HPの仮想化担当者が語る「仮想管理の重要性」――普及期に入ってクローズアップされる仮想管理の課題

 米国ネバダ州ラスベガスで開催された年次コンファレンス「HP Technology Forum & Expo 2007」(6月18日~21日)の「1番人気」は何と言っても「仮想化」であり、会期中は実に87にも上る仮想化関連のワークショップが開かれた。HPの仮想化担当者は顧客との応対に大わらわだったが、なかでも多忙を極めていたのが、仮想化プログラム担当ディレクターを務めるニック・バンダー・ズウィープ氏であった。多忙の中でインタビューに応じてくれた同氏は、仮想化の有望性とそれを管理するうえでの注意点について、熱く語った。

ロバート・マリンズ
IDG News Service サンフランシスコ支局

――HP Technology Forumの来場者には、どんなメッセージを伝えようと思っているのか。

 仮想化が普及期に向かいつつあることを伝えたい。ほんの数年前までは、まだ早期導入者たちによって仮想化の是非を巡る論争が繰り広げられているにすぎなかった。だが、今では、何らかの仮想化プロジェクトを実践していない企業を探すほうが難しいくらいだ。

 実際、当社の大手顧客(一部、中規模企業を含む)に聞いたところ、そのうちの75%が、「仮想化プロジェクトを実行済み」あるいは「12カ月以内に実行予定」と答えた。

 もっとも、当社が出荷しているサーバの75%が(現時点で)仮想化に対応しているというわけではない。エントリー・レベルの「ProLiant」シリーズでは、(仮想化対応の割合は)まだ1ケタ台にすぎない。だが、現在急激なペースで仮想化対応が進んでおり、ハイエンド・サーバ「Integrity」のほうは、すでに出荷製品の約6割が仮想化に対応している。

――「仮想化プロジェクトを実践済みあるいは実践する」と回答した75%の顧客は、仮想化技術をどのように使っているのか。本番のシステムよりも、まずはソフトウェアのテストや開発などで試験的に導入する傾向が強いとの声を聞くが、それは事実なのか。

 いや、もはや実用に供している企業のほうが多いぐらいだ。顧客との会合で「仮想化を導入している人は?」と尋ねると、約75%が手を挙げる。続けて「(そのうち)本稼働システムで導入している人は?」と質問しても、手を下ろす人はそのうちのわずか25%程度にすぎない。

――仮想化のメリットが大きいことは認めるが、システム管理がいっそう複雑になるため、管理者は大変だとの声も聞く。それは事実か。

 答えは、「イエス」でもあり「ノー」でもある。

 仮想化には、当然、Windows、Linux、ないしHP-UXといったOSをインストールした物理サーバが必要であり、企業にはその運用管理を担当するためのスタッフが存在する。早期導入企業は、社内のサーバ管理担当者の中から数人を「実験的な仮想化担当スタッフ」に任命して仮想化管理を学ばせ、残りの管理スタッフはそのまま物理マシンの管理に当たらせてきた。

 しかしながら、ここにきて仮想サーバの本番環境への移行が進んだことにより、サーバ管理スタッフと仮想化担当スタッフとが再び合同で管理業務に取り組む必要が出てきたわけだ。

 当社では、仮想管理を(マルチプラットフォーム対応サーバ管理ツールである)「Systems Insight Manager」に統合し、環境全体を視野に入れた管理が行えるようにしている。ただし、仮想環境ではさまざまな問題に直面することになる。

 実際、これまでは10台のサーバに対してWindowsのコピーが10あればよかったが、今では10台の物理サーバで50の仮想サーバを管理するようなことも珍しくない。仮想環境に移行したことで、今までの物理環境よりもはるかに広大な環境を管理しなければならなくなってしまったわけだ。そのため、顧客から、「仮想環境を広げすぎた。少し元に戻して管理しやすくしたいので、どうにかしてくれないか」といった声も聞かれるようになった。

――HPの仮想管理ソフトウェアは、ほかのブランドを認識しないのか。

 いや、そんなことはない。Systems Insight Managerと「Virtual Machine Manager」は当社の「ProLiant」サーバ向けの製品だが、仮想環境内に「VMWare」を搭載したDellのサーバやIBMのサーバがあれば、 VMWareが稼働していることを認識し、その環境で動作する。

――HPサーバの場合とまったく同じように動作するのか。

 VMwareの側から見れば同じだが、ハードウェア側から見ると少々対応が異なる。ProLiantサーバの場合、クリックすると温度とファン速度がチェックできるほか、何か障害が発生すれば、管理者が検知する前にSystems Insight Managerが自動的にHPに通知して修理要請を出すこともできる。この機能はDellやIBMのサーバには対応していない。