オープンソースのビジネスインテリジェンスに自由と柔軟性を見いだした大学

ネブラスカ大学(University of Nebraska)は、常にMicrosoftの得意先だった。同学におけるデータおよびインターネットの専門家Amy Stephen氏は、まだ世に出たばかりのWindows NTにインストールディスクが27枚もあった頃を回想する。「Windows NTを採用したのは、それまでに考案されていたあらゆるネットワーク・プロトコルやデスクトップ・アプリケーションが学内で使用されていたからです。当時、そうした多様性に対応できたのはMicrosoftだけでした」。しかし、Microsoft本来の「獲物を狙う貪欲さ」がなりをひそめ、同社がもはや大学側のニーズを重視しなくなった今、Stephen氏の目にはオープンソースのソリューションのほうがずっと魅力的に映っている。

ほとんどの大学と同様に、ネブラスカ大学も多様な管理体制の下で運営されている。このことは、単なるテクノロジの寄せ集めへと向かう傾向があることを意味する。12年前、Stephen氏は、あらゆる種類の運用システムからの情報を統合する有用なデータウェアハウスを作成できるようにとSQL ServerとWindows NTそれぞれの無償版をMicrosoftから受け取った。「システムに関与していた人々のやり方を変える必要がなかったので、いとも簡単に目的を達成できました」とStephen氏は語る。

Stephen氏とMicrosoftとの関係は、同社が商用のオペレーティングシステムやビジネスアプリケーションのシェアを伸ばすにつれ、徐々に変わっていった。「Lotus 1-2-3は姿を消し、WordPerfectも今とは違っていました。Quattro Proも消え去ろうとしていました」。しかし、Stephen氏はこうした変化のうねりに目をつぶることができた。それについて彼女は「誰もがOffice製品に移行することで、サポートが容易になったからです。そのことを重く受け止めることはありませんでした」と述べている。

だが、Active Directory構造への移行を強いられたことで、Stephen氏は目を覚ました。「SQL Serverにおけるレポートおよび分析のサービスのようなハイエンド向けツールやデータウェアハウス用ツール、これらによってセキュリティモデルへのActive Directoryの組み込みが始まり、こうしたツールを利用するためには自分たちのドメインでActive Directory構造を使用せざるを得なくなったのです」と彼女は説明する。「大学の環境には、データウェアハウスにアクセスするドメインがたくさんありますが、それらは“信頼できる”ドメインではありません。要するに、Microsoftは私たちのテクノロジ基盤を見捨てたのです」

「上品なスーツに身を包んだ社員をCEOのもとに送り、監査の手間を省くために組織全体のライセンスを一括購入させるというのが、Microsoftの常套手段です。私たちは彼らと同席して『SQL Serverの統合を手伝ってもらえませんか』と頼んだものです。あのとき、依頼を断わるMicrosoft社員が私たちをせせら笑っているような感じがしました。実際、彼らは真剣に取り合ってくれなかったのです」

こうしてStephen氏はSQL Serverを切り捨てる決断をし、オープンソースのビジネスインテリジェンス・スイート2点の調査を始めた。「Pentahoに目をつけ、時間をかけてこの製品について調べましたが、結局JasperSoftを採用することにしました。担当者に相談することができたからです。そのおかげで随分助かりました」。彼女は、最も頻繁にビジネスインテリジェンス・ツールを利用する学内企画調査部門でJasperへの部分的移行に着手した。この部門の役割は、大学に関する実態と統計の調査報告、情報データベースの管理、高等教育における全般的傾向の分析である。

「この企画調査部門のシステムを用意するにあたっての最大の課題は、エンドユーザの日々の業務に対処しながら新しい手法に慣れてもらうことです。彼らはレポート処理については理解していますが、ほかのモデルについては指導が必要になります。以前は、レポートに関する彼らの要求を聞いたうえで、ASPのWebページの設定、ドリルダウン形式のレポートの作成、全関係者向けのWebサイトへの掲載を私たちが行っていました。現在、私たちはフレームワークとしてJoomla!を利用しています。そして、ユーザが自らJasperのiReport画面の前に座り、データウェアハウスへの接続とレポートのデザインを行います。XMLファイルがJasperServerに送信されて公開されると、そのレポートはエンドユーザ向けのJoomla!フレームワーク内で参照できるようになります。ユーザは、自分が主導権を握って操作できることをとても喜んでいます」

喜んでいるのはStephen氏も同じだ。「最終的には、私の手によって大学の顧客ベースに対話的なWebサイトを設置できます。こうしてActive Directoryの問題を克服することができたのです」

他大学のIT責任者でオープンソースの採用を検討している人々は、ビジネスモデルがどのように機能するのかを理解する必要がある、とStephen氏は述べている。「まずは、ソフトウェアがうまく活用され、十分なサポートを受けているかどうかを知ることです。私が今回のアイデアを経営層に提案したときには、『なるほど、オープンソースはコストがかからないと言うのなら、彼らにはどうしてそんなことができるのかね』という質問が出ました。彼らは、組織を存続させる術として、採算がとれることを確認する必要があったのです。明日になって消えてなくなってしまうわけにはいきませんから」

ソフトウェアの背後にある組織を調査する以外に、コミュニティによるサポートについて理解することも不可欠だとStephen氏は言う。「コミュニティの主導者たちが優秀なら、それなりの結果が見えるはずです。コミュニティの活動がどれほど活発かに注目します。コミュニティ主導型の発展をしているのか、それとも上からの押しつけによるものなのかにも注意が必要です。そして、実際にソフトウェアを試してみます。ダウンロードしたら、ほかのユーザにも話を聞いてユーザグループを探すことも忘れてはいけません。オープンソースはとても素晴らしいものです。ソフトウェアに関する、従来とはまったく別の考え方と言えるでしょう」

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