KIOスレーブ活用術

 KDE Input/Output(KIO)スレーブはKDEの持つ多くの機能を担っている働き者だ。ファイルシステム、ネットワークプロトコル、検索機能といった多様なリソースに対して一貫したアクセス法を与える。KDEアプリケーションがそうしたリソースに標準的な方法でアクセスできるのは、KIOスレーブが支えているからなのだ。FTPセッションを開いてリモートにあるファイルを手元にあるかのようにコピーしたり移動したりリネームしたり削除したりできるのも、Secure Shell(SSH)を介して接続しリモートのファイルをローカルにあるかのように使うことができるのもKIOスレーブのお陰だ。Webの閲覧でさえ、KIOスレーブを使っている。

 KIOスレーブを使うと、どこにでもある普通のプログラムが、ローカルだけでなくリモートのファイルも扱えるツールに、あるいは多様なプロトコルを処理するツールに変身する。たとえば、ファイルマネージャのKonquerorがWebブラウザーとしても動作するのはKIOスレーブを使っているからだ。

 どのようなKIOスレーブが利用できるかは、コンソールから(またはAlt-F2を押して)kinfocenterを実行し、そのProtocolsタブを見ればわかる。ここに完全なリストがある。ただし、一部のKIOスレーブについては、説明がほとんどない。たとえば、「camera:/」の説明には「Some info about protocol camera:/ …」とあるだけだ。

 一般に、プロトコルは theKioslaveName:/ という形式で記述し、1本または2本の斜線のあとにはパラメーターが続く。フロッピードライブやUSBスティックにアクセスするときはfloppy:/のように斜線は1本、Webページにアクセスするときはhttp://のように2本引く。概して言えば、ネットワーク関連のプロトコルは2本だ。

例:KIOスレーブを使ったファイルの同期

 ノート・パソコンからデスクトップ・パソコンにファイルをコピーする場合を考えよう。このようなとき、普通ならSecure Copy(SCP)かrsyncを使うだろう。あるいは、UnisonSynbakなどの専用アプリケーションを使う。しかし、実は、お馴染みのファイルブラウザを使ってコピーできるのだ。ここでは、KonquerorとKIOスレーブを使ってコピーする方法を説明しよう。

 KIOスレーブを直接利用することはできない。プログラムのアドレスバー、または、Open FileやRunのダイアログの中で使う。まず、Konquerorを起動する。次に、メニューからWindows→Split View Left/Rightの順にクリックして、同時に2つのディレクトリーが表示できるようにする。アドレスバーは両方のパネルにある。左パネルをクリックしてコピーしたいファイルのディレクトリーを開き、右パネルをクリックしてアドレス・バーにfish://theUrlOfTheOtherPC/thePathToTheDirectory と入力する(リモートのマシンもユーザー名が同じ場合。異なる場合は、fish://yourUserName@theUrlOfTheOtherPC/thePathToTheDirectory とする)。ここでパスワードを聞いてくるはずだ。パスワードを入力してしばらくすると、リモートのディレクトリーがローカルのものとまったく同じように表示される。

 あとは、どちらもローカルにあるかのようにファイルを同期させるだけだ。同期だけが目的なら、Krusaderがお勧め。この同期ツールはKIOスレーブと相性がいい。

 同じように、Webサイトをメンテナンスする場合、普通ならFTPクライアントを使って変更したファイルをアップロードするだろうが、実はFTPクライアントを使う必要はない。KonquerorかDolphinのウィンドウでftp://theUrlOfYourSite を開くだけで、手元のコンピューターにあるかのようにリモートのファイルをコピーしたり削除したりリネームしたりできる。

その他のKIOスレーブ

 文字通り何十とあるKIOスレーブの中から、使えそうなものをいくつか紹介しよう。

  • about:/ 今使っているアプリケーションに関する情報を表示する。通常、Aboutヘルプウィンドウと同じ情報が得られる。
  • applications:/programs:/ Applicationsメニューを表示する。システムメニューで得られるメニューの拡大版。プログラムをクリックすると、そのプログラムが起動する。
  • audiocd:/ 変換されたトラックを、利用可能な形式ごとにディレクトリーに分類して表示する。CDのリッピングにきわめて有用。特定の形式の歌が必要なときは、その歌を対応するディレクトリーにコピーするだけ。形式はKIOスレーブが変換してくれる。同様に、videodvd:/でDVDビデオにアクセスすることができる。
  • file:/directoryName  指定されたディレクトリーの内容を表示する。使用頻度ではおそらくトップクラスだが、その役割についてはほとんど知られていない。これと同種のプロトコルが2つある。home:/はホーム・ディレクトリーを、trash:/はゴミ箱を表示する。
  • fish://aRemotePC  SSHを介してリモートPCのディレクトリーにアクセスする。ftp://someUrl も同じ機能だが、こちらはFTPプロトコルが使われる。
  • fonts:/ フォントとシステムワイドのフォントを2つのディレクトリーに分けて表示する。今使っているコンピューターからフォントを削除するといった基本的なフォント管理ができる。
  • help:/applicationName info:/applicationName man:/applicationName  いずれも、アプリケーションに関する情報が得られる。
  • http://someUrl https://someSecureUrl  Webを閲覧する。使用頻度はトップクラス。
  • lan:// "Network Neighborhood"に関する情報を表示する。
  • news:// Webページ上のニュース・リンクをクリックしたときに動作するKIOスレーブ。ニュース・フィードを購読できる。
  • print:/ 印刷サブシステムにアクセスする。Classes、Jobs、Manager、Printers、Specialsというフォルダーがある。Specialsフォルダーでは、ファックス送信やPDFファイル作成などの操作が可能。
  • settings:/ KControlモジュールにアクセスする。一部の構成設定が変更可能。
  • smb://aWindowsDirectory  Sambaを介してリモートWindowsの共有にアクセスする。
  • sysinfo:/ コンピューターに関するデータを全画面を使って表示する。
  • tar:/someTarredFile zip:/someZippedFile  tarファイルまたはzipファイルの内容を表示する。含まれているファイルをほかのディレクトリーにコピーするだけで、そのファイルを展開することができる。

 ほとんどのKIOスレーブはフォルダーとファイルの一覧を表示し、手元のコンピューター上にあるファイルのように閲覧することができる。プロトコルが違っても使い方は同じ。KIOスレーブのお陰で、1つのアプリケーションをいろいろな目的に使える。

 KIOスレーブを活用すればKDEとLinuxを使いこなし、コンピューターを今まで以上に活用できるようになるだろう。

Federico Kereki ウルグアイのシステム・エンジニア。20年以上に渡ってシステム開発に携わるかたわら、コンサルティングや大学での指導を続けている。

Linux.com 原文