パーティション分割不要のUbuntuインストーラー、Wubi

 UbuntuをWindowsマシンにインストールする場合、UNetbootin翻訳記事)のように、Linux用のパーティションを用意し、そこにインストールするのが一般的だ。しかし、Windowsユーザーのための非公式Ubuntuインストーラー Wubi を利用すると、既存のプログラムやファイルを誤って失うことなく、UbuntuをWindowsの中にインストールし、そこから起動できるようにすることができる。WubiはUbuntuをWindowsドライブ上のファイルの中にインストールし、自身をWindowsのboot.iniファイルに追加するので、起動時にWindowsとLinuxを選択できるようになる。

 Wubiはこの4月にリリースされるUbuntu 8.04 Long Term Support(LTS)を対象としている。現時点では、WubiもUbuntu 8.04も安定ベータ版だ。

 Wubiのインストールには、UbuntuのCD-ROMまたはWubiインストーラーを使う。前者の場合、まずUbuntu 8.04をダウンロードしてCD-ROMに焼き、そのディスク上のインストーラーを実行する。後者の場合は、Wubiインストーラーを直接ダウンロードして実行する。大きさは10MBだ。この場合、インストールするファイルは手元にあるCD-ROMからではなくインターネット経由でダウンロードすることになるため、多少時間を要する。

 Wubiを利用するときのシステム要件は、プロセッサー1GHz以上、RAM 256MB以上、ディスクの空き容量4GB以上、Windows 98またはそれ以降(推奨はWindows 2000またはそれ以降)。今回の試用ではAcer Aspire 5315ノートパソコンを使った。プロセッサーはIntel Celeron M 540、RAMは2GB、ハードドライブは160GB、WindowsはVista Home Basic。

 Wubiのインストールや削除の方法は通常のWindowsアプリケーションと同じだから、Linux初心者あるいはパーティション分割やデュアル・ブートに不慣れな人でも安心だろう。まず、Ubuntuの最新ベータ版のISOイメージをダウンロードし、そのイメージをまっさらのCDに焼き、そのCDをパソコンにセットする。すると、Windowsの自動実行プログラムが起動し、機能を選択する画面が表示される。選択肢は「Demo and full installation」、「Install inside Windows」、「Learn More」の3つ。ここでは、Windowsへのインストール(Install inside Windows)を選択する。すると次に、インストールするドライブを変更するオプションと、Ubuntu用に確保する容量を設定するオプションが現れ、使用する言語、ログインに使うユーザー名を尋ねてくる。いずれでもデフォルトを選択する。必要になる操作はパスワードを入力することと最後にInstallをクリックすることだけだ。

 インストールの時間はほんの10分程度。ノートパソコンを再起動するとUbuntuを含むWindowsブート・リストが表示されるので、Ubuntuを選ぶ。ロードの様子は専用ドライブにインストールした場合と同じ。通常のGRUBメニューさえ表示される。

 オペレーティング・システムのロードが終わると、Ubuntuの下での第2のインストール処理が始まる。時間は約5分。この第2インストールではパーティション分割とパッケージのインストールはパスする。この処理が終わると、再度、再起動され、いよいよUbuntuのログイン画面が表示される。

 このようにしてインストールしたUbuntuでも、専用パーティションにインストールしたUbuntuとまったく同じことができる。たとえば、アプリケーションのダウンロード/インストール/アップロード、インターネットの閲覧、電子メールの受信、音楽の再生、テーマの構成など。Ubuntuの華やかなデスクトップ効果も通常通りに動作する。

 パフォーマンスも、ハードドライブのシーク時間が少々遅かったことを除けば、専用パーティションにインストールしたUbuntuと同等だ。しかし、ホストとなるWindowsドライブの断片化が進行している場合は、かなり遅くなるだろう。筆者は可能な限りWindowsドライブをデフラグするようにしているため、今回の試行では気づくほどの違いはなかった。ハードウェア・アクセラレーションはglxgearsで見る限り専用パーティションにインストールした場合と同程度だが、PlanetPenguin RacerやNeverballなどの3Dゲームではテクスチャーの一部が壊れた。

 今回の試用で気づいた課題は1つ、UbuntuからWindowsドライブにあるファイルにアクセスできないことだけだった。Wubiの下でマウントしようにも表示されず、「fdisk -l」を実行してもホスト・ドライブが表示されないのだ。Windowsドライブのファイルを見ることができれば便利だし、Windowsの「マイドキュメント」フォルダーとUbuntuのhomeフォルダーを統合できれば素晴らしいのだが。

 インストールしたUbuntuが気に入ったら、Loopmounted Virtual Partition Manager(LVPM)を使って専用ドライブに移したりWindowsドライブに上書きしたりすることもできる。専用ドライブに移す場合は、そのためのパーティションが必要で、予備パーティションがない場合は作っておく必要がある。具体的には、まず、LVPMの.debパッケージをダウンロードしてインストールする。次に、メニューのApplications→System ToolsにあるLVPMのアイコンをクリックし、transferオプションを選択する。

 Wubiは、Ubuntuを試用する方法の一つとして活用できるだろう。ライブCDのように遅くなく、ハードドライブをパーティションに分割する必要もない。通常通りにインストールされたUbuntuとほぼ同じ機能を持ち、設定は容易、インストールしたアプリケーションや設定やファイルを含めて、そのまま専用ドライブに移すこともできる。

Jeremy LaCroixは、ITの達人。空いた時間を使って執筆している。

Linux.com 原文