IBM、Rational製品の再設計に着手——Jazz対応に向けコミュニティ主導によるグローバル共同開発を視野に
これは、同社ラショナル部門のゼネラル・マネジャー、ダニエル・サバー氏が1月24日、InfoWorld米国版とのインタビューで語ったもの。同氏によると、SOAの普及が本格化することを視野に入れ、開発コミュニティが主導するグローバルな共同開発を最終的な目標にするという。
今回の計画に基づいて開発される新製品は、今年の半ばころから提供が開始される見通しだ。同社では、インターネット開発プロセスを迅速化し、ソフトウェア・エンジニアリングの柔軟性と即応性を向上させる製品になると期待している。
IBM は、国内と海外の開発者が共同作業をする機会が増えている現状を踏まえ、グローバル環境での分散開発を実現するプラットフォームの提供を進めている。世界各地に分散した開発者はこれを利用して、要求モデリング、アーキテクチャ、既存コードの変更、文書化、バグ修正といった開発のさまざまなプロセスに従事することが可能になる。
サバー氏によると、IBMはこの計画にSOAを取り入れていく意向だという。同氏は、SOAについて、一元的なソフトウェアをより柔軟なコンポーネントへ分解していく手法だととらえている。
IBM は、同計画の一環として、さまざまな国々で作業する開発者が協力し、柔軟性の高いソフトウェアを開発していくためのアーキテクチャおよびソフトウェア・ライフサイクル・マネジメント機能を、Rational製品に追加しようとしている。また、インターネットを活用したコミュニティ主導型プロジェクトの実現にも、さらに力を入れていくという。
「こうした取り組みは、いわゆるALM(Application Lifecycle Management)を実現するものだが、特にALMの新たな側面に焦点を当てている。例えば、アプリケーション自身が、開発者も把握できない場所で開発された多数のパーツを、動的に組み合わせていけるようにすることも念頭に置いている」とサバー氏は説明する。
同氏は、Rational製品をSaaS(Software as a Service)モデルを利用して提供する考えを示唆したが、具体的な実現方法については明言を避けた。「当社の製品ポートフォリオをこうした方向へ転換していくに際して、ソフトウェア開発プラットフォームの提供形態にSaaSモデルを採用する可能性はある。だが現時点では、いかなる種類のSaaSモデルを採用するかを発表するつもりはない」
今回の計画について、サバー氏は「今日われわれが提供している機能を考慮すれば、生まれるべくして生まれたもの」だと強調する。
IBM は、無料で使用できるオープンソース技術と有料製品の両方を用意し、Jazzを中核とした開発コミュニティを育成していくことも検討している。以前にも同社は同様の方法で、Eclipse Foundationを設立した。同団体は、オープンソース技術を商用製品に組み込む活動を行っている。
もっとも、フォレスター・リサーチのアナリストであるケアリー・シュウェイバー氏は、IBMのJazzに対する取り組みについては曖昧な部分も多いと指摘する。「こうした取り組みによって機能が複雑化するのではなく、強化されればよいのだが」と、同氏は不安を口にした。
シュウェイバー氏は、Jazzに関する取り組みがうまくいけば、IBMの複数のツールで1つの掲示板を利用できるようになるなど、同社製品を容易に共同利用できる環境を実現できるようになるとしている。
Jazz フレームワークでは、ソフトウェアおよびシステム開発の各ライフサイクルにかかわる複数のチームを、1つにまとめることが可能になる。例えば、同フレームワークのユーザーは、要求の変更が開発プロセス全体に及ぼす影響をあらかじめ判断することもできる。Jazzは、世界中のソフトウェア開発工程を管理し、変更を自動的に通知してくれるのだ。
(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)
米IBM
http://www.ibm.com/
提供:Computerworld.jp