Ubuntu Edgyの計画立案:Ubuntu開発者会議の経過報告

パリ発 ― 今週月曜(6月19日)、60名を超えるUbuntu開発者が、Ubuntu次期リリース(コードネームはEdgy Eft)の計画を立てるためにパリのシャルル・ドゴール空港近くのホテルに集まった。この会議の目的は、来るべきリリースに向けて目標を設定し、その実現に必要な各段階を計画に落とし込むことである。

Dapper Drakeというコードネームを持つUbuntuの直近のリリース、6.06 Long Term Support(LTS)は、そのライフサイクルの長さにふさわしい十分な完成度と機能を有するように設計され、大方の評価では成功をおさめたとされている。

一方、Mark Shuttleworth氏によるEdgyの発表では、次のように、Dapperとは異なる目標が来るべきリリースに向けて設定された。

おそらくEdgyは、最先端のコードとインフラストラクチャを備えた、最新技術の粋を集めたものになるだろう。Ubuntu開発の次の流れを作り上げる基礎となる、きわめて興味深く、かつ先端のテクノロジを取り入れるにふさわしいタイミングだといえる。

さらに重要なのは、Ubuntuの開発者やコミュニティが、品質保証と洗練化に注力するためにDapperのリリースを6カ月延期したにもかかわらず、Edgyリリースの準備期間を四半期分削って遅れを取り戻すことに同意した点である。Edgyは、Ubuntuを新たな興味深い方向へ― それも常軌を逸したペースで ― 導くことをねらっているのだ。

すでにShuttleworth氏とUbuntu技術評議会の議長を務めるMatt Zimmerman氏は、EdgyがこれまでのUbuntuリリースよりも「粗削り」なものになる可能性を示唆しているが、これが開発側の責任問題にあたるとは見ていない。ユーザは引き続きフルサポート付きのDapperを3~5年間利用できるからだ。一方、開発者側は、Dapperの長期的な安定性を利用することで、Edgyのリリース期間においてリスクを伴う新たな選択肢を試すことができる。

Dapperのおかげで、Ubuntuプロジェクトには何の差し障りもなく発展のために費やせる2年間が与えられたのだ。Ubuntuの最初のリリースであり、いくつかの欠点をさらすリスクをとりながらGNU/Linuxディストリビューションの新しい基盤を生み出したWarty Warthogと同じく、Edgyもまた「最先端を行く」開発成果を目指している。

本稿の執筆時点では、明確化された170以上の目標がパリの開発者会議で議論の対象になっている。これらの目標のうち、高い優先度が付けられているのは一部である。ほとんどが「ブレインダンプ」の段階でボツになり、承認されているものはごくわずかだ。これらの仕様から、Ubuntuが次期リリースで目指そうとする方向が見えてくる。もちろん、公式、非公式を問わず、約束されている事項はまったくない。

では、Edgyリリースで実現の見込みがある興味深い機能的な目標をいくつか見てみよう。

不要パッケージの除去

Ubuntuと共に配布されてサポートされるソフトウェアの量はこれまでの4つのリリースにおいて増え続ける一方だったが、コア開発者たちは、Edgyを機会に、サポート対象のパッケージの見直しと大胆な削減を行い、ソフトウェアの一覧を更新することでコンパクトかつより強固で行き届いたディストリビューションを構築しようと考えている。

Ubuntuの優先事項はこの2年間で変化し、現在は多数のパッケージに対応するデスクトップの役割と、サポートのプロセスを有する「ユニバース」コンポーネントの役割を担っている。Ubuntuのコア開発者は、これらをすべて念頭においてパッケージ一覧の再考を志している。

洗練性と一貫性

議論されている仕様には、普及および浸透という形の変化によるUbuntuデスクトップの優美さと一貫性の向上を伴うものがいくつかある。わかりやすい例の1つが、Ubuntuデスクトップのアプリケーション全体でタブの動作を整合させるという提案だ。

