基盤構築の現場で求められるもの

野村総合研究所は、リサーチ・コンサルティングや業務アプリケーション構築の分野だけではなく、ネットワーク基盤構築という面においても業界のリーディングカンパニーとともに歩んだ長年の実績がある。 同社の基盤構築プロジェクトの第一線で活躍する緑川氏に、最近の状況と現場技術者に求められているものを伺った。

編集部: これまでどのようなカテゴリの業務をされてきたのでしょうか?

緑川氏: 入社以来、ミッションクリティカルなネットワークの企画、設計、構築、運用に携わってきました。 規模としては数十拠点のネットワークから、大きいものでは大手コンビニエンスストアの数万の店舗と、本社のネットワークといったところが挙げられます。 社内にはそれぞれ得意分野を持った技術者がいますが、私の場合は大規模ネットワークの構築が得意な分野になると思います。

編集部: 大規模ネットワークというと、広域ネットワーク特有の遅延対策へのノウハウをお持ちということでしょうか?

緑川氏: もちろん遅延対策もありますが、大規模ネットワークは稼働後の運用がとても重要です。 月に100拠点増えて50拠点なくなることがありますし、月に数十件の障害が起こるもあります。 これらをどううまくマネジメントしていくかにノウハウが必要になります。 たとえば障害発生時には、現場への通知と障害データベースへの登録を自動的に行い、一定時間にデータベースに原因とその対応作業が入力されないとアラートが出され、それにオペレータが対応するような仕組みを作り込んでいます。

編集部: 最近のインフラ構築について、課題は何でしょうか?

緑川氏: とくに最近は納期が短いということです。 一昔前までは1年から2年くらいかけて構築する案件もありましたが、最近では数か月間でリリースすることが当たり前になっています。 私たちの顧客はその先にいるお客様の行動を考えて事業していかなればなりません。 さらに技術の進歩もキャッチアップしていくとなると、2年もかけて構築していたのでは、できあがったころにはビジネスに合致しないものになりかねませんから。

編集部: 厳しい納期を実現するために工夫している点を挙げるとするとどのようなポイントがあるでしょうか?

緑川氏: ポイントは2つあります。 まず、要件定義に時間をかけることです。 短納期というと開発フェーズにばかり着目しがちですが、実は要件定義の品質が重要です。 そこがぶれると、手戻りが発生し非効率になるばかりではなく顧客から満足が得られないというリスクが高まるからです。 もう1つが設計です。 具体的には、従来は机上で小さな仕組みを作って性能評価をしてから、その値を基に設計に反映させていたのですが、いまは後で拡張できるものを適用させています。 つまり、時間をかけて重厚長大なものを開発するのではなく、小さなものを短時間で構築し、なるべく大きく広げていくことのできるやり方を採用しています。 拡張性を考慮することは、顧客も望んでいる点でもあると思います。

編集部: 最近の技術者に足りないもの、基盤構築を行う技術者自身に求められるスキルは何でしょうか?

緑川氏: 技術の習得は大前提です。 そのうえでその技術を使うとどのように顧客に役立つのかという視点が重要です。 技術スキルを磨くことは大切ですが、それがどう顧客のビジネスに役立つのかを理解してほしい。 その点が足りない技術者が少なからずいます。 これは「いいものを作れ」といったときに、「いい」という評価の切り口が何にとっていいかという話だと思います。 大事なのは顧客にとっていいものという意味であって、技術的にいいものができた、私たちにとっていいものができた、だけではダメなのです。

編集部: そのような技術者になるためにはどのようにすればいいでしょうか?

緑川氏: まずは顧客のところに行き、話をよく聞くことだと思います。 ただし、顧客が言っていることが直接システム要件につながるわけではありません。 顧客にとって何が必要かということを念頭にコミュニケーションを図りつつ、顧客の課題を要件として具体化しなければなりません。 お互いの意思疎通が円滑に進むことによって、時には考えもしなかった新しいサービスが生まれることもあります。

編集部: 社内での性能評価や技術習得はどのようにされているのでしょうか?

緑川氏: 性能評価の実施は大きく分けて3つあります。 社内のR&Dを利用する方法と、ラボを持つ本部の技術室での評価、プロジェクト内での個々のテストです。 また、本部や部単位でのレビュー会を利用して、ネットワークマネジメントツールやロードバランサーなどを評価することもあります。 場合によっては、数億円規模のR&Dを実施します。 R&Dを予算化するには社内の審査をクリアする必要がありますが、それが本当に必要と判断されれば、大規模な調査・研究を行うチャンスが与えられます。

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