Just do it! -- 2.6.21 Linuxカーネルリリース

 「無駄口をたたくのはもう十分だ。Just do it!」という心温まるメッセージとともにLinus Torvalds氏が2.6.21 Linuxカーネルをリリースした。2.6.21カーネルは、2.6.20カーネル以来2ヶ月強ぶりのリリースであり、VMI(Virtual Machine Interface:仮想マシンインターフェース)の導入、KVM(Kernel-based Virtual Machine:カーネルベース仮想マシン)に関する改善、そしてストレージ/ネットワーク/グラフィックスデバイス用の新しいドライバなどが含まれている。

 VMIは、準仮想化を実装している仮想化ベンダ各社が共通して使うことのできるインターフェースとなることをねらったものだ。LinuxをVMI対応にすることによって、同一バイナリのLinux(仮想マシン)をそれぞれの仮想化ベンダがそれぞれのハイパーバイザを使って管理することができるようになる。なおVMI対応のLinuxカーネルは、VMwareなどのハイパーバイザ上でも、あるいはハイパーバイザを利用せずに直接ハードウェア上でもブート可能であるため、OSベンダはハイパーバイザサポート用と通常マシン用とで異なるカーネルをリリースする必要がない。より詳しくはLinux Weekly NewsのVMIについての記事を参照されたい。

 2.6.21カーネルにはまたdynticks(dynamic ticks:動的tick)機能が含まれている。dynticks機能によりカーネルはシステムがアイドル状態になったときに「tickless(tickなし)」モードで動作することができるようになる。ticklessモードでは、最近のCPUに備わっている省電力機能を利用してノートPCの消費電力を節約することができる。

 KernelNewbiesのリリースノートによると、2.6.21カーネルにはS3 Trio/Vergeビデオカード用フレームバッファドライバ、Gigaset M101ワイヤレスISDN用ドライバ、Davicom DM9601 USB 1.1イーサネットデバイスのサポート、USB経由でBlackBerryデバイスを充電するためのドライバ、GTCO CalComp/InterWrite USBタブレットのサポートなども含まれている。また、2.6.20カーネルのリリース時に「BROKEN(壊れている)」と記されていたいくつかのビデオドライバのサポートが削除された。

 2.6.21カーネルではファイルシステムの改善も数多く行なわれており、UFS2(Unix File System 2)での読み書き両方のサポート、eCryptfsやGFS2(Global File System 2)の改善、NFS(Network File System)でのIPv6のサポートなどが含まれている。なおJFFS(Journaling Flash File System)バージョン2を代わりに使うようになってしばらく保守されていない状態にあったJFFSバージョン1のサポートがJeff Garzik氏によって削除された。

 この2.6.21カーネルが安定指向のディストリビューションで利用できるようになるまでにはしばらく時間がかかるかもしれない。しかしそれまで待ち切れないという場合には2.6.21のソースコードをダウンロードして自分のシステム上でコンパイルすることもできる。2.6.21カーネルでの変更点についてより詳しくは、KernelNewbiesの記事やChangeLogを参照のこと。

NewsForge.com 原文