『National Lampoon』によるオープンソース系ツールの本格活用

National Lampoon』は、有名な学生向けのパロディ雑誌だが、印刷媒体での出版はすでに7年前から停止しており、その際には過去に蓄積された膨大な記事を始め、各種のビデオ、グラフィックス、ミュージックなどのアーカイブにアクセスするためのシステムを、オンライン上のホームページに用意しなければならなかった。その他にも必要とされたのは、雑誌の売り上げや広告掲載料とは異なる資金調達の方法である。実際『Lampoon』紙のCTOを務めるScott Mulder氏にとって、サイトの更新ごとに静的なWebページを手作業で毎度構築し直すのは、大変な手間がかかるだけでなく、まったく喜びを感じられない類いの作業であった。そんなMulder氏に笑顔をよみがえらせたものこそが、Joomlaという名前のオープンソース系コンテンツ管理システムである。

「すべてのコードを手作業で入力していましたが、これは途方もなく非生産的な活動でした」とMulder氏は語る。「1999年にNLは紙媒体での雑誌刊行を取りやめており、その後はWeb形式の出版を運営する方法を模索し続けていたのです」。Mulder氏が参加したのは、およそ4年間にわたり静的なHTMLによるサイト運営が続けられた後のことであった。

「私が参加したのは2004年のことですが、実績のある適切なツールを利用すれば必要な情報の管理がスムースに行えるという事実を、それまで誰も知らなかったのです」。そのため編集者がフロントページに新しい記事を掲載するごとに、アーカイブについてはMulder氏が手作業で更新しなければならなかったのである。こうした問題については、同氏に妙案があった。それというのも同氏には、長年にわたってオープンソース系コンテンツ管理システムを使用していた経験があったからだ。「私がDiscreetに携わっていたとき、内外の販売員がすべてのビデオにランダムなアクセスをするためのシステムをMamboを用いて構築していました。それで私が(NLに)来たついでに、この方式もまとめて採用してもらった訳です」。

たしかにMulder氏はオープンソース系ソフトウェアに傾倒はしていたものの、様々な可能性を探る必要性から、その他の管理用ソリューションについて検討することも忘れなかった。「RedDotを皮切りに、色々な企業をあたってみました。どの会社も専用のCMS(コンテンツ管理システム)の構築を申し出てきたのですが、見積書の額面は50,000ドルから200,000ドルになっていましたね」。その結果Mulder氏が重役連に提示したのがJoomlaというソフトウェアで、これはMamboの系列に属するオープンソースCMSであり、無料で使用することができる。「私が説得に使ったのは、我々はもはや完全な手詰まり状態に追い込まれており、他のシステムを採用する余裕などはなく、残されたソリューションはこのオープンソース系ツールを採用するしかない、という論法でした」。

Mulder氏はJoomlaをWindows 2003サーバにインストールしたが、同氏によると、これは1つの挑戦であったとのことだ。「オープンソースのコミュニティでは、この組み合わせは健全な選択肢だとは見なされていません」と同氏は語る。「それについては私も同意見で、何を好きこのんでMicrosoftの独占状態に手を貸す必要があるのか、と思っています」。Windows環境についてのMulder氏の見解は、「融通が利かず、こうした種類のプログラミングや従来運用してきた(MySQL)データベースとの共存が困難なのです。ただ私たちのシステムではこれらのサーバを既にいくつも使用しており、Linux環境に移行する場合の手間やコストと比較しても、現状のサーバ群を維持して手を加える方が賢明だと判断したのです」というものである。

Mulder氏によると、Windows環境におけるJoomlaの運用を進めている人間と接触して、必要となるノウハウやアドバイスを共有できたということである。「関連した話題を扱っているオンライン掲示板がいくつか存在しているので、耳寄りな話がありますよと、メッセージを上げたのです。Windowsベースでのサーバ運用で行き詰まっている方がおられましたら、何かヒントになるお話をお聞かせできるかもしれません、とね」。

テスト環境でJoomlaを稼働させて間もなく、Mulder氏自身も外部からの支援が必要であることに気づかされることになった。「ふと気が付いたのは、このプロセスはどれだけ長くかかるのだろうか、ということでした」と同氏は語る。「機能的には手元にあるJoomlaで間に合いそうだったのですが、Mitch(Pirtle氏:Joomlaのオリジナル開発者の1人)に連絡を取って、もっと大規模な処理を行いたいことを告げたのです」。その結果Pirtle氏から得られた助言は、同氏の属するJamboworksという企業が提供しているサービスを利用することであり、これはフリーのオープンソース製品に関するコンサルタントおよびサポートを行う目的で、Joomlaのメイン開発者たちが設立した会社であった。「オリジナルの開発者たちが手を貸してくれるのですから、プロセスを管理する上でこれ以上のものは期待できないでしょう」とMulder氏は語る。

Jamboworksから得られたのは、Mulder氏側のニーズに基づいてJoomlaをカスタマイズするためのサポートであった。例えば、27個のコメディ系サイトを結んだ『National Lampoon』の提携ネットワークの中から、リンク先をランダムに選択して表示するRSSフィーダーも、その際にコードされた新機能の1つである。このリンクは個々の提携サイトで表示されるが、Mulder氏によると、この戦略を組み込んだおかげですべてのサイトにおけるトラフィックが上昇したとのことだ。

その他にNLが使用しているものにJambozineがあるが、これはオンラインでの雑誌出版を簡易化するために特化したJoomla用のプロプライエタリ系プラグインだ。「これを利用すると、毎月の記事をアーカイブ化する作業が自動処理され、必要となるサブセクションの作成も行われます」ということであるが、こうしたものはJoomlaの基本パッケージには付属していない機能である。

Mulder氏によると、NLの管理部門はJoomlaを大いに気に入っているということだ。「弊社のWebサイトは、インストールコストに一銭も要していない代物で運用されている訳です」と同氏は語る。Jamboworksからのサポートおよびコンサルタント費を含め、NLが支払った25,000ドル以下という経費は、商用CMSの販売元から基本パッケージとしてMulder氏に提示された最低入札価格の半分にも満たないという。

もっともMulder氏の語るところでは、こうした経費節約は、総体的なメリットのほんの一部でしかないとのことだ。「この点は、さほど頭を悩ます必要のない分野です」と同氏は説明する。「問題は他の業務分野で、例えばサイトの運営をするには単にセットアップさえしておけばいいという訳ではなく、その後の保守作業を基本的に誰でもできる状態にしておく必要があります。実際、WYSIWYG系のエディタなら、誰でも小一時間も操作していれば大半の機能は直感的に理解できるでしょう。そうなると私自身が“現場”に張り付いている必要はないわけです」というように、サイトの更新を行う保守要員の確保などについても考えを巡らさねばならないと言う。

Mulder氏にとって印象的であった事例の1つに、NLの政治風刺担当の編集者用に立ち上げたブログがあるという。「この担当者は50代の人間ですが、HTMLやオープンソースについては、文字通り何一つ知りません。もっともWordくらいは使っていますが。それでこの担当者用にブログのサイトをセットアップして、使い方をごく手短に説明したのですが、それだけで彼は早々に活用し始めました。あれは非常に印象的な出来事でしたね。実際、すべての業務を私1人で行える訳がないのですから、こうした体験をすると非常に勇気づけられます」。

NewsForge.com 原文