Linuxレビュー:可もなく不可もないRed HatクローンのX/OS
X/OSは、6枚組みのCDか、または3.6GBのDVD 1枚として提供されている。DVDイメージのダウンロードの完了を一晩中待っていたので、私はX/OSがどのようなディストリビューションなのかを一刻も早く知りたくなってたまらくなった。さっそくブートすると見慣れたAnacondaインストーラが現われたが、私が最後にRed Hatを使ったときからややアップグレードしていて、またX/OSに合わせたテーマになっていた。インストールはFedoraユーザにとってはいつも通りのもので、かなりユーザフレンドリーだった。インストールに関して今回遭遇した唯一の難点は、MBRにGRUBをインストールしないことを選択したところ、X/OSをブートするための適切なGRUBの設定をインストーラがコピーしなかったことだ。そこでX/OSのCDでブートして「linux rescue」を利用しようとしたのだが、「ブートローダ修正用スクリプト」といった類いのものは用意されておらず、単に管理用のシェルになった。そのためmenu.lst(GRUBの設定ファイル)にX/OSを手動で追加せざるを得なかったのだが、必要な情報をコピー&ペーストするだけで済むようになっていて欲しかった。とは言え、これは小さな問題点であるうえ、X/OSのGRUBをインストールしても良いという人には問題にはならない。
最初のブートでは、ユーザは様々な設定オプションを入力する必要がある。ここでもやはりウィザードの画面はRed Hatのものではなく、X/OSに合うような良い感じのテーマになっていた。すべての質問に答え終わったとき、その時点まではすべて適切に動いていた様子だったのにも関わらず、突如としてカーソル以外の部分の画面が真っ黒になってしまった。10分後、まだカーソルを動かすことはできたが、それ以外には何も変化はなかった。そこでCtrl-Alt-BackspaceでXを終了しようとしたが無駄だった。また、Ctrl-Alt-[F1-F6] を使ってコンソールにアクセスしようともしてみたが、やはりできなかった。そのため結局、コンピュータをリセットしなければならなかった。この後、ウィザードの質問に答え終わったらフリーズするという無限ループに陥るのではないかと懸念したのだが、その心配は杞憂に終わり、設定は保存されていて、X/OSはブートしてログイン画面を表示した。設定ウィザードで追加しておいたユーザとしてログインすると、X/OSのテーマのGNOMEデスクトップが表示された。
画面上では「アップデートがあります」という点滅するボタンが最も目立っていたので、アップデートのダウンロードを開始して、その間にすでにインストールされていたプログラムにざっと目を通してみたところ、インストールの際に、自作のスクリプトをローカルでテストするためにマシンを使えるように、システムにインストールするものとして、ウェブサーバ、データベースサーバ、FTPサーバ、SSHサーバ、開発、デスクトップなどのカテゴリを選択しておいたのにも関わらず、実際に起動していたのはSSHサーバだけだった。このことに関して、2つの相反する感想を持った。一方では、コンピュータをウェブサーバにするというオプションを選択しておいたのだから、OSがコンピュータをウェブサーバにしておいて欲しいと思った。しかしもう一方でセキュリティ的な観点から考えると、上に挙げたような各種のサーバのような機能はそれぞれ設定を見直した後で手動で有効にする必要があった方がずっと安全だとも思った。Apache 2、MySQL、vsftpdについてはサービス設定ウィザードを使用して有効にした。ApacheではPHPが使えるように設定されていて、データベースへのアクセスもまったく問題なく行なうことができた。以上のような作業をしている間にアップデートがインストールされたので、完了後は指示通りにリブートした。
デスクトップカテゴリには開発関連のソフトウェアの他に、Firefoxウェブブラウザ、OpenOffice.orgオフィススイート、電子メールとグループウェア用のEvolution、マルチプロトコルIMのPidgin(元Gaim)などよく使われるプログラムが含まれていた。サウンドとビデオのためにはそれぞれRhythmBoxとTotemが含まれていたが、MP3を含めてほとんどのコーデックがサポートされていなかったため、これらの分野の扱いが優れているとは言えないだろう。X/OSはRed Hatとは違ってユーザの便宜を図ってそのようなコーデックをサポートしているかもしれないと期待していたのだが、そうではなかった。
X/OSは、ソフトウェアの選択肢も幅広く取り揃え、使いやすく優れたオペレーティングシステムだ――ただしこのことはRed Hatの長所そのものであるため、X/OSにも当然期待されることだろう――しかしX/OSには、Red Hatや、同じくRHELソースから構築されているディストリビューションのCentOSが提供するもの以上の何らかの価値はなかった。X/OSプロジェクトのウェブサイトでは、大きな変更点として新たに追加されているインストール方法がさかんに宣伝されているが、その方法を使用するためにはRHELかX/OSの有効なキーが必要となる。同ウェブサイトではまた、「小規模なバグ修正」も変更点として挙げられているが、「詳細は個々のパッケージをご覧下さい」と書かれている以上の情報はなかった。それら以外のRed HatとX/OSの違いは、名称と見た目だけだ。X/OSのウェブサイトに追加の文書は用意されておらず、またX/OSコミュニティのフォーラムやチャットルームもなかった。実のところ、X/OSのサイトには何のサポートオプションも提示されていなかった。そこでGoogleでいくらか検索してみたところ、X/OS Experts in Operating Systemsというウェブサイトがあり、ここではX/OS Linuxのための有料サポートとさまざまなオプションが提供されていることが分かった。しかしサポートの範囲は、Red Hatが提供しているものと比較してかなり制限されているようだ。
X/OSのようなサードパーティのベンダにとって、Red Hatの再構築版をRed Hat自体よりも優れてサポートするのは困難だろうということは理解していたため、X/OSを利用する主な理由は無料だということだとは思っていたのだが、X/OSにはソフトウェアのダウンロード以外には無料で提供しているものは何もなかった。反対にCentOSでは、フォーラム、IRC、メーリングリストを通してコミュニティサポートが提供されている。CentOSは多くのファンを抱える熱心なプロジェクトだが、X/OSはどちらかというと、一企業によって使用されているツールであり、単にGPLに準拠するためと、おそらく会社の知名度を上げるためだけに一般向けに提供されているだけのように思われた。
X/OSは、全面的に期待外れだったというわけではないが、感動するようなことも特になかった。X/OSの開発者たちは、X/OSをRed Hatと区別するために必要な最低限の作業は行なっていたが、それ以上の価値をX/OSに追加してはいなかった。同じ機能とより多くの付加価値を得ることのできるディストリビューションが他にもすでにあるため、無料のRed Hatクローンを望む人がX/OSを使用する理由は特に何もない。ほとんどの人にとってはCentOSの方が優れた選択肢だろう。
Preston St. Pierreはブリティッシュコロンビア(カナダ)のフレイザー・ヴァレー大でコンピュータ情報システムを学ぶ学生。