Open Shakespeare、狙いは大詩人のフリー化
プロジェクトは、オープン・ナレッジ(open knowledge)の推進と展開を使命とするOpen Knowledge Foundationの後援のもとに発足した。
プロジェクト・リーダーのRufus Pollock氏は「Free Software FoundationとCreative Commonsとは、さまざまなチャンネルを通じて連絡を取り合っていますが、現時点ではどちらとも共同で何かに取り組んでいるわけではありません」と語る。氏はCreative Commons UKチームのメンバーでもある。
中心的な貢献者Jo Walsh氏、Tom Chance氏と共に、Pollock氏は、Open Shakespeareを”オープン・ナレッジ”という概念の完璧なショーケースにすることを目指している。このような作品群をパッケージ化して提供する方法と、APIとソフトウェアがそういった作品群を扱ううえで便利なことを示す、良質の教育学上の実例にしようというのである。
「Wikipediaのような、本当に驚くべき偉大な例があります」とPollock氏は言うが、一方で、完成された自己完結型のオープンな、ソフトウェア的な意味での”パッケージ”を形成する単独の産物はまだ存在しないことも指摘する。ウィリアム・シェークスピアの作品は、このような産物を具体的に実現するにはぴったりの対象だと氏は考えた。テキストベースであり、作品の主要部分にはほとんど誰もが親しんでいる。そのうえ、安心してパブリック・ドメインにできるほど古い。
フリーのシェークスピアの入手
これまで、ネットのシェークスピアというアイディアに多くの人が取り組んできた。大詩人のオンライン出版は131篇を下らないが、全作品をフリーの配布物として入手することはまた別の問題である。
この探索の最初の一歩が向かう場所は、明らかにProject Gutenbergだ。ここにはシェークスピアの作品が大量にあるが、調べてみると、その大半はThe Library of the FutureおよびThe Complete Works of William ShakespeareのCD-ROMから収録された非フリーの作品であり、World Libraryが著作権を保有していることがわかった。
さらにややこしいことに、Open Source Shakespeareなる、Open Shakespeareとは縁もゆかりもない別のサイトがあるが、このサイトで公開されているテキストとソフトウェアをなんらかのフリーライセンスでダウンロードすることはできないようだった。
Project Gutenbergでは、電子書籍のシェークスピア作品に混じってパブリック・ドメイン版も提供されている。Pollock氏はこれを利用できた。
「どれがパブリック・ドメイン版でどれがそうではないか、しらみつぶしに調べないといけません。それから、Gutenbergが付け加えたものをすべて削除する必要もあります。そうしないと、Gutenbergライセンスに縛られてしまいますから」
プロジェクトでは、パブリック・ドメインのMoby版も利用された。まだ足りないのは、原典のイメージスキャンである。シェークスピア戯曲の最初の全集(現在”First Folio”として知られる)は、書き写しの形で広く複写され、インターネットで簡単に参照できるが、このスキャンはフリーでもなければオープンでもない。
シェークスピア作品の年代を考えると、自動的にパブリック・ドメインになると思うかもしれない。Pollock氏によると、事情は複雑である。少なくとも、ここでは3つの要素がからんでくる。第一に、誰でもパブリック・ドメインの作品を入手し、加工し、独自の製品としてリリースできる。第二に、旧作が初めて発行される場合、それはまだ著作権の保護下にある可能性が高い。第三に、パブリック・ドメイン作品のスキャンは米国国外、特にヨーロッパにおいては著作権で保護される可能性がある。
今後の課題
現在、Open Shakespeareはデモ版をオンラインに配置している。このページでは、テキストをさまざまな形式で表示したりダウンロードしたりできる。また、各版の違いを突き合わせて比較することや、シェークスピアのソネットに現れる言葉を検索することもできる。
Pollock氏はケンブリッジ大学経済学部の博士課程に在籍するが、これまでのところ大学関係者はこのプロジェクトにあまり関心を向けていないという。もっとも、まだプロジェクトはこういったコネクションを探っているわけではない。「改訂版を準備している研究者に相談し、いろいろとヒントをもらいましたが、まだ実際には反映していません。大学関係者が参加してくれると本当にうれしいのですが。特に、脚注の”オープン”化作業に」
事実、戯曲の頭注や脚注などのフリーの注釈や補遺が欠けていることは、おそらくチームの最大の障害物である。しかし、彼らがこの障害物への対処と印刷用の見栄えのよいバージョンの作成を計画している間に、誰かがプロジェクトのソースを入手してもっと優れた成果を挙げる可能性があることを、Pollock氏は認める。それに異を唱えるつもりはまったくないという。
「別のやり方で、もっとうまくやる人が現れるのは間違いありません。それがオープン性の大きな利点だと思いますよ。同じ問題に多くの人が取り組めるようにするのがオープン性なのですから」
NewsForge.com 原文