FSF、MMORPGキャンペーンを最優先課題に設定

Free Software Foundation(FSF)はFree Ryzom Campaignを今後のフリーソフトウェア運動にとっての最優先プロジェクトと位置づけ、同キャンペーンに60,000ドル拠出することを明らかにした。同キャンペーンは、破産したソフトウェア開発会社が開発したMMORPG(Massively Multiplayer Online Roleplaying Game)Ryzomのコードを、同社の破産手続きの際に買い取ろうと活動している。

Ryzomは、最近破産を申請した小さなソフトウェア会社Nevrax SARL(フランス)が開発していたサイエンス・ファンタジー・ゲームだ。開発ライブラリーの一部はGNU General Public Licenseでリリースされ、ゲームの少なくとも1つのバージョンはデュアル・ライセンスされている。しかし、FSFのシステム管理者Justin Baughによると、このライブラリーは不完全で、このところGPL版のゲーム開発も滞っていたという。同ゲームの利用者は、現在、実数で3,500名。World of Warcraft(Blizzard)やEverQuest(Sony Online Entertainment)、Star Wars Galaxies(同)といった大手プロプライエタリMMORPGに比べると少ない。

Free Ryzom Campaignは、メンバー自身の説明によると、Nevraxの前従業員、ゲーマー、フリーソフトウェア派の人たちから成るグループで、12月19日までに20,000ユーロの寄付を募り、破産手続きの際に、Ryzomのコード、開発エンジン、図版の権利を買い取ろうと活動している。買い取れれば、Debian Social Contractと類似の原則によるフリーソフトウェア・プロジェクトにする計画だ。

Baughによると、同キャンペーンのコーディネーターXavier Antoviaqueは、Free Ryzomの著作権をFSFに譲渡するにやぶさかでないと述べたという。

今回の支援について、FSFのエグゼクティブ・ディレクターPeter Brownは、次のように述べている。「これは、MMORPGをフリーソフトウェア運動に取り込むまたとない機会です。このゲームに関する著作権と特許はすべてNevraxが所有していますから、さらに権利を取得する必要がありません。これがうまくいけば、このエンジンと既存コンテンツから多くのフリー・ゲームが生まれるでしょう」

そして、フリーソフトウェアの弱点の一つがゲームにあることを認め、次のように説明する。「フリーソフトウェアを使わない理由はと言えば、大きな理由の一つは常にゲームでした。しかし、この分野は非常にビジネス性が強く、フリーソフトウェア・コミュニティーが資金を提供するのは極めて難しい。私たちはいつも必死で(ゲームの)遅れを追いかけ、そして皆さんはあらゆる種類の面白いゲームをフリーソフトウェアで手に入れている。そうした状況が変わるのです。これは、そうした現状から大きく飛躍するチャンスなのです」

FSFはその他の優先プロジェクトとしてフリー・ビデオカード・ドライバーやBIOSの開発などを挙げているが、それに比べると、ゲーム買収の重要性は低いように思える。しかし、「それは違います。私たちのコミュニティーにもゲーマーは大勢いますが、(ゲームで遊ぶには)プロプライエタリのソフトウェアやエミュレーターを使わなければなりません。私たちは、すべてでフリーソフトウェアが使えるようにしたいのです」とBrownは反論する。

FSFがFree Ryzom Campaignに関心を寄せるのは、ただそれだけのためではない。Brownによれば、今回の支援は長期的戦略に基づくものだ。GNU/Linuxにはグラフィック・カード用のフリー3Dドライバーが不足している。しかし、そうしたドライバーを必要とするFree Ryzomなどのゲームがあれば、ドライバーへの需要が高まり、「ビデオカードのメーカーに圧力がかかる」だろう。また、そうしたゲームが広がれば「3-Dドライバーのテストベッド」も生まれるだろうというのだ。こうした観点からすれば、Free Ryzom Campaignの成功は、単にゲーマーのためだけではなく、フリーソフトウェア全体にとって重要なものとなるだろう。

Free Ryzom Campaignの支援はWebサイトから。ただし、実際の送金は落札後だ。

Bruce Byfield、コンピュータ・ジャーナリスト。NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。

NewsForge.com 原文