Funambolのビジネスを生かすオープンソース・ソフトウェア

オープンソースのJavaベースSyncMLアプリケーションFunambolは、この9月のv3.0リリースで大きな節目を迎えた。Funambolは、グループウェアデバイスやモバイルデバイスで予定表やアドレス帳を同期するソフトウェアである。SourceForge.netの1プロジェクトと共に、Sync4jとして歩みを始めてから3年以上になる。ささやかな初心者の集まりだったFunambolは、今や有償のサポート契約から収益を得る企業にまでなったが、いまなおソフトウェアをGPLのもとで提供する。

同社で一般可用性リリースと呼ばれるものが、Windows版およびLinux版のサーバ・バンドルの形式でサイトからダウンロードできる。また、ネイティブでSyncMLをサポートしない各種のモバイルデバイス(BlackBerry、iPod、Palm、Windows Mobileなどのシステム)に対応したクライアント・モジュールも、サイトからのダウンロードで入手できる。同社は、特定のデバイスがSyncMLに対応しているかどうかを確認できるように、SyncML機能内蔵デバイスのリストを公開している。

サーバ・バンドルは、3つの主要コンポーネント ─ Funambol Data Synchronization Server、Funambol Administration Tool、Funambol Inbox Listener ─ で構成される。DS Serverは予定表、連絡先、ToDoデータを携帯電話クライアントと同期し、Inbox Listenerは”常にオン”の電子メール転送サーバとして動作し、Administration Toolはこの2つを設定する機能を備える。

DS ServerとInbox ListenerはJ2EEアプリケーションなので、使用するにはApache TomcatのようなJ2EE対応アプリケーションサーバとANSI SQL準拠リレーショナル・データベースが必要となる。また、サーバ・バンドルには2つのデモ・アプリケーションも付属する。

Tomcatを用意できない場合、テスト用のサインアップを行ってFunambolの招待専用デモ・ポータルを使用すれば、Funambolの同期サービスを試用できる。特定のデバイスがテスト済みかどうかを調べるには、Funambol Phone Sniperプログラムにサインアップする必要がある。電子メールで送付される指示に従って、予定表や連絡先データの同期の基本機能をテストできる。

現在、BlackBerryキラーとして盛んに宣言されている”プッシュ・メール”機能は、Windows Mobileデバイスでしか使用できない。Funambolのマーケティング担当副社長Hal Stegerは、プッシュ・メールの動作にはSyncML version 1.2サポートが必要だと説明する。このバージョンをサポートしたWindows Mobile以外のデバイスは少ないのが現状だ。データ同期については、SyncML 1.1仕様に含まれているため、多くのデバイスで使用できる。

クライアント・ソフトウェアを携帯電話にダウンロードする必要があるかどうかは、その電話機でSyncMLがネイティブでサポートされているかで決まる。SyncML対応の電話機は多く、Nokia、Motorola、Samsung、Sony Ericssonのほとんどのモデルが該当する。それ以外のデバイスには、Funambolのクライアント・ソフトウェア・パッケージをダウンロードする必要がある。

電話機以外のデバイスとプラットフォーム

もちろんSyncMLの真価は、複数のデバイスとプラットフォームを同期できることにある。この目的で、OutlookやExchangeなどのWindowsアプリケーション用のコネクタがFunambolから提供されている。

幸い、Windows以外のユーザは見放されたわけではない。DS Server APIは、関連ドキュメントと共にフリーで入手できる。関連するコミュニティ・プロジェクトのリンクを集めたページが、Funambolから提供されている。現在のバッチはほとんどが前バージョン(Sync4j 2.3)向けに書かれたものだが、 Evolution、Mozilla、Kolab、GroupDAV、SugarCRMなどのオープンソース・アプリケーション対応のコネクタと汎用のLDAPサーバ・サポートも含まれている。

さらに興味深い試みが、FunambolのCode Sniperプログラムである。このキャンペーンでは、最新バージョンのFunambolに対応するコネクタを作成した開発者に$1,000~3,000の賞金が贈られる。賞金を獲得するには、提案書をFunambolに提出し、作品をフリーソフトウェアとしてライセンス供与することに同意する必要がある。

これまでにプログラムには10件の応募があった。同社が公開する”指名手配リスト”から数件が選ばれたほかは、独自の提案である。提案を承認する前に、Funambolは、提案元の開発者と共同でデザイン要件の詳細な文書を作成する。ときには、この過程が数回繰り返される場合もある。承認された提案のデザイン要件文書は、Code Snipeページで一般に公開される。

どのような提案が歓迎されるのだろうか。Stegerはこう言っている。「妥当な人数のFunambol開発者とユーザに恩恵があると弊社が判断した提案には、前向きに対応します。原則として、大勢が好感すると思われる提案で、優先度が中程度より高いものは承認します」

「Funambolを使ってモバイルのアプリケーションやサービスを開発するノウハウを得られるというのが、ボーナスです。これは、こういった開発者と弊社の両方にとってメリットです。場合によっては、開発者が本当にのめり込んで、かなりのところまで弊社にその能力を提供してくれることも、ないとは言い切れないでしょう。少なくとも、Funambolを他のプロジェクトでも使用してもらえる可能性はあります。そうなれば、開発者、弊社、コミュニティの三者はみな勝者です」

ライセンス形態

FunambolのWebサイトで”Open Source Social Contract“を利用できることは、同社のフリーソフトウェア・コミュニティへの肩入れを鮮明に示す事実だ。すべてのFunambolツールは、GPLv2および同社独自のHonest Public License(HPL)のもとにライセンスされる。HPLはGPLv2を本体とし、ソフトウェア・サービスの”ASPの抜け穴”を閉じるための条項を追加したものだ。

追加条項の文言は、GPLv3のドラフト版から借用された。Funambol CEOのFabrizio Capobiancoは、個人ブログの中で「”Honest(正直)”という名称には、GPLのような他のライセンスが不正直だという意味はまったくありません。実際には、その正反対です。ですが、一部の人はGPLの合法的な抜け穴を利用し、GPLの精神を台無しにしています」と書いている。

Stegerによると、同社はHPLに関してFree Software Foundationと非公式な意見交換を行ってきたが、GPLv3ドラフト・プロセスへの正式な参加は行っていない。「ドラフトから借用した条項がGPLv3に残れば、弊社はGPLv3を採用するでしょう。もちろん、GPLv3によってASPの抜け穴が閉じられるという条件で。HPLの最大の目的がそれでしたからね」

まとめ

Code Sniperプログラムには詳細な要求事項があるため、今使っている電話機とフリーのデスクトップ・ソフトウェア・アプリケーション間でPIMデータを同期するコネクタが提供されるまで、しばらくかかると予想される。同様に、プッシュ・メールが携帯デバイスで共通して使えるようになるまでは、超えるべきハードルがいくつもある。

とはいえ、Funambolのこれまでの努力は感動的であり、同社のフリーPIM同期サーバが高い可用性を達成したことは大きな勝利である。携帯電話市場の閉鎖性とメーカー支配の強さを考えると、特にこの成果は意義深い。

NewsForge.com 原文