Firefox、Gaim、GNOME Terminalなどの各アプリケーションは、タブに対してそれぞれ異なるキーバインドやインタラクションの手法を実装している。Ubuntu開発者は、こうしたアプリケーションの振る舞いをEdgyではより統一されたものに変更すべく検討を行っている。同じように洗練性においても、その他の有意義な方法でより良い印象をユーザに与えることを目指している。

デフォルトでXenが利用可能なカーネル

Ubuntuのカーネルチームは、すぐに利用できる仮想化技術を求めるUbuntuユーザにその機能を提供する方法として、調整なしでXenが利用できるカーネルをUbuntuに採用することを真剣に検討している。

広範囲に及ぶアクセシビリティの改善

当初からUbuntuは、アクセシビリティへの注力をきわめて重要な理念的目標の1つとして掲げてきた。大部分はHenrik Nilsen Omma氏による強い後押しの結果だが、Edgyでは、フリーソフトウェアの世界で最も優れた最先端のアクセシビリティ・ツールのいくつかを用意することでUbuntuにおけるアクセシビリティの改善を目指す。この取り組みには、画面拡大用のハードウェアビデオアクセラレーション機能を利用するソフトウェアや、画面読み取りなどの次世代ツール群の評価および統合が含まれている。こうした真っ当な取り組みのほか、Ubuntuを行政機関や大企業向けの環境に対応させることも考えられている。

ファイル種別への対処

未知またはサポートされていないファイル形式を、Ubuntuパッケージデータベース内にあるその実行に必要なアプリケーションに対応づけるための目標がいくつか議論された。Firefoxがサポートされていないメディアを閲覧できるようにソフトウェアの提案とインストールを行うのと同じように、Ubuntuの次期バージョンも、メディアなどのファイル形式に必要なソフトウェアがインストールされていない場合には、そうした提案とインストールが可能になるかもしれない。

GCC-SSP

コア開発者は、”stack-smashing protector”(SSP)を備えたgccをEdgyディストリビューションに組み込むことを計画している。SSPとは、広い範囲にわたってバッファオーバーフロー攻撃を事前に防止するためのGNU C Compilerの拡張機能であり、結果として従来より安全なソフトウェアが生み出される。

SSPはすでにその他のオペレーティングシステムのいくつかに組み込まれている。EdgyではSSPを使ってすべてのビルドを行うわけではなく、おそらく多数の選ばれたパッケージでSSPを実験的に用いて問題を取り除いたうえで、Edgyより後のリリースでアーカイブ全体にSSPを適用することになるだろう。

企業レベルでの商用サポート

多くの仕様からは、CanonicalがUbuntuに対するより質の高いサポートの提供に本腰を入れようとしていることが伺える。このサポートは、Edgyそのものではなく大部分はDapper Drakeリリースのサポートに連動したものだが、Canonicalは、コミュニティ支援用のインフラストラクチャの構築と、ほかの「主要な」ディストリビューションにあるような旧来の専門的で企業向けのサポートを行うためにまとまった投資をしようと考えているようだ。

SMARTパッケージマネージャ

SMARTは、Pythonでスクラッチから書き起こされた新しいパッケージマネージャである。RPM、Debian、Slackwareの各パッケージに同時に対処でき、パッケージの依存関係の問題を解決するために一連のアルゴリズムが改善されている。ほかのいくつかのディストリビューションではすでに利用されているSMARTだが、UbuntuではEdgyのオプションとして導入を検討している。Edgyとその後継リリースの時期に数々の問題が解決された後で、もっと完全な形でのSMARTの組み込みをUbuntuチームは計画している。

検討リストに挙がっていそうだが実際には入っていない機能として、多くの人が待ち望んでいるXglがある。Xgl、またはそれに代わるAIGLXが最終的にEdgyに含まれる可能性はあるが、どうやら現時点ではその予定はなく、現状のEdgyのリリーススケジュールにも変更の余地はほとんどない。

この会議は6月23日(金)まで続けられる。完全な仕様の一覧は、Ubuntu Development SummitのWebページで参照できる。会議の結論が出た後にレポートの第2弾の公開を予定している。

NewsForge.com 原文