早期導入ユーザーに見るサーバ仮想化のメリットと教訓
「同業者のほとんどはわれわれのことをどうかしていると思っていたに違いない」と、当時を振り返るグズマク氏は、VMware製品を早期に採用した理由を次のように説明する。
「われわれは当時の企業の多くがそうであったように、x86サーバをたくさん運用していたが、その使用率は5〜10%程度にすぎなかった。われわれは仮想化に関するさまざまな論文を研究し、これらのサーバを仮想化することで得られるメリットに注目した」
仮想化の可能性を確信したガネットは2002年、VMwareの「VMware ESX Server」の試験導入を開始し、仮想化を活用する企業の草分けとなった。ガネットの判断は正しかったと言える。現在、同社は数十台の物理サーバ上で400以上もの仮想マシンを運用しているからだ。
クズマク氏は、x86プラットフォームが多数のワークロードをサポートできるとは必ずしも確信できていなかったが、VMwareの導入がギャンブルだったとは思わない。
「われわれは、新しい技術だといって決して安易に飛びついたわけではない。きちんとした手順を踏んで導入の検討を進め、どのようなワークロードが適しているか、あるいは適していないかについて継続的に検討した」
ガネットは、VMwareから管理ツールが提供されるを待ってから、ESX Serverの本格導入に着手した。クズマク氏は2003年春に「VMware VirtualCenter」という管理ツールのベータ・テストを開始し、ESX Serverの本番運用に移行した。
VirtualCenterは、単一のインタフェースを使って仮想マシンを展開、管理するためのツールで、稼働中の仮想サーバを物理サーバ間で、処理を中断させることなしに移動できるVMotionを搭載する。VirtualCenterは2003年秋に一般提供が開始されている。
クズマク氏は、「VirtualCenterとVMotionがなくても、VMwareユーザーは、シングル/デュアル・プロセッサ・サーバの無秩序な増加を避けることで、管理を効率化できたが、ハードウェア上の仮想コンテナ内で稼働するOSとアプリケーションは、やはり管理しなければならなかった」と説明する。
VirtualCenterとVMotionは、各ホスト・サーバにログオンして個別に仮想マシンを管理するといった煩雑な作業をなくし、仮想化ソフトウェアがエンタープライズ環境のワークロードを処理することを可能にした。
「仮想マシンを増やすと管理が大きな問題になる。VMotionで仮想マシンを移動できるようになったことで、1台の物理サーバ上で稼働する仮想マシンが多くなりすぎる心配も少なくなった」(クズマク氏)
今年6月に発売されたVMwareの「VMware Infrastructure 3」に搭載されたVirtualCenterとVMotionの新バージョンは、管理機能が重要な進歩を遂げているとクズマク氏は強調する。これらはリソースの可用性を自動的に監視し、使用可能なコンピューティング・リソースを最大限に活用できるように仮想マシンを動的に移動できる。
「VMwareは新しい機能や技術を実装するにあたって、顧客の声によく耳を傾けた」とクズマク氏が語るように、VMwareはソフトウェアの改良に向けてアイデアや提案を積極的に吸い上げた。このことは、特に早期導入ユーザーに恩恵をもたらしたという。
“連続可動性”と“投資効果”を実証
ガネットは2台の物理マシン上で6つ程度の仮想マシンを運用することから取り組みを開始したが、これらの4プロセッサ・サーバ上の仮想ワークロードの数は数カ月で約40にまで増加したという。
「何の問題も出なかった。システムに大きなワークロードを加えても、きちんと連続稼働した。この成果は社内の懐疑派を納得させ、コスト削減効果は経営陣を納得させた」(クズマク氏)
コスト削減効果について、同氏は、具体的な数字こそ挙げなかったが、「ROI(投資効果)は十分にある」としたうえで、ガネットがコストを削減できているのは、1台のx86サーバ上でアプリケーションを1つだけ運用するというやり方を取らなくなったからだと強調する。サーバがますます強力になっている現在、今でもそうした非効率な運用を続けていけば、無駄はますます大きくなってしまうというのが同氏の考えだ。
「ハードウェアの性能が進歩するペースは、アプリケーションの要求が拡大するペースをはるかに上回っている。われわれもVMwareを使っていなかったら、もっと大量の物理マシンを購入し、それらの使用率は当時よりさらに低くなってしまっていたはずだ。そこに仮想化のメリットがある。物理サーバを買わずに済んでいるため、われわれは費用を抑えることができている」
クズマク氏は、VMwareは正しい方向に向かっていると考えているが、市場が成熟化する中で、ほかの技術やベンダーにも常に関心を払っているという。「競争は常に良いことだ。最大手であるVMwareの顧客の目から見ても、面白い市場になろうとしている」
(ジェニファー・ミアーズ/Network World 米国版)
提供:Computerworld.jp