rPathと仮想化について話す

rPathの開発担当副社長、Brett Adamsは2007年を仮想化の大きな転換点と見ている。仮想化の行方を見据えたとき、rPathと同じ見方に達している会社は数少ない。自らを「ソフトウェアアプライアンス企業」と位置づけるrPathは、仮想アプライアンスに重点的に取り組み、自社製品の簡素化を進めた最初の企業の1つである。

「上半期に本格化するか完全には明らかになっていない」とAdamsは言う。「だが、2007年の下半期までに仮想アプライアンスの概念は根付くと思う。この見通しは、rPathがさまざまな業界関係者との話し合いの中から得たもので、一部の業界アナリストの意見も参考にしている。しかし、それがどんな形を取るかまだ多少不確かなところがある」

Adamsは、仮想化に関してMicrosoftの市場参入、オープンソースコミュニティへの浸透、そして仮想化の利用が広がるとともに仮想アプライアンスの管理に関心が集まるとも見ている。

Adamsによれば、rPathとして独自の仮想化プラットフォームを開発する気は「まったくない」という。この分野には既に「かなり大きな市場取引」があるからだ。それよりも、rPathはすべてのプラットフォームをサポートすると確約している。同社は既にVMwareXenSourceをサポートしており、さらにMicrosoftのVirtual Hard Diskを近々サポートする予定だ。

Network Enginesが自社のマネージドハードウェアアプライアンスでやっているように、rPathは独立系ソフトウェアベンダの「見えざるプロバイダ」になることを目標に掲げているという。「我が社の目標は仮想化のスイスになることだ」とAdamsは言う。つまり、特定のプラットフォームを特別扱いせず、その技術をすべてのベンダに使って貰えるような会社ということだ。この中立性によりrPathの客観的観察者としての地位は比類なきものとなる。

仮想アプライアンス

Adamsは、昨年を振り返って、仮想化の技術が採用の初期段階にあると見ている。仮想化がもっと広く利用されるためには、「伝統的な方法で取り組めるメインストリーム問題の解決策」を開発者が見つける必要がある。つまり、差し迫った問題を解決するために、この技術をどう使うかということだ。

これまでの解決策は「サーバー統合」だった。すなわち、より少数のより強力なマシンを仮想レイヤに統合すること、少なくともVMwareはそうだった。しかし、Adamsは、今後数ヶ月のうちに仮想アプライアンスが本領を発揮するものと見ている。

「仮想化はソフトウェアの消費を促す」とAdamは言う。「仮想化はインストールを格段に単純化する。仮想アプライアンスのメンテナンスやアップデートが可能ならIT絡みの問題による顧客の消耗がいっそう減り、顧客の関心が事業価値の方向へもっと向くようになる」

この傾向は既にある程度進行している。「VMwareが仮想アプライアンス市場に参入して仮想アプライアンス販売への取り組みを実際に開始したことに我々は驚かされた。そんなに早く事が進むとは思っていなかったのだ」とAdamsは言う。しかし、VMwareの参入が実験的なものなのか、それとも新規分野で市場をリードする積極果敢なものなのかは今のところはっきりしないという。

どちらにせよ、AdamsはVMwareが市場に参入して無料のVMware Playerを発表することにより仮想化の裾野が広がり、この技術が単にマシンの台数を減らすものでないことが一般に認知されると見ている。その結果、最初は自社製品のデモという形で、仮想アプライアンスに取り組むベンダが増えると予測する。

Microsoftの参入

同社の新技術への対応には相変わらぬものがあるが、Microsoftも遅蒔きながら仮想化に取り組もうとしている。2006年、MicrosoftはXenSourceとの共同開発を発表し、同社のTest Driveプログラムと4つのサンプルアプライアンスを披露した。Adamsは、これらの開発を「順当な手筋」と評する。

ただし、Microsoftは「おそらく2007年後半まで本番の製品を出荷しないだろう」とも付け加える。これで、たぶんVMwareなどの競争相手にやや遅れを取るだろう。

