Rawstudioバージョン1.0

 フリー・ソフトウェアのRAWフォト・コンバーター Rawstudio が、この4月、2年に及ぶ開発作業の集大成としてバージョン1.0をリリースした。写真家にとって軽量で頼りになるという従来の特性はそのままだ。

 入手は、同プロジェクトのWebサイトへ。ソース・コードのtarballとバイナリーがダウンロードできる。ビルド済みのパッケージはOpenSUSEとUbuntu向けのみ(執筆時点)。Ubuntuの場合は、RawstudioのAPTリポジトリーから1.0リリースと日ごとのビルドが入手できる。

 このリリースで目を引くのは新たに搭載された3つの機能だ。その一つ、画像を鮮明にするツールは、アンシャープ・マスク技法を使って画像のシャープネスを補正する。ラスター・グラフィック・エディターにも同様の機能があるが、大幅な補正が不要なときは、ここで補正できれば時間の節約になる。

 もう一つは、画像を直接GIMPにエクスポートする機能。そのままライブ編集することができ、GIMPでファイルを指定し開き直す手間が省ける。ただし、「GIMP」はソースに直に書き込まれているため、選択の余地はない。今のところ、GIMP以外のエディターを愛用している人にはおあいにくさまだ。

 3つめは、メインのUIに搭載されたファイルとディレクトリーのブラウザーだ。これまでのリリースでは、Fileメニューから1つのファイルを開くことと、カレント・ディレクトリーにあるファイルを縮小画像で閲覧することしかできなかった。ディレクトリーにあるRAW画像をまとめてメインの作業空間にロードする時間を短縮するため、同様のディレクトリー・ブラウザーが多くのRAWコンバーターに組み込まれている。

 外観も変わった。今風のインタフェース、私に言わせれば「プロ・グラフィックス・ダーク・グレイ」の配色になった。お気に召さない場合は、システムワイドのGTK+テーマに合わせた外観に差し替えることもできる。

 前回このアプリケーションを記事にして紹介したのは2007年4月のことだった。そのときのバージョンは0.5.1。その後0.6と0.7がリリースされ、デモザイク、自在に編集可能な曲線ツール、DNGのサポート、一括補正などの機能が加わった。また、レンダリング・エンジンはCairoに変わり、セッション間でツールやUIの状態が継承されるなど可用性も向上させてきた。

 対応するカメラも、dcrawにより、リリースごとに更新されている。お手持ちのカメラに対応しているかどうかは互換性のページで調べることができる。

ほかのRAW処理ツールとの比較

 ほかのLinux用RAW処理ツールに比べると、Rawstudioは高速だが簡素だ。たとえば、UFRawやRawTherapeeは多くの操作が可能で、ホワイト・バランス、デモザイク、ハイライトとシャドウの補正などができるものもある。

 一方、Rawstudioは作業に便利な機能を備えている。たとえば、イメージごとに3つの補正セットを切り替えて適用することができ、「ツールの設定をメモし、画像を保存し、GIMPで比較する」というこれまでの方法に比べ、補正の比較が格段に容易になった。

 また、優先順位度設定機能を利用すると、編集中に画像を簡単にソートでき、私の経験では、臨時のタグを乱発するよりも好ましい(タグを使うということは、要するに、編集処理ではなくファイルのメタデータの管理を増やすことになる)。一括処理機能も高速で使いやすい。

バージョン番号の怪

 ところで、今回のリリースが1.0だったのには驚いた。前リリースの0.7まではずっと0.1刻みで、数か月前にリリースしたばかり。機能的にも大きくは変わっていない。

 しかし、もっと重要なのは、バージョン1.0というわりには機能が不足している点だ。ほかのツールと比べるとよくわかる。メタデータがまったくサポートされていない(読み込みも書き出しも)し、ズームは100%までと「zoom to fit」だけ。カラー・マネジメントはまだテスト段階だ。

 Rawstudio 1.0は、実現していることについては大変によくできているが、1.0というよりは0.9という印象だ。しかし、大きな処理を必要としない場合は、ほかのフリー・ツールよりも軽く使いやすい。UIにも素晴らしいものがある(複数の補正セットや簡易優先度設定、今回新たに加わったGIMPへの直接エクスポート機能など)。こうしたUIは、ほかのツールにも取り入れられて定着してほしいものだ。

 Rawstudioは着実な進化を続けている。だから、私は次のリリースを楽しみにしている。バージョン番号が何になったとしても。

Linux.com 原文