オラクル、“Web 2.0”のインタフェースを提供する「WebCenter Suite」を1月末にリリース
WebCenter Suiteは、各種アプリケーションを行き来しなくても、1つの画面からさまざまなコンテンツとサービスにアクセスできるようにすることで、仕事の生産性を高めようというものだ。同スイートは、昨年10月にカリフォルニアで開催された「Oracle OpenWorld 2006」で披露された。なお、IBMやマイクロソフトといった他のベンダーも、同様の機能を実現すべく開発を進めている。
オラクルはWebCenter SuiteをWebアプリケーション・サーバ「Oracle Application Server Enterprise Edition」へのアドオンとして、1CPU当たり5万ドルで販売する意向だ。
同スイートの中核となるのは、JavaServer Faces(JSF)をベースとするプレゼンテーション層のフレームワーク「WebCenter Framework」である。同フレームワークを活用すれば、Ajaxコンポーネントやポートレット、その他のコンテンツを1つのGUIに埋め込むことができる。また同スイートには、「Oracle Enterprise Search」、VoIP、Wiki作成ツールといったサービスをGUIに埋め込む「WebCenter Services」も用意されている。
「例えば、ピープルソフトの経費報告アプリケーションから取り込んだコンテンツがあるとしよう。そのインタフェースにVoIPとプレゼンスの機能を用意しておけば、経費の詳細について知りたいときも、従業員の名前をクリックするだけでVoIPコールを発信できる」(オラクルのサーバ・テクノロジー担当副社長、ラフール・パテル氏)
パテル氏によると、プロジェクトに関するテンプレートとソフトウェア・ウィザードを使ってWikiをセットアップしておき、プロジェクト・チームのメンバーを招待するといった使い方もできるという。
オランダのアクセンチュア・テクノロジー・サービセズでソフトウェア・コンサルタントを務めるアンデレアス・ハジアントニウ氏は、WebCenter Suiteの魅力の1つとして、オラクルのデータベースやアプリケーション・サーバとの緊密な連携を挙げる。オラクルの顧客は、これら既存のインフラ製品を使ってブログやWikiを展開できるわけだ。
オラクル製アプリケーションのユーザーも、WebCenter Suiteの動向には注意を払う必要がある。同スイートは、スタンドアロンの製品として提供されるだけでなく、オラクルやシーベル・システムズ、ピープルソフトのアプリケーションを統合した「Fusion Applications」のデフォルト・インタフェースとなるからだ。
AMR リサーチのアナリスト、ジム・マーフィー氏は、WebCenter Suiteに関する調査メモに次のように記している。「Fusion Applicationsの初回リリースにどのような機能が盛り込まれるのかは、現時点ではわからない。だが、ユーザーが将来のスイートとどう対話するかについて、オラクルなりの考えを垣間見ることはできる」
WebCenter Suiteはポータル・サーバといくつかの点で類似しているが、オラクルのパテル氏は基本的にポータル・サーバとはまったく逆だと言う。 WebCenter Suiteの場合、アプリケーションのコンテンツを個別のポータル製品に配置するのでなく、ポータルの要素をアプリケーション(もしくはアプリケーション・インタフェース)に配置できるからだ。
ただ、WebCenter Suiteが従来のオラクル製品と機能的に一部重複していることを懸念する向きもある。オラクルの技術者向けサイト「Oracle Technology Network(OTN)」には、重複していることを理由に、ポータル・サーバ「Oracle Portal」への投資がいつまでもつかを疑問視する書き込みも見られた。そうした書き込みに対し、WebCenter Suiteの製品マネジャーであるピーター・モスコビッツ氏は、Oracle PortalとWebCenter Suiteは少なくともしばらくの間共存するという答え方しかしていない。
パテル氏は、標準的なポータル・サーバ用に作成したポートレットをWebCenter Suiteのインタフェースに取り込むことは容易だとしている。だが、Oracle Portalをまだ導入していない会社に対しては、WebCenter Suiteに直接移行することを勧めると同氏は言う。
調査会社IDCのコラボレーティブ・コンピューティング/エンタープライズ担当副社長、マーク・レビット氏によると、WebCenter Suiteの競合、もしくは類似するエンタープライズ向けのソフトウェアとしては、マイクロソフトの「SharePoint 2007」やSAPの「NetWeaver Business Client(旧称:Project Muse)」、セレンディピティ・テクノロジーズの製品などがあるという。また、IBMも今週、同社のコラボレーション・ソフトウェア「Lotus Notes」にWeb 2.0ライクな機能を盛り込むと発表した。
レビット氏はWebCenter Suiteについて、「WebCenter Suiteは、オラクル製のものに限らず、あらゆるアプリケーションと情報ソースからマッシュアップを作成できる、大手ベンダーとしては野心的な試み」と評価している。
1月31日、オラクルはニューヨークで、「Oracle E-Business Suite」をはじめとするエンタープライズ向けアプリケーション・スイートのアップデート版を発表する予定で、WebCenterはこのイベントに合わせてリリースされる見込みだ。
(ジェームズ・ニコライ/IDG News Service パリ支局)
米国オラクル http://www.oracle.com/
提供:Computerworld.jp