Restore――専用サーバでの運用を前提としたバックアップツール

 デスクトップ環境のバックアップがおろそかになる理由の第一位は、適切なソリューションが無いといったところだろう。実際、万人のニーズを満たせるほど設定範囲の広いバックアップ方法は、なかなか見つからないものである。そうした中でも、企業ユーザやデータセンタを対象とした Restore というバックアップ用アプリケーションは1つの有力な候補であり、これはWindows、Mac OS X、Unix/Linuxシステムを対象として利用することができる。このツールはGPLv2ライセンスの適用下で自由に使用でき、Debian/Ubuntuパッケージ群、仮想マシンアプライアンス、455MBサイズのインストール対応ライブCDという3つの形態で公開されているので、必要な形式のものをダウンロードすればいい。
現行で利用可能なバージョン
 Restoreというソフトウェアには2つのバージョンが存在している。その1つEnterprise Editionは、システム管理者が1人存在してワークステーションおよびサーバ群のバックアップを単一のバックアップ用サーバに対して行うという、通常のIT環境を想定したものである。もう1つのData Centerバージョンが想定しているのは、多数のユーザ(クライアント)および二次ユーザを抱えるユーザ(リセラーと呼称)の利用するホスティングプロバイダである。これら2つのバージョンでは、ユーザ設定画面を始めとして各種の相違点は存在するものの、プロセスの大部分は共通している。また将来バージョンとしてSmall/Medium BusinessおよびPersonal(ホーム)用Editionの提供も予定されているとのことだ。

 本稿の執筆にあたってはインストール対応ライブCD版をダウンロードしたが、これによりRestoreバックアップユーティリティを同梱したオペレーティングシステム一式が正常に起動することを確認している。同OSはUbuntuをベースにXfceデスクトップを用いた構成になっており、ハードドライブへのインストールに関してはUbuntuにてお馴染みのインストーラを介して行うことができる。

 Restoreはブラウザ形式のインタフェースで操作するようになっており、インターネットなどのネットワークを介した利用が行える。この管理インタフェースは洗練された作りとなっており、実際の操作も機敏に反応してくれる。

現行のRestoreで行える処理

 Firefoxを開いた際にRestoreが起動されるかは、インストール方法によって異なる。私の環境では同時に起動されたが、そうならない場合は、Restoreサーバで使用しているのであれば「http://localhost/restore」を、リモートセッションであれば「http://ip_of_server/restore」を指定すればいい。実際のRestoreアプリケーションへのリンクは、ソフトウェアの初回起動時における説明画面に表示されるようになっている。また最初に開かれるRestore画面ではログインをしなければならない。ここではデフォルトのユーザ名とパスワードとして“admin”および“password”を入力すればよく、使用するバージョンに応じてRestoreのホームページないしResellersダッシュボードに移動される。またResellers画面ではリセラーの追加と変更が行え、リセラー管理者であればクライアントおよび割当数の追加と変更が行える。

 設定オプションの意味と操作については特に難しい点はない。ホームページには各ダッシュボードページへのリンクが用意されており、そこではバックアップおよびリストアプロセスの開始、各種設定の変更、“Get Involved”および“Register”を行うためのRestore Webサイトへの移動が行えるが、メインエリアとして表示される画面には、各種のアイコンとリンクおよび簡単な説明文が配されている。各画面のレイアウトは、その上部にFilestores、Preferences、Adminなどのタスクを示すタブが表示される。同じく画面下部に配置されているのは、Restore News、Updates、Helpについてのフィード群である。

