトリーは正解だった)を指定するとコレクションのスキャンが始まり、3,000本のMP3ファイルが2分足らずでライブラリーに登録された。旧版より速い。次に、アルバムのカバー・アートを自動でダウンロードするようAmarokを設定した。ここまでは従来どおりだ。

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Amarok 2.0

 設定が終わってすぐに気づいたのはバージョン2の新しいインタフェースだ。旧版の面影はほとんどない。コレクション、保存されているプレイリスト、インターネット・ラジオが左に、現在使用中のプレイリストが右にある。中央はプラズマ・ウィジェット(プラズモイド)のための領域で、完全カスタマイズ可能だ。4つあるページのそれぞれに、あらかじめ用意されているプラズモイドや別途ダウンロードしたプラズモイドを置いて、歌詞のアプレットやウィキペディアの検索などを追加することができる。操作は簡単。中央のペインで右クリックしてAdd Appletを選択し、表示されたプラズモイドのリストから選んで設定するだけだ。右下隅にある虫眼鏡をクリックすると、最新のウィジェットを含むページが表示され、ウィジェットを追加することができる。

 Amarokはプレイリスト駆動型だが、新版ではそれがさらに強まった。左ペインのコレクション一覧にあるアーティスト、アルバム、歌をダブルクリックすると、そのファイルが右ペインのプレイリストに追加され再生が始まる。設定したプレイリストを保存しておけば、あとで呼び出すことができる。プレイリストにコレクション全体を入れ、順序を無作為に変更することもできる。インターネット・ラジオも同等の扱いで、ShoutcastやJamendoなどがあらかじめ設定されている。

 Amarok 2はオーディオ・サポートにKDEのPhononを、メディア・プレーヤーなどハードウェアの制御にSolidを利用している。Phononは、自分でオーディオを設定せずにKDEのオーディオ構成を利用するためのインタフェース、SolidはMP3プレーヤーを制御するためのインタフェースだ。GUIにはQt4を利用しているため、KDE 4のインタフェースと非常に相性がいい。ただし、筆者のMP3プレーヤーCreative Zen Stoneがまったく検出されないという問題が1つあった。とはいえ、筆者の全体的な印象では、Amarok 2は旧版よりもずっとよい。

 Amarokは従来同様KDEアプリケーションではあるが、ほかのデスクトップ環境でも使えるようになった。必要なライブラリーがインストールされていればGNOMEやXfceなどでも使えるし、Linux以外のWindowsやMAC OS X用のバージョンもある(KDEインストーラーを使う)。

欠点

 残念ながら、Amarok 2は手軽には使えない。新しいインタフェースに慣れるには若干時間が必要だ。まったく新たに設計し直されたため、Amarokをよく知っている人でも勝手がわからないだろう。もっとも、筆者も初めは使いにくいように思ったが、慣れればそれほどでもない。

 また、プレイリストに多数の曲があると、旧版よりスクロールがしにくい。スクロールの領域が小さくなったからだ。また、3ペイン構成で全体として使える領域が狭くなったため、旧版にはあった情報が一部表示されなくなった。たとえば、発表年、ビットレート、メディアのジャンルはプレイリストからまったく姿を消した。

 Amarok 2のテーマはKDEの色彩設計によく合っているが、これもいい点ばかりではない。KDEの色彩に馴染むのは結構なことだが、ほかのデスクトップ環境に合わせて変更することができないのだ。GNOMEで使ってみたが、カラー・テーマを変更する方法が見当たらなかった(KDEにログインして変更するしかない)。AmarokはKDE専用ではなくなったし、Linux専用ですらなくなったのだから、ユニバーサルなテーマが優先されるべきだ。

 Amarok 2は従来のリリース・サイクルを大胆に変更した。その結果、予定していたことをすべて盛り込むことができ、しかも素晴らしい出来栄えになった。しかし、新しいインタフェースは、旧版のAmarokのように情報量の多いメディア・プレーヤーが好みの人には敬遠されるかもしれない。また、KDE以外のデスクトップやLinux以外のオペレーティング・システムでも使えるようにはなったが、テーマがKDE以外では変更できないことから、明らかにKDEでの使用を意図している。一方、よい点もある。Amarok 2は予定どおりに開発され、KDE 4の一翼を担う素晴らしいアプリケーションに仕上がっている。新しいインタフェースも、慣れてしまえば決して悪くはない。筆者はこちらの方がいいかもしれないとさえ思うようになっている。実際、この記事を書いているときAmarok 2.0に結構いい印象を持ったし、楽しく使えたのだ。

Jeremy LaCroix ITの達人。余暇に執筆活動をしている。

Linux.com 原文(2008年12月11日)