Collabora、オープンソースビデオエディタPiTiViの開発に資金提供

 オープンソース系のマルチメディアを専門に扱うコンサルタント会社Collaboraが、ノンリニアビデオエディタPiTiViに取り組むために開発者を雇おうとしている。英国のケンブリッジに本拠を置くこの会社は、GStreamerメディアフレームワークとGStreamerに依存するその他のプロジェクトに重点的に力を注いでいるので、PiTiViを扱うのは当然の成り行きと言えるだろう。これはLinuxデスクトップで久しく懸案となっている隙間を埋めるものでもある。

 PiTiViは大部分がPythonで書かれたGTK+ビデオエディタであり、LGPLのもとで利用できる。GStreamerでオーディオとビデオが処理され、それに加え、Gnonlinの編集コンポーネントが使われる。PiTiViメンテナのEdward HerveyはCollaboraの社員であり、同社はPiTiViのハッカーをパートタイムでもう一人雇ってユーザーインタフェースの改善に取り組んでいる。

 10月21日、CollaboraのChristian Schallerは自分のブログで要員追加のために人材募集をかけた。求められているのはビデオ編集、コーデック開発、またはGStreamerの経験者である。彼は同社の決定を引用する形で「簡単に使えるまともなビデオエディタをLinuxデスクトップで早急に使えるようにするには、開発ペースを一段と早める何らかの措置が必要だ」と書いている。

 Schallerによれば、Collaboraは短期的に3人ないし4人のチームを作ることを望んでおり、今後さらに要員を増やす可能性もあるという。彼は同社の目標を「PiTiViを、単なる素性のよいソフトウェアから、ビデオクリップの編集が必要になったときLinuxユーザーが当然のごとく利用するソフトウェアへと脱皮させることだ」と述べている。この目標はPiTiViの基本部分の使い勝手のよさを維持しつつ、ビデオ編集を本業としない人々もユーザーに取り込むことを意味する。

 「現在の計画では、3月/4月のメジャーリリースに向けて、今後数ヶ月にわたって一連の開発途上版を出すつもりだ。メジャーリリースでは、基本的なビデオエディタに求められる多くの機能(たとえば、カット、場面転換、オーディオ編集、写真サポート、DVHD DVのようなライブソースへの対応)を実現する」

開発への支援

 同社は、エンターテイメント業界や放送業界の顧客向けにGStreamerベースのマルチメディアパイプラインをカスタマイズする請負プロジェクトを通じて、PiTiViチームに資金を供給する意向だ。「PiTiVi、GStreamer、Gnonlinをプラットフォームと位置づけるなら、デスクトップアプリケーションであるPiTiViはそのショーウィンドウである」

 「これをプラットフォームと呼ぶのは、モジュール方式を採用したPiTiVi、Gnonlin、GStreamerは他の一体方式では容易に対応できないような幅広いニーズを満たすという点で独自の位置を占めるからだ。たとえば、一部の顧客と協力して、携帯電話などのモバイル機器向けの編集ソリューションをGStreamerとGnonlinで実現することに既に着手している。PiTiViをAvidキラーにするつもりはない。そんなことはばかげている。それよりも、人々の仕事の流れの中で生じる個別のニーズに対応するアプリケーションを作成する修正の容易なプラットフォームとして提供することを目指している」

 PiTiViとGStreamerを柔軟な編集プラットフォームに組み上げるためには、ビデオ編集の世界でよく使われる(だが再生用のコーデックほどは知られていない)ファイルフォーマットや、他のアプリケーションの編集パイプラインで用いられる「中間」コンテナフォーマットをしっかりサポートすることが決定的に重要となる。たとえば、Schallerによると、このプラットフォームは既にDirac Proをサポートしており、まもなくMXFが追加され、さらにそのQuickTimeサポートが改良されるという。AvidのDNxHDフォーマットのサポートも計画されている。

上流へのフィードバック

 Schallerによれば、同社の現在の請負業務で生じた変更は上流のGStreamer、Gnonlin、PiTiViのコードベースへそのまま反映されるという。もっとも、放送局のプロプライエタリなコンテンツ管理システムとインタフェースを取る特別なエクステンションのようなものは除外される。

 しかし、Collaboraの計画はPiTiViへの取り組みを可能な限り中軸に据えることにある。Schallerは、GStreamerおよびPiTiViのモジュール性とプロジェクトのライセンス供与の方法はどちらも脱着可能な特殊用途の調節の仕組みを簡単に実現できるようにするために計画されたと見ている。

Video woe

 安定したフル機能のノンリニアビデオエディタがLinuxに存在しないことをマルチメディアファンはずっと気にしてきた。進行中の他の取り組みとしては、DV中心のKinoとコミュニティ主導のLumieraがある。後者は熟成したCinelerraから最近分岐したものである。

 PiTiViは2004年に始まってからまだ正式なリリースをほとんど出しておらず、比較的ゆっくり成長してきた。Collaboraに雇われたチームは、抜本的な変化をもたらし、PiTiViを一気に集団の先頭に飛躍させることができるのだろうか?

 それを強く示唆することがある。Schallerが述べたように、他の多くのビデオ編集アプリが一体方式であるのに対し、PiTiViはモジュール方式である点だ。これがCollaboraのビジネスモデルを可能にし、それぞれPiTiVi / Gnonlin / GStreamerの一部としか関係しない請負プロジェクトを通じてコードベースの開発を支えるわけである。同社は、GStreamerとTelepathyのどちらについても、この方式でれっきとした実績を持つ。また、忘れてならないのは、PiTiViプロジェクトが開始したのが2004年であるにもかかわらず、2005年の終わりまでにはGStreamer自体が本格的なアプリケーションを構築するのに必要な安定性を備えたことだ。それから後、多くの変更が行われてきた。

 Collaboraの募集活動はとてもうまくいっているとSchallerは言う。彼によれば、マルチメディアの開発経験がある有能な応募者を見つけるのは簡単でないかもしれないが、多くの組み込みシステムで使われているので、現在のGStreamerについての経験を持つ人材を見つけるのはともあれ簡単なようだ。これはPiTiViの先行きが明るいことを示唆している。

Linux.com 原文(2008年11月6日)