隠れたベスト・デスクトップLinux、SimplyMEPIS
今日、Linuxといえば、Ubuntu、Fedora、openSUSEだろう。すべての人がUbuntuを使い、ほとんどの人がFedoraを使ったことがあり、多くの人がopenSUSEを選択肢の1つに入れる。しかし、ウェストバージニア州モーガンタウンで生まれたDebian系デスクトップ・ディストリビューション SimplyMEPIS を知る人は少ない。優れたデスクトップ・オペレーティング・システムなのに残念なことだ。次期バージョン8は現在ベータ5が出ており、まもなく正式リリースされるだろう。試用したので報告する。
試用に使ったシステムは、2.2GHz Intel Pentium E2200デュアル・プロセッサーを搭載したDell Inspiron 530sだ。フロント・サイド・バスは800MHz、RAMは4GB、500GBのSATAドライブとIntegrated Intel 3100 Graphics Media Acceleratorを積んでいる。まず、ミラー・サイトの1つからSimplyMEPISのISOファイルをダウンロードし、CDを作成した。
このライブCDを使って、試用システム上にSimplyMEPISを起動し何の問題もなく動作することを確認した上でインストールした。所要時間はおよそ15分。ファイルシステムはext2やReiserFSではなくext3にした。これはジャーナル・ファイル・システムとして最速でもなく最新でもないが、安定性に優れている。
最近のLinux同様、SimplyMEPISもハードドライブ全体を使うことも、GPartedで既存のパーティション・テーブルを変更することもできる。今回の試用では、既存のWindows NTFSパーティションを縮小し、さらに出荷時にインストールされているリカバリー・パーティションを削除して、メイン・プライマリー・パーティションと、これとは別にプライマリー・スワップ・パーティションを作成した。ハードドライブのパーティションを変更し再構成するには、少し前まで魔法と希望を等量混ぜ合わせる必要があったが、今はGPartedがあり、こうしたことが簡単にできるようになった。
MEPISのディストリビューションはCDが1枚だけのため、KDE 3.5.*パッケージがすべて搭載されているわけではない。含まれていないソフトウェアはDebianまたはMEPISのソフトウェア・リポジトリーからダウンロードする必要がある。KDEのバージョンは3.5.9。SimplyMEPISの開発者Warren WoodfordはKDE 4.xが気に入らず、クラシックなKDEに拘っているのだ。ただし、古くはあっても十分に機能する。
ディストリビューションがベースにしているのは、まだリリースされていないDebian 5(Lenny)だ。その一方で、Woodfordは新しいソフトウェアを含めることを理由にLennyのリリースを待つということをしない。だから、カーネルは2.6.27.5を使っている。
搭載されているアプリケーション・ソフトウェアの中には最新版のものもある。たとえば、SunのVirtualBox仮想マシンvirtualbox-oseは2.0.4、OpenOffice.orgオフィス・スイートは3.0.0-4、Firefoxは3.0.3-3など、いずれも最新版だ。一方、デフォルトの電子メール・プログラムにはKMailが選ばれ、Firefoxの兄弟Thunderbirdは基本パッケージに含まれていない。
もちろん、Synapticパッケージ・マネージャーがあり、Debian LennyとSimplyMEPISのリポジトリーが使えるので、Thunderbirdなどをインストールするのに何の問題もない。実際、今回の試用では、GNOME Evolutionメールクライアントをインストールした。
アプリケーションを試用している際、おかしなエラーに遭遇した。新しいAdobe Flash Player 10ブラウザー・プラグインがあらかじめインストールされているのに、FirefoxでFlashビデオを表示できなかったのだ。この問題は、最終的に、リポジトリーからFlash Playerを再インストールして解決した。
数日間いろいろな使い方を試してみたが、問題は発生しなかった。筆者愛用のアプリケーション――Firefox、Evolution、OpenOffice.org、IMにはPidgin、Banshee(音楽)、Konqueror(ファイル管理)――は、いずれも絹のように滑らかに動作した。
「それなら、KDEベースのほかのディストリビューションでも同じだ」と言う人もいるだろう。そう言う人には、SimplyMEPISの最大の魅力はまったく継ぎ目がないように動作する点にあると言っておこう。
そう言うと、「KDEベースのほかのディストリビューションでも同じ感触が得られる」と言う人もいるだろう。そう言う人には、SimplyMEPISには、KDEメニューのSystemオプションから起動する4つのシステム・チューニング・ツール、MEPIS Network Assistant、MEPIS System Assistant、MEPIS User Assistant、MEPIS X-Window Assistantがあると言っておこう。
これらの4つツールによって、SimplyMEPISでは、Linuxの管理が論理的かつ使いやすいものになっているのだ。たとえば、Network Assistantでは、DHCPやDNSの設定はもちろん、すべてのネットワーク・インタフェース(EthernetもWi-Fiも)を管理でき、ネットワーク・インタフェースの停止と再開も可能だ。もちろん、こうした機能はほかのLinuxディストリビューションにもあるが、SimplyMEPISでは1個所にまとめられているので、メニューを探し回る必要がない。
System AssistantとUser Assistantはさらに高機能だ。System Assistantでは、コンピューターの名前、ドメイン、Samba/Windowsのワークグループ/ドメインの変更、ブートやパーティションの修復のほか、現行デスクトップのクローンをブータブルUSBドライブ上に作成することができる。Fedora 9など多くのディストリビューションでもUSBドライブ上でLinuxデスクトップを設定(翻訳記事)することはできるが、筆者の知る限り、使用中のデスクトップを複製して持ち歩けるのはSimplyMEPISだけだ。
User Assistantでは、homeディレクトリー全体、または、mail、Mozilla、documents、configurationディレクトリーだけを対象に、デスクトップ間のコピーや同期ができ、バックアップやPC間の移動にきわめて便利だ。
SimplyMEPISはスムーズに構成されており利用しやすいユーティリティーを備えている真に優れたLinuxデスクトップという印象がある。筆者は10年以上もデスクトップLinuxを使ってきたが、いっときSimplyMEPISを離れることがあっても、常にここに戻ってきた。バージョン8は十分な仕上がりで筆者の試用マシンに入ったままだ。実は、すべてのファイルを試用マシンに移し、これがメインのデスクトップ・システムになっている。SimplyMEPISは今や筆者の1番のデスクトップになっているほど、出来栄えがいい。
Steven J. Vaughan-Nichols 技術とそのビジネス応用を守備範囲とするライター。PC向けオペレーティング・システムならCP/M-80と言われ、自分のコンピューターで2BSD(Second Berkeley Software Distribution)を使うのが最先端だった時代からの古参。