Ajaxの名付け親、ユーザー・エクスペリエンスの重要性を強調――「ユーザーは製品との個人的なかかわりを求めている」
ギャレット氏は、Webコンサルティング会社アダプティブ・パスの創業者としても知られており、かねてからユーザー・エクスペリエンスの重要性を説いてきた人物だ。
同コンファレンスでギャレット氏は、ユーザーは自分が使用する製品との個人的なかかわりを持とうとしていると強調。また、インタラクティブな製品を使うときに働く脳のメカニズムは、人がほかの人と接するときに働くメカニズムと同じだと語った。「言いかえれば、われわれはIT製品を人であるかのようにとらえ、それとかかわっている」
優れたユーザー・エクスペリエンスを提供する製品として、ギャレット氏は「iPod」を引き合いに出す。「iPodは最初のデジタル音楽プレーヤではないし、最も機能が豊富なわけでもない。だが、それでも成功しているのは、 iPodが提供するユーザー・エクスペリエンスが良質だからだ」(同氏)
ギャレット氏はもう1つ、優れたユーザー・エクスペリエンスを提供しているものの例として「Flickr」を挙げている。同氏はFlickrを、デジタル写真共有のハブの座を確立したWebサイトの好例だとして高く評価しているようだ。
Ajaxについて同氏は、リッチなユーザー・エクスペリエンスの代表格と述べた。ただ、「もしもGoogle Mapsのような魅力的な例がなかったとしたら、Ajaxの考え方が本当に普及したかどうかはわからない」と付け加えた。
ギャレット氏によると、Ajaxなどの“成功体験”がソフトウェア開発にも影響を及ぼし始めているという。従来、開発者はコアのデータ部分から作業を始め、次にビジネス・ロジック、その次にユーザー・エクスペリエンスという手順を踏んでいたが、今では最初にユーザー・エクスペリエンスのコンポーネントを作るというやり方へのシフトが見られる。他のコンポーネントについては、ユーザー・エクスペリエンスのコンポーネントからさかのぼって作るのである。
一方、Webもおもしろい段階に差しかかっていると、ギャレット氏は語った。テレビがラジオや演劇の枠組みを踏襲した後、メディアとして独自のものになるまでに10年がかかったが、Webの中心原理も本格普及から約10年を経て理解され始めているという。
ただし、ツール・ベンダーはWeb開発ツール製品を開発者にとってより魅力的なものにするチャンスを生かしていないと、ギャレット氏は指摘する。さらに、Ajaxツールキットとフレームワークが急速に増えていることにも言及し、今後は出来の良いものと悪いものが選別され、淘汰が進むとの見通しを示した。
最後にギャレット氏はWeb 2.0について触れ、ビデオ共有サイト「YouTube」がWeb 2.0の象徴だと語った。「YouTubeは、ユーザーがいなければサイトとしての価値はほとんどない。人々がそこから得ている価値は、ほかの人々がそこにもたらしている価値だ」
(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)
The Rich Web Experience
http://www.therichwebexperience.com/conference/san_jose/2007/09/index.html
提供:Computerworld.jp