 Preferencesタブにはパスワード変更用の小型入力ボックスが配置されており、その他に通知関連のオプション群と通知用メールアドレスもここで指定できる。

 Adminタブでは新規ユーザの作成および、リセラーによる新規クライアントの作成が行える。

 Filestoresタブで開かれるページでは、バックアップおよびリストアの具体的なセットアップを行う。ここでのファイルストア(filestore)とは、Restoreサーバ上における各バックアップの格納位置を示す用語である。なおRestoreがサポートするのはハードドライブだけであり、バックアップデータのCD-ROMへの焼き込みは行えず、テープドライブもサポートされていない。新規バックアップの作成は、Add Targetアイコンのクリックで行う。ここで言うターゲット(target)とは、バックアップのソースファイルのことである(リストア先にもなる)。各クライアントはそれぞれ個別のターゲットとしてセットアップしなければならない。その最初のステップとして、MySQL(MySQLデータベース用)、SFTP(暗号化SSH接続)、FTP(FTPアカウントを利用)、Windows Files Share(Windows Network File SharingおよびSamba)という利用可能な4つのアクセスタイプと接続プロトコルのどれを使うかを指定する必要がある。今回私がこれらのプロトコルを試験したところSFTP(SSH)接続でのみ障害が発生したが、この場合は“ビジー”アイコンが表示され続けていたので、どうやら接続が確立しないようであった。なおMySQLデータベースの使用中も同データベースのバックアップ(およびリストア)は行えるが、処理の終了時にテーブル群は一時的にロックされる。

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Restore

 通常保存されるファイルタイプであれば、それらの使用中にバックアップを実行できる。これらの格納先は「/var/lib/restore/data」とされ、そのディレクトリ構成はターゲットのオリジナル構造と類似したものとなる。なおコピーされるデータには圧縮やアーカイブ化は施されないため、バックアップには余分なディスク容量が必要であり、ネットワークトラフィックに対する負荷も大きくなるので、その点は注意が必要だ。MySQLデータベースのスナップショットは個々のテーブルをダンプしたものとなるが、その格納先は/etc/restore/restore.ymlの設定ファイルにて指定でき、これらはUSB接続のハードドライブやペン型ドライブなど、実際にマウントされているものであればリムーバブルデバイスを含む任意のマウントポイントを使用できる。

 個々のバックアップについては、Targetセットアップ時に一意で識別しやすいテキスト名を付けておく必要があり、過去に保存したターゲットはFilestoresタブに一覧される。各ターゲットのアップデートでは差分バックアップの作成が可能で、これによりストレージ容量の節約と同時に、バージョンベースのアップデートが行えるようになっている。ターゲットについてはオーナーおよびグループのパーミッション設定と変更が可能であり、次回以降のバックアップにおけるコンテンツ変更(新規ファイルの追加や不要ファイルの削除)も行える。自動バックアップおよび保有期間のスケジューリングは日付やタイムスパンを基にしたインターバル設定が可能であり、固定的なパターンではない柔軟なスケジュール指定にてバックアップスナップショットをローテーションさせることができる。こうしたバックアップ関連の機能のうちで最も重要なものは、リストア先をオリジナル以外の場所にも指定できる点であろう。

現行のRestoreでは行えない処理

 このように多数の機能を備えたRestoreではあるが、若干の欠点も有している。その中でも最大の不備は、ローカルファイルが未サポートな点であろう。そのためホストマシン本体にあるファイルについてはバックアップができない。これはバックアップ用サーバを別途確保しているユーザや企業にとっては問題視するような不備ではないかもしれないが、単一のマシンのみを運用しているホームユーザにとっては致命的である。私の場合は2台のマシンを常に稼働させ続けているので、可能であれば一方のマシンにてRestoreを実行させて両マシンのバックアップを一括で処理させたいのだが、現状では他方のみのバックアップしかできないので、対策としては双方のマシンでRestoreを実行させるかバックアップ専用に3番目のマシンを用意するしかない。

 SFTP(SSH)アクセスタイプ関連のバグを例外とすれば、Restoreの謳い文句に掲げられている機能はいずれも正常かつスムースに動作する。実際、今回私が試した限りにおいてその他のアクセスタイプは正しく接続できており、LinuxおよびWindowsマシンでのリストアについてもファイルの破損は生じていない。

 RestoreのWebサイトには、関連ドキュメント、スクリーンショット、サポート用のwikiおよびフォーラムへのリンクが張られているだけでなく、実際のユーザから寄せられた具体的な称賛の声も紹介されている。現行のプログラムは無料でダウンロードして使用することができるが、商用版のサポートも準備中とのことだ。

 私個人としては、従来から用いているmysqldumpsやtar化とCDへの焼き込みといった手法を現行のRestoreで置き換えるつもりはないが、このアプリケーションはかなり気に入っているので、将来的にローカルファイルのサポートが追加された際にはもう一度試してみるつもりである。またRestoreの現行機能にて必要な処理を満たすことのできるユーザにとっては有用なツールとして利用できるはずだ。これに該当するのはデータセンタないしエンタープライズ分野のカスタマであろうが、バックアップ専用のマシンを用意できるというホームユーザもその範疇に入れていいだろう。

Linux.com 原文