仮想化で既存システムの延命を図れ!社内で培ったVMware仮想インフラ構築のノウハウをサービスとして提供──NTTデータの仮想化戦略

NTTデータとVMwareは今年7月、仮想化ソフトウェア「VMware」製品のディストリビュータ契約およびコンサルティング・パートナー契約を締結し、同契約の下、NTTデータはVMware製品の販売から導入、保守/運用までをサポートする包括的なサービスを提供開始した。その背景には、NTTデータ社内におけるVMware導入によるノウハウの蓄積があった。本稿では、NTTデータの齋藤洋氏と田代健大郎氏に、VMware仮想インフラの構築によってもたらされるメリットやその有効な活用法などについて聞いた。

開発環境の仮想化で年間コストを約500万円削減

──NTTデータがVMware製品を提供するに至った背景を聞かせてほしい。

齋藤氏:個々の仮想マシンを「カプセル化」するVMwareのサーバ仮想化ソフトウェア「VMware ESX Server」の機能については、以前から当社のコンテンツ管理を担当していたスタッフが関心を寄せていた。というのも、VMware ESX Serverをインストールした物理マシン上では、複数の仮想マシンを動かし、なおかつ、仮想マシンの動作環境は1つのファイルとして扱うことができる。それにより、サーバ環境の構築や別のマシンへの移動、バックアップ/リストア、障害発生時の復旧といった、これまで非常に手間がかかっていた作業をファイルのコピー、削除、移動と同等の容易な操作で行えるようになるからだ。そのようなVMware ESX Serverの特徴を生かし、マシン環境もコンテンツの1つとして管理できないかという観点から、NTTデータでは2001年から社内システムへの適用ならびに検証に向けた研究が開始された。

 その後、VMware製品には多数の機能が追加され、サーバ統合をはじめとするさまざまなソリューションを展開できるようになったことを受けて、2006年7月にはVMwareと仮想化ソリューションの提供で正式にパートナー契約を締結し、今日では、VMware製品のライセンス販売から導入コンサルティング、開発、保守、運用、トレーニングといった各種サービスを提供している。

──社内システムへの適用では、具体的にどのようなことが行われたのか。

田代氏:一例としては、NTTデータがパッケージ・ソフトウェアとして展開しているサイバー・テロ対策向けの意思決定支援システム「Secure VISTA」の開発環境にVMware ESX Serverを導入したことが挙げられる。

 このシステムの開発では、複数バージョンのさまざまなプラットフォーム環境を用意する必要があり、これまで多大なコストがかかっていた。また、プラットフォーム環境を入れ替える際には、マシンごとに再インストールを行わなければならず、手間と時間も要していた。そこで、基本となるプラットフォーム環境をVMware ESX Serverを使って仮想化し、それらをファイル・サーバに格納して、必要に応じて物理マシンに実装するという方法をとった。これにより、プラットフォーム環境のセットアップや切り替えが容易化され、物理マシンを必要台数導入する場合と比べて、年間コストを約500万円削減することができた。

社内に散在した営業支援ポータルを1台のサーバに統合

──昨今の仮想化のトレンドとなっているサーバ統合に向けた活用はあったか。

田代氏:社内の4サイトに散在していた営業支援ポータルをVMwareの仮想化ソリューションを活用し、1台のサーバに統合した例がある。

 この背景には、データセンター内の設置スペース不足という問題があった。もともと営業支援ポータルを運用していたサーバが老朽化したため、新規サーバの購入を検討したが、既存台数と同数の新規サーバを設置するラック・スペースが残っていなかった。また、既存サーバを最新性能を備える新規サーバにそのまま置き換えたのでは、処理量に対してオーバー・スペックとなり、リソースに大幅な無駄が生じてしまうという懸念もあった。そこで、VMware ESX Serverを導入したところ、Intel Xeon MPプロセッサ(2.80GHz/533MHz-1MB)を搭載した1台の新規サーバ上に複数の仮想マシンを展開し、開発から運用まですべてをまかなえるようになった。こうしてXeon MPプロセッサの高いパフォーマンスを無駄なく利用することにより、多数の物理サーバを統合することができた。加えて、本来必要だったラック・スペースをはじめ、ケーブルや電力消費量などもそれぞれ4分の1程度にまで削減された。

齋藤氏:補足すると、この営業支援ポータルのサーバ仮想化計画には、ハードウェアの陳腐化や老朽化を抱えたシステムを延命するというねらいもあった。既存の営業支援ポータルは旧世代のOS上で稼働していたため、新規サーバに移行するには、新しいOS上で各種アプリケーションの動作検証や手直しなどを行わなければならなかったが、VMware ESX Serverを導入したことで、旧OS上のアプリケーションを仮想マシン上でそのまま稼働させることができた。すなわち、陳腐化/老朽化したハードウェア上で稼働していたシステムを、そのまま新しいハードウェアへ移行することができたわけだ。もちろん、別の仮想マシン上で最新の64ビットOSを稼働させることも可能であり、アプリケーションの運用と並行しながら新OSへの移行を進められるというメリットもある。さらに、VMwareで統合したサーバ環境を二重化することで冗長化を持たせて、障害発生時のダウン・タイムを低減することも実現した。

 サーバ移行にあたって同様の問題を抱えるユーザー企業は予想以上に多い。NTTデータでは今後、社内での実績を基に開発した、VMware製品による「アプリケーション延命ソリューション」や「冗長化ソリューション」をはじめとする各種ソリューションを広く提供していきたいと考えている。

──NTTデータの仮想化ビジネス戦略に関する今後の展望を伺いたい。

齋藤氏:VMware製品をエンタープライズ・システムに適用するにあたって、国内では技術者がまだまだ不足している。そこでNTTデータが有する“強み”を発揮していきたい。例えば、当社は「VMware認定プロフェッショナル」の資格を持つ技術者を多数擁しているほか、これまでに社内の200以上の部署でVMware製品を活用してきたという実績、社外への提案などで蓄積してきた技術ノウハウがある。

 今後は、IntelのXeon MPプロセッサに実装された仮想化機能「インテル バーチャライゼーション・テクノロジー(VT)」とVMware製品との組み合わせによって得られる仮想化環境の運用効率の向上というメリットを最大限に生かしつつ、NTTデータとしても仮想化プラットフォームの堅牢性やセキュリティのさらなる向上を追求していく方針だ。

 また、仮想化関連のノウハウや技術力をベースに、社内の情報システム・インフラ構築に関する各専門技術部隊と連携しながら、マルチベンダーの立場で顧客にとって最良のソリューションを提案していく。具体的には、IAサーバだけでなく、ネットワーク・ストレージ、クラスタ・ソフトウェアといった周辺環境と組み合わせたシステム構成をメニュー化し、導入コンサルティングから開発、保守・運用までトータルにサポートする。さらに、VMwareの販売代理店となっているNTTデータのグループ会社とも連携し、首都圏以外の地域についても、積極的にライセンス販売、導入支援などを実施しながら、今後3年間で50億円の売上げを目指していきたい。

提供:Computerworld.jp