Microsoft Research、開発中の未来技術を一部公開

 米Microsoftの研究部門であるMicrosoft Research(MSR)は9月26日、設立15周年を記念したイベントにおいて、ジェスチャーによる入力技術など、開発中の未来技術を一部公開した。

 MSRは現在、世界5カ所に研究施設を有し、約700名の研究者を抱えている。コンピュータ科学者だけではなく、心理学者や社会学者、人類学者、医師といった人々が研究に従事し、未来の実用化に向けた最新技術の開発を進めている。研究対象は、20分野55領域にわたり、データベースやセキュリティ、モバイル/ワイヤレス、ソーシャル・インタラクション/コラボレーション、グラフィック、応用技術、次世代ユーザー・インタフェースなどが含まれている。今でもMSRで開発された技術は、Windows Serverから「XBox 360」まで、さまざまな製品に実装されているという。

 今回のイベントで公開された技術の1つに、「TouchLight」と呼ばれる新インタフェース技術がある。これは、マウスやキーボードの代わりにジェスチャーによる入力を可能とするもので、MSRの研究者、アンディ・ウィルソン氏により開発された。同氏は、プロジェクタを用いてテーブルの表面に白い“デスクトップ”を投影し、そこに表示されたゴムまりなどのオブジェクトを両手で触るような動作で操作してみせた。次に同氏は、地図を表示させ、それを手で動かすような動作で拡大・縮小、回転といった操作を行った。

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ジェスチャーによる入力を可能とする新たなインタフェース技術「TouchLight」

 続けてウィルソン氏は、1枚の紙を置くだけで、それが映像を見るためのスクリーンになるというデモや、カメラ付き携帯電話を置くだけで端末内の写真をコンピュータに自動転送するというデモも行った。携帯電話とコンピュータの通信には、Bluetoothに似た「Blue Rendezvous」と呼ばれる技術が利用されており、端末を持ち上げるだけで接続を解除できるという。同氏は、これらの技術はビデオ会議システムや強化現実(Augmented Reality:AG)などに応用される可能性があると話した。

 検索技術をベースにユーザーの記憶能力の強化を支援する「Life Browser」のデモも行われた。この技術では、ユーザーのPCに保存されている音楽や映像、写真、テキストといったデータを使ってタイムラインを組み立てる。スライド・バーを動かしてタイムラインの詳細度を決定できるほか、最近編集されたデータの情報や、データがアクセスされた順番などをチェックすることも可能だ。

 「Visual Studio」のスクロール・バーの代替となるソフトウェア「Code Thumbnails」も公開された。これは、既存のスクロール・バーに比べ、より視覚的に操作しやすいように配慮されている。具体的には、サムネイル化されたコードの一部をクリックしてファイル内を移動できるほか、ファイル全体を検索し、特定のメソッドが記述された場所を把握することも可能だ。そのほかにも、終了したものを含めたすべてのプロジェクトを表示するダッシュボード「FastDash」、メタデータを利用して検索結果の絞り込みや携帯電話の入力負荷の軽減を行う「FaThumb」が、新たな視覚技術として紹介された。

 公開された技術のすべてが、Microsoft製品としてデビューするわけではないが、複数の写真データを1つのパノラマ写真に合成するソフトウェアの最初のバージョンが、「Photosynth」という名称で数カ月以内にリリースされる予定だという。Microsoftは、2月に行ったシードラゴン・ソフトウェアの買収によって、この技術を取得した。

(ジョン・フォンタナ/Network World 米国版)

米Microsoft Research
http://research.microsoft.com/

提供:Computerworld.jp