「優秀なIT部門」を維持するために──激しい雇用競争の中ですぐれた人材を探し、確保する方法

 米国経済の回復基調が持続し、求人市場の競争が激化する中で、自社のIT戦略に大きく貢献できる、すぐれた能力を持った人材を見つけ、確保し続けることはますます困難になっている。今年7月、管理職クラスに籍を置く300名のうち、IT部門の責任者を対象に実施した調査によると、31%の企業が今後数カ月以内にIT管理職を外部から雇用する予定を立てているという。

 この調査は、米国の管理職スカウト企業ランドール・ジェームス・モンロー(本社:ダラス)が定期的に行っているものだ。同社のCEO(最高経営責任者)であるランドール・ニール氏は、「31%という数値は、これまでの調査と比べても非常に高いものとなった」とコメントしている。

 時には優秀な管理職を外部から得ながら、一定のレベルを保ったチームとしてIT部門を機能させ続けていくことは、今日の厳しい求人市場においては至難の業だ、とニール氏は指摘する。優秀なIT管理職たちは、現在勤めている企業から重用され、高い報酬を得ているため、大半は転職に目が向かないというのだ。

 「とはいえ、好景気の最中にも優秀な人材を引き抜き、自社で雇用するためにCIO(最高情報責任者)がとることのできる有効な手段は存在する」──ニール氏は、9月18日に開催された「Society for Information Management SIMposium 2006」カンファレンスに出席した他のパネリストとともに、そう話した。

 パネリストの1人である、パートナーズ・ヘルスケア・システムの副CIO、マリー・C・フィンリー氏(本社:ボストン)は、「キャリア・パスを明確にして、優秀な人材は部署内での昇進が望めることを示すといった取り組みを通じてIT部門スタッフの成長を促す。そして、スタッフに対して、CIOが彼らとの信頼関係を重視していることをアピールする。こうして自社のIT部門の魅力を増していくことが、ゆくゆくは優秀な人材の雇用につながる」と説明した。

 フィンリー氏自身も2年前に、上司との話し合いの中でその必要性を痛感したことから、同社のIT部門内でキャリアを積んでいくためのプログラムを始動させたという。同氏はこのプログラムを構築していく過程を次のように振り返った。「キャリア・トレーニングへの投資額が不足していたことを悟った。そうした活動に予算を割くために努力してきたのに、資金が活用されていないことを思い知らされて、強いショックを受けた」

 プログラムの開始以降、フィンリー氏の会社では、IT部門スタッフ全員に毎年最低40時間のトレーニングを受けることを義務づけている。IT管理職はこのトレーニングにおいて、任意に選択した科目を受講するだけでなく、幹部の経営会議を傍聴する決まりになっているという。

 やはりダラスに本社のある管理職スカウト企業ピアスン・パートナーズ・インターナショナルでバイスプレジデントを務めるレニー・ベイカー・アーリントン氏は、IT組織で長年の経験を積み、すぐれた功績を残した人々の資質を適切に評価できるようにすることが、社外からIT管理職を招く際の評価基準を決める唯一の方法だと述べている。

 また、ニール氏は、一流のIT管理職を対象とした求人市場が縮小し続けている現状においては、「まだまだ働ける力を秘めた」経験豊かな年配のITマネジャーを探すのが賢明だと、会場のCIOたちにアドバイスした。「人口構造が変わりつつあることもあって、引退を先延ばしにする優秀なベテランが増えている」とニール氏。

 一方、国際的な管理職スカウト企業であるスペンサー・スチュアートの情報統括/プラクティス・コンサルタントのスティーブ・ケンドリック氏は、CIOが人材登用にかかわる場合、スカウトを成功させるのに必要な時間と労力を惜しんではならないと話す。また、2次面接などでIT管理職候補を再度来社させるときは、採用に関する決定権を持つ上級幹部を必ず同席させることも重要だと、ケンドリック氏は強調した。

 そして、新規雇用と同時に、自社にとどまっていてもらいたい優秀な人材のフォローにも気を配らねばならない。フィンリー氏は、「CIOは自社の従業員に対して、どのような昇進待遇を与え、あるいはどのような可能性を示しているのか熟慮すべきだ」と締めくくった。

(トーマス・ホフマン/Computerworld米国版)

提供:Computerworld.jp