開発者たちからのフィードバックを熱烈歓迎中――Yahoo! Pipes
このデータマッシュアップ用ツールの実態は今ひとつよく理解されていない節も感じられるが、様々なソースからの情報収集に対応していると同時に、必要に応じて最終出力にユーザによるフィルタリングやカスタマイズを施せるという点で、大いに注目されていることに間違いはない。アプリケーションとしての位置づけは、プログラミング経験がゼロないし浅いユーザ向けと紹介はされているが、開発者やパワーユーザの要求に応えるだけの高度な機能も多く有している。Sadri氏によると、開発チームが現在特に要望しているのは、このツールがプログラマにとって如何に役立つかを確認してもらうことであり、そこからのフィードバックが得られれば、将来的に行うPipesへの機能追加やより創造的なアプリケーションの構築に役立てることができるだろうとしている。
「私どもは開発者の方々に、各自のプログラミング技能にとらわれることなく、実際にPipesを試用してみることを呼びかけています」と同氏は語る。「特に技術に精通しているユーザに対しては、今後Pipesの機能を拡張していく上で参考となるフィードバックが返されることを期待しています。Pipesの可能性は無限に広がっていますが、より複雑なアプリケーションを扱うための拡張を近い将来に施す予定です」
以前よりYahoo!の提供するプロダクツやサービスについては、これらを応用したサードパーティ系アプリケーションの構築が奨励されており、そうした事情はPipesの場合にもあてはまるとSadri氏は説明している。なおUI libraryおよびDesign Patterns libraryなど一部のツールに関してはオープンソース化されているが、Pipesで用いられているテクノロジはオープンソース化されていない。ただし、開発者が内部を覗き見てある程度の改変を施すことは許されている。
「私たちが開発者の皆様にこの種のツールを提供している意図は、インターネットユーザが日常的に利用できるより有用なサービスやアプリケーションを創り出してもらいたいからです」とSadri氏は語る。「これは生まれて間もない真新しいシステムなので、まずは開発者にとって使いやすいであろうツールを整備し、独創的かつ魅力的な利用法を見つけ出してもらうことを優先しています。また将来的な展望からすると、このシステムによる最大の受益者はごく平均的なインターネットユーザになると考えていますが、そうした恩恵がPipesというテクノロジによって実現されたものだということを、こうしたユーザたちが意識することはないかもしれません」
Yahoo!が将来的にPipesのすべてを開発者に対してオープン化する可能性について、Sadri氏はこう答えている。「Pipesは生まれて間もない段階にあり、今は具体的な計画を口にできる状況ではありません。ただし現状においても、各自のデータやアプリケーションをPipesに対応したフィードとして提供するという形で、ある程度の協力をして頂くことは可能です。将来的に何を行うかは、ツールの発展に応じて検討していきます」
このツールが備える機能を十二分に発揮させるにはある程度のプログラミング技能が必要であることをSadri氏も認めてはいるが、その一方で、Pipesはあらゆる技術レベルの人間に利用してもらえるようデザインされているとも説明している。「(このツールは)簡単に扱えると同時に、実用に耐える柔軟性を有すようデザインされています」と同氏は語る。「例えばView Sourceという機能を使うと、システムで使われているすべてのPipeについて、その情報を図示させることができます。こうした機能は、変更を施したいPipeの実態を特定する際に役立つものであり、技術的経験の浅いユーザであっても、独自に改変したバージョンを自分専用で使用するといったチューニングが行いやすくなるので、結果的により多数の人間に利用してもらえるようになるでしょう」
実際このアプリケーションをごく単純に運用しようと思うなら、特定のPipeをコピーし、用途に応じたフィルタを適用してWebサイトに保存しておくだけで、得られる出力を1つのフィードにまとめることができる。Sadri氏によると、PipesのWebサイトを訪れてデータと情報の新たな統合法の存在を発見したユーザたちからは、例えばニュースのフィードをFlickr用の画像と組み合わせるなど、開発時には思いもよらなかった独創的な使用法が編み出されているとのことだ。
Sadri氏の説明するところでは、Pipesは生まれたばかりのヨチヨチ歩き段階にあり、このツールを用いて開発者やプログラマたちが何をどこまでできるのか、あるいは、そこから何が生み出されてくるのかを語るのは時期尚早であるとされている。ただし考えられる可能性として、多くの従来型オンラインサービスが各種のデータベースと融合することでそれらの機能が拡張され、新たな性質を有する情報の混合体をユーザが利用できるようになるかもしれないということだ。Sadri氏はそうした1つの事例として、不動産物件の目録と地域の学校群の情報とを組み合わせるといった使用法を取り上げ、「Pipesが登場する以前であれば、そうした構想を具体化するのは簡単な作業ではありませんでした」としている。
いずれの新規テクノロジもそうであるように、Pipesが今後成長していく過程には様々な苦難が待ちかまえているはずなのだが、これまでに生み出されたプログラミング的な成果を見るだけでも、開発チームは満足できているとのことである。「現状で生み出された成果ないし計画段階の構想には、目を見張るべきものが存在しています」とSadri氏は語る。「また近い将来に、より複雑なアプリケーションを扱えるようPipesを拡張することを考えています。Pipesの優れた特質の1つは、新たに作られたPipeを、他のPipesにおける新規モジュールの1つとして利用できることです。こうしたコンポーネントの再利用性を高めるため、必要とするコンポーネントが既に存在するかを検索する機能を改善するつもりですが、それが果たされた暁には有用性が一段と向上することになるでしょう」
「Pipesの可能性は無限に広がっており、今は開発者たちから寄せられるフィードバックを首を長くして待っているところです」
NewsForge.com 原文