けれども長い目で見れば、この遅れは重要でないとAdamsは見ている。「我々は大量のソフトウェアがMicrosoftのプラットフォームで動くことを認識する必要がある。だからパーティにちょっと遅れてもMicrosoftにとって深刻な問題などにならないのである。競争相手と遜色ないものを出す限りは。Microsoftは一定の影響力を持つはずで、だからこそ我が社はMicrosoftのフォーマットをいかにサポートし、Microsoftのサーバープラットフォームで我が社のアプライアンスが使えるようにするにはどうすればよいか既に検討を始めている」

オープンソースにおける仮想化

Microsoftの市場参入は競争激化の表れだろうが、Adamsは、オープンソースも引き続き存在感を示すと見ている。rPathはFOSS(フリーオープンソースソフトウェア)の仮想アプライアンスを独自に増やしているからだ。しかし、rPathのFOSS重視策は実は同社特有の「オープンソース系譜」に由来するという。同社には、創設者であるErik Troan、Michael K、Johnson、Matt Wilsonを初めとして多数のRed Hat開拓者がいるからだ。

AdamsはFOSSの世界で仮想化を先導するXenSourceを市場拡大の中心的存在と評価している。「保守層に別の方法があることを納得させた点が素晴らしい。VMware以外に検討すべきものがなかったころ、保守的な買い手は、市場動向を見ると称してすぐ様子見に走ったものだ。そんな中でXenSourceは信頼できる選択肢を提供した。草の根の開発者の意識を高める上でXenSourceが果たした役割は大きい」

ビジネス戦略の一環として、rPathは同社のrBuilder OnlineツールをFOSSプロジェクトに提供している。Adamsによれば、rBuilderを使用して活動しているプロジェクトの約半数が既に仮想版を生み出しているという。VOIPなど、一部のプロジェクトは特定のハードウェアのタイミングに関係するために対応していないが、2007年には仮想化の可能性をさらに追求してくれるものと期待しているという。

「実際、我々は開発者のコミュニティに至れり尽くせりの対応をしてきた。それで仮想アプリケーションが簡単に作り出せるようになったのだから、次はコミュニティの出番だ」とAdamsは言う。仮想化はエンドユーザーにとって「Linuxの複雑さを押さえ込むもの」、システム管理者にとって管理を容易にするもの、そのための有効なツールになると彼は見ている。

今後の動向

仮想アプライアンスのアイデアがプロプライエタリとFOSSの両開発サイドに根付きつつある中で、rPathは既に次の手だてを考えている。

現在、仮想レイヤのコストパフォーマンスが採用を踏み止まらせる要因となっているが、Adamsはこのハンディキャップも2007年の終わりまでには取り除かれると見ている。新たにリリースされるWindows Vistaのハードウェア要件が厳しくなったことも問題解決にプラスに作用するが、仮想化技術自体の改良と革新が状況改善の主な要因になると言うのだ。この改善はさまざまなプラットフォームの間の協力と、ハードウェアベンダの支援の下で進められ、ハードとソフトの分離によってドライバやメモリの要件に関係する従来の多くの問題が解決するものと期待している。

2007年の終わりまでにもっと見えてくると思われるもう1つの動きは、仮想アプライアンスの管理に関する問題だという。仮想アプライアンスの利用が広がると「通常の需給サイクルの中で誰もがもっとソフトウェアを消費するようになる」という。そのとき問題になるのは「仮想アプライアンスのメンテナンス性、管理可能性を高めるためにどんな特性が求められるか」という点だ。

従来、ソフトウェアベンダは製品の管理を顧客の問題と考えてきた。しかし、Adamsは、仮想化が根を下ろすとともにベンダがマネージドサービスの提供を始めると見ている。「仮想アプライアンスに何ができるか、1つの仮説として、エンドユーザーをITスタックやオペレーティングシステムの問題などから解放することが挙げられる。ソフトウェアは本来ブラックボックスであって、すべて込みで提供するから責任や管理が転嫁されるのだ。今や、もしソフトウェアベンダだったら何をする必要があるか、といった質問をせざるを得なくなった」

Adamsは、いずれ組み込みシステムが仮想化の役どころを担う日が来ると認める。「だが2007年のうちは、ゲームの大部分が従来の企業の内部で進行すると思う。その活動によって問題点が出尽くし、仮想化は誰もが簡単に使えるものとなるだろう」

「2007年はとてもおもしろい年になる」というのが彼の結論である。

Bruce Byfieldは、コンピュータ専門誌記者としてNewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿している。

NewsForge.com 原文