Linux Libertine Open FontsからTimes Romanに代わるフリーフォントが登場
同プロジェクトでは、現在、およそ10人がバグレポート、Unicodeサポート、LaTexへの移植に携わっている。しかし、Gentiumなど、ほかのフリーフォント・プロジェクトとは異なり、Linux Libertineのデザイン担当者は今もPoll一人だ。「デザインは、コラボレーションが難しいのです。それに、最大の関係者にはフォント・デザインの専門知識がありません」
Pollは、デザインにFontForge(旧称PfaEdit)を利用している。これは広く使われているフリーフォント・エディターだが、サイズ指定の構造がTrueTypeではなくPostScriptに準拠している。また、TrueType形式へのエクスポートはヒンティング(字形をラスター化する際に行う補正)をサポートしていない。こうした欠点が幾つかあるものの、Pollは自分の目的にはFontForgeで十分だという。それどころか、「FontForgeに問題があっても、作者に連絡できますからね」と述べ、そうした意見交換は関連するフリーソフトウェア・プロジェクト間の協力の一例だと指摘した。
Linux Libertine & Timesタイプフェース — クリックすると大きな写真が見られます |
Linux LibertineはTimes Romanとそのオンライン用タイプフェースTimes New Romanの代替を目指しているが、Pollに言わせると、Times New RomanはTimes Romanの単なる類似品ではない。Timesは、元来、紙面用にデザインされたもので、「小さくても読みやすいように字形が太めに誇張されています」。一方、Times New Romanは画面への表示を前提にデザインされており、「無機的で単調な」形に単純化されているという。
これに対して、Linux Libertineは汎用印刷用フォントとしてデザインされている。「DejaVuなど、画面用のシステム・フォントはすでに沢山あります。しかし、印刷用のオープンソース・フォントはほとんどありません」。その結果、幅はTimesとTimes New Romanとほぼ同じだが、さまざまな工夫が施されたフォントができあがった。目立つ特徴は3つある。セリフ(文字の端点にある短い線)はどちらよりも屈曲が大きく、Timesよりは扁平で丸みがあり、Time New Romanよりは細く多彩だ。さらに、小文字のeやcの底部など、曲線的な字体の一部は従来のTimes系よりも短くなっている。こうしたさまざまな工夫が施された結果、画面表示用としてはTimes New Romanよりも劣りTimesより色が少し薄いが、多くの印刷には極めて適した仕上がりになった。
「Times New Romanは、この業界ではよくある例の一つだと思います。喩えて言えば、主要農作物の新品種が遺伝子操作で作出され、ほかの品種を駆逐してしまったというようなものです」。この喩えで言うと、Linux Libertineは「有機農業への寄与」、もう少しわかりやすく丁寧に言えば、汎用フォントの世界での同様のニーズに応えるものだそうだ。
Linux Libertineには、現在、ラテン文字、ギリシア文字、キリル文字とその派生のグリフが1,750以上あり、合字やカーニング・テーブルも用意されている。イタリックは未完だが、ローマン(通常ウェート)、ボールド、下線付きは完成。スモールキャップは開発中。グロテスク(サンセリフ=セリフ(ひげ飾り)なし)フォントは計画はされているが、まだない。
「アラビア語・中国語・日本語などのコード・ページも重要ですが、今は、着手の予定はありません。というのは、私にはそうした言語に関する文化的な知識がないからです。これらのタイポグラフィーについて専門知識を持つ人が行うべきでしょう」
Linux Libertineは、SUSE、Debian、Fedoraなどの多くのディストリビューションに同梱されているほか、同サイトからTrueTypeフォントとソースコードを入手することもできる。品質の高いフリーフォントは急速に増えているが、まだ少なく欠落も多い。Linux Libertineは、そうした欠落を埋める高品質汎用タイプフェースの一つである。
Bruce Byfieldは、研修コースの開発者でありインストラクター。コンピュータ・ジャーナリストでもあり、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。
NewsForge.com